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受賞監督も「びっくり」 ゴールデン・グローブ賞2020

米国映画界で2020年最初のビッグイベントとなる第77回ゴールデン・グローブ賞授賞式が日本時間1月6日、米国カリフォルニア州ビバリーヒルズで開かれました。人気が拮抗(きっこう)する作品が並び混戦模様の映画賞シーズンを象徴するように、この日も様々なサプライズが。主な受賞結果をご紹介します。
(文・構成 深津純子)

受賞監督も「びっくり」 ゴールデン・グローブ賞2020

ヴィーガンのディナー。ゴールデンビーツの冷製スープ、ホタテ風に仕立てたエリンギ、マッシュルームのリゾット、乳製品不使用のオペラケーキなど (c)HFPA

ゴールデン・グローブ賞はハリウッド外国人記者会のジャーナリストが選ぶ賞。#MeToo運動が盛り上がった2年前には参加者が黒一色の装いで登場するなど、社会問題を様々な形で反映してきました。今年は食肉や乳製品の生産が環境に与える負荷を考慮して、史上初めて全てディナーをすべてヴィーガン(完全菜食主義)のメニューに。受賞スピーチでも気候変動への危機感を訴える声が目立ちました。

受賞監督も「びっくり」 ゴールデン・グローブ賞2020

「1917 命をかけた伝令」のサム・メンデス監督 Reuters

さて、気になる受賞結果。映画の部のドラマ作品賞は、サム・メンデス監督の「1917 命をかけた伝令」が受賞しました。第1次世界大戦の最前線で決死の作戦に挑む英国兵をまるでワンシーンワンカットのような映像でとらえた異色の戦争映画で、監督賞も獲得しました。候補発表段階では「マリッジ・ストーリー」が最多6件でノミネート、「アイリッシュマン」が5件、「2人のローマ教皇」が4件の候補とネットフリックス作品が存在感を放ち、公開時期が遅かったこの作品は伏兵的な存在でした。最後に壇上に呼ばれたメンデス監督も「いやはや……ものすごくびっくりしています」と語るサプライズ受賞でした。

受賞監督も「びっくり」 ゴールデン・グローブ賞2020

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」で助演男優賞を受賞したブラッド・ピット。「LDCが支えてくれた」と共演のレオナルド・ディカプリオを讃えた

コメディ/ミュージカル作品賞はクエンティン・タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(=トップ写真/Reuters)。タランティーノは脚本賞も獲得、同作でスタントマンを演じたブラッド・ピットが助演男優賞に選ばれました。ブラピがこの賞を受賞するのは1996年の「12モンキーズ」以来2度目。長いキャリアと高い人気にもかかわらず、俳優としての受賞機会に恵まれてこなかっただけに、客席からひときわ大きな拍手が贈られました。

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ドラマ主演女優賞を獲得した「ジュディ 虹の彼方に」のレネー・ゼルウィガー Reuters

ドラマの主演女優賞は「ジュディ 虹の彼方に」で伝説的ミュージカル女優ジュディ・ガーランドの晩年を演じたレネー・ゼルウィガー。キャリア低迷に苦しみ、「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」で復帰するまで6年間の休業に追い込まれた経験を、圧巻の演技へと昇華させました。

受賞監督も「びっくり」 ゴールデン・グローブ賞2020

ドラマ主演男優賞を受賞した「ジョーカー」のホアキン・フェニックス Reuters

主演男優賞は「ジョーカー」で新たなダークヒーロー像を確立したホアキン・フェニックスが、2006年の「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」の主演男優賞に続く受賞です。スピーチでは「みんな知ってるだろうが、俺たちの間に競争なんてファッキンなものはない」と放送禁止の「Fワード」を連発したかと思うと、「畜産業が気候変動に与える影響を認識してくれた主催者に感謝します」と環境対策の重要性を熱く語り、謝辞の最後には、「…ルーニー」とつぶやいて客席の婚約者ルーニー・マーラを無言で凝視。最初はハラハラしていた観客もいつしかうっとり。誰もまねのできないパフォーマンスでした。

受賞監督も「びっくり」 ゴールデン・グローブ賞2020

コメディ/ミュージカル主演男優賞を受賞した「ロケットマン」のタロン・エジャトン Reuters

前評判の高かった実力派が順当に受賞したドラマ部門とは対照的に、コメディ/ミュージカルは意外な若手に脚光が。主演男優賞は「ロケットマン」でエルトン・ジョンを演じたタロン・エジャトン。繊細な演技に加え、多彩な楽曲を吹き替えなしで見事に歌い上げた力量が称賛を集めました。

受賞監督も「びっくり」 ゴールデン・グローブ賞2020

コメディ/ミュージカル主演女優賞を受賞した「フェアウェル」のオークワフィナ Reuters

主演女優賞は「フェアウェル」のオークワフィナがアジア系女優で初めて受賞しました。受賞作は中国生まれのルル・ワン監督が自身の祖母との関係を下敷きにした家族劇で、せりふの大半は中国語。今回は外国語映画賞にもノミネートされています。英語劇以外での演技賞受賞は異例のこと。ハリウッドの多様化を象徴する現象とも言えそうです。韓国系の母を幼い頃に亡くし、中国系の父に育てられたオークワフィナは、「この賞を父に捧げます。言ったでしょ、ちゃんと仕事を取ったからね!」とユーモアたっぷりに感謝の思いを伝えました。

受賞監督も「びっくり」 ゴールデン・グローブ賞2020

助演女優賞に選ばれた「マリッジ・ストーリー」のローラ・ダーン Reuters

助演女優賞は「マリッジ・ストーリー」で離婚訴訟の妻側弁護士を演じたローラ・ダーン。総計34のノミネートを獲得したネットフリックス作品で、受賞したのは彼女と、「ザ・クラウン」でテレビの部のドラマ主演女優賞に選ばれたオリヴィア・コールマンの二つに留まりました。

受賞監督も「びっくり」 ゴールデン・グローブ賞2020

「パラサイト」で外国語映画賞を獲得したポン・ジュノ監督 Reuters

外国語映画賞は、昨年のカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」が韓国映画で初の受賞を果たしました。トロフィーを受け取ったポン監督は「字幕というほんの1インチの壁を乗り越えれば、たくさんのもっと素晴らしい映画と出会えます」と語り、満場の喝采を浴びました。「パラサイト」は監督賞や脚本賞にもノミネート。批評家賞や昨年公開映画のベスト10ではトップクラスの人気を集めており、アカデミー賞でも主要賞の有力候補と目されています。

映画賞レースはまだまだ中盤。1月7日に発表された米国脚本家組合賞ノミネートでは、前日のゴールデン・グローブ賞脚本賞受賞作の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が選から漏れるなど、早速波乱が起きています。長いレースのゴールとなるアカデミー賞はノミネート発表が1月13日、授賞式は日本時間2月10日に開かれます。

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第77回ゴールデン・グローブ賞の受賞結果は以下の通りです(★が受賞)

【映画の部】
■ドラマ 作品賞
★「1917 命をかけた伝令」
 「アイリッシュマン」
 「ジョーカー」
 「マリッジ・ストーリー」
 「2人のローマ教皇」

■コメディ/ミュージカル 作品賞
 「ルディ・レイ・ムーア」
 「ジョジョ・ラビット」
 「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」
★「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
 「ロケットマン」

■ドラマ主演男優賞
 クリスチャン・ベール 「フォードvsフェラーリ」
 アントニオ・バンデラス 「Pain and Glory(英題)」
 アダム・ドライバー 「マリッジ・ストーリー」
★ホアキン・フェニックス 「ジョーカー」
 ジョナサン・プライス 「2人のローマ教皇」

■ドラマ主演女優賞
 シンシア・エリボ 「ハリエット」
 スカーレット・ヨハンソン 「マリッジ・ストーリー」
 シアーシャ・ローナン 「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」
 シャーリーズ・セロン 「スキャンダル」
★レネー・ゼルウィガー 「ジュディ 虹の彼方に」

■コメディ/ミュージカル主演男優賞
 ダニエル・クレイグ 「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」
 ローマン・グリフィン・デイビス 「ジョジョ・ラビット」
 レオナルド・ディカプリオ 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
★タロン・エジャトン 「ロケットマン」
 エディ・マーフィ 「ルディ・レイ・ムーア」

■コメディ/ミュージカル主演女優賞
 アナ・デ・アルマス 「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密
★オークワフィナ 「フェアウェル」
 ケイト・ブランシェット 「Where’d You Go, Bernadette(原題)」
 ビーニー・フェルドスタイン 「Booksmart(原題)」
 エマ・トンプソン 「レイトナイト 私の素敵なボス」

■助演男優賞(両部門共通)
 トム・ハンクス 「A Beautiful Day in the Neighborhood(原題)」
 アンソニー・ホプキンス 「2人のローマ教皇」
 アル・パチーノ 「アイリッシュマン」
 ジョー・ペシ 「アイリッシュマン」
★ブラッド・ピット 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」

■助演女優賞(両部門共通)
 キャシー・ベイツ 「リチャード・ジュエル」
 アネット・ベニング 「ザ・レポート」
★ローラ・ダーン 「マリッジ・ストーリー」
 ジェニファー・ロペス 「ハスラーズ」
 マーゴット・ロビー 「スキャンダル」

■監督賞(両部門共通)
 ポン・ジュノ 「パラサイト 半地下の家族」
★サム・メンデス 「1917 命をかけた伝令」
 トッド・フィリップス 「ジョーカー」
 マーティン・スコセッシ 「アイリッシュマン」
 クエンティン・タランティーノ 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
■脚本賞(両部門共通)
 ノア・バームバック 「マリッジ・ストーリー」
 ポン・ジュノ&ハン・ジヌォン 「パラサイト 半地下の家族」
 アンソニー・マッカーテン 「2人のローマ教皇」
★クエンティン・タランティーノ 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
 スティーブン・ザイリアン 「アイリッシュマン」

■アニメーション賞
 「アナと雪の女王2」
 「ヒックとドラゴン 聖地への冒険」
 「ライオン・キング」
★「Missing Link(原題)」
 「トイ・ストーリー4」

■外国語映画賞
 「フェアウェル」(ルル・ワン監督/アメリカ・中国)
 「レ・ミゼラブル」(ラジ・リ監督/フランス)
 「Pain and Glory」(英題)(ペドロ・アルモドバル監督/スペイン)
★「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督/韓国)
 「Portrait of a Lady on Fire(英題)」(セリーヌ・シアマ監督/フランス)

■作曲賞
 アレクサンドル・デスプラ 「ストーリー・オブ・マイライフ」
★ヒドゥル・グドナドッティル 「ジョーカー」
 ランディ・ニューマン 「マリッジ・ストーリー」
 トーマス・ニューマン 「1917 命をかけた伝令」
 ダニエル・ペンバートン 「マザーレス・ブルックリン」

■主題歌賞
 『ビューティフル・ゴースト』(「キャッツ」)
★『(アイム・ゴナ)ラヴ・ミー・アゲイン』(「ロケットマン」)
 『イントゥ・ジ・アンノウン 心のままに』(「アナと雪の女王2」)
 『スピリット』(「ライオン・キング」)
 『Stand Up』(「ハリエット」)

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【テレビの部】

■ドラマ 作品賞
 「ビッグ・リトル・ライズ」
 「ザ・クラウン」
 「キリング・イヴ/Killing Eve 」
 「ザ・モーニングショー」
★「サクセッション」

■ドラマ 主演女優賞
 ジェニファー・アニストン 「ザ・モーニングショー」
★オリヴィア・コールマン 「ザ・クラウン」
 ジョディ・カマー 「キリング・イヴ/Killing Eve」
 ニコール・キッドマン 「ビッグ・リトル・ライズ」
 リース・ウィザースプーン 「ザ・モーニングショー」

■ドラマ 主演男優賞
★ブライアン・コックス 「サクセッション」
 キット・ハリントン 「ゲーム・オブ・スローンズ」
 ラミ・マレック 「MR.ROBOT / ミスター・ロボット」
 トバイアス・メンジズ 「ザ・クラウン」
 ビリー・ポーター 「POSE/ポーズ」

■コメディ/ミュージカル 作品賞
 「バリー」
★「Fleabag フリーバッグ」
 「コミンスキー・メソッド」
 「マーベラス・ミセス・メイゼル」
 「ザ・ポリティシャン」

■コメディ/ミュージカル 主演女優賞
 クリスティーナ・アップルゲイト 「Dead to Me ~さようならの裏に~」
 レイチェル・ブロズナハン 「マーベラス・ミセス・メイゼル」
 キルスティン・ダンスト 「On Becoming a God in Central Florida(原題)」
 ナターシャ・リオン 「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」
★フィービー・ウォーラー=ブリッジ 「Fleabag フリーバッグ」

■コメディ/ミュージカル 主演男優賞
 ビル・ヘイダ― 「バリー」
 ベン・プラット 「ザ・ポリティシャン」
 ポール・ラッド 「僕と生きる人生」
★ラミー・ユセフ 「ラミ」
 マイケル・ダグラス 「コミンスキー・メソッド」

■リミテッドシリーズ/テレビムービー 作品賞
 「The Loudest Voice(原題)」
 「アンビリーバブル たった1つの真実」
 「キャッチ=22」
★「チェルノブイリ」
 「Fosse/Verdon(原題)」

■リミテッドシリーズ/テレビムービー 主演女優賞
 ケイトリン・デンバー 「アンビリーバブル たった1つの真実」
 ジョーイ・キング 「The Act(原題)」
 ヘレン・ミレン 「Catherine the Great(原題)」
★ミシェル・ウィリアムズ 「Fosse/Verdon(原題)」
 メリット・ウェヴァー 「アンビリーバブル たった1つの真実」

■リミテッドシリーズ/テレビムービー 主演男優賞
 サム・ロックウェル 「Fosse/Verdon(原題)」
 クリストファー・アボット 「キャッチ=22」
 サシャ・バロン・コーエン 「ザ・スパイ」
★ラッセル・クロウ 「The Loudest Voice」
 ジャレッド・ハリス 「チェルノブイリ」

■リミテッドシリーズ/テレビムービー 助演女優賞
★パトリシア・アークエット 「ジ・アクト」
 ヘレナ・ボナム・カーター 「ザ・クラウン」
 トニ・コレット 「アンビリーバブル たった1つの真実」
 メリル・ストリープ 「ビッグ・リトル・ライズ」
 エミリー・ワトソン 「チェルノブイリ」

■リミテッドシリーズ/テレビムービー 助演男優賞
 アラン・アーキン 「コミンスキー・メソッド」
 キーラン・カルキン 「サクセッション」
 アンドリュー・スコット 「Fleabag フリーバッグ」
★ステラン・スカルスガルド 「チェルノブイリ」
 ヘンリー・ウィンクラー 「バリー」

■セシル・B・デミル賞(映画貢献賞)
★トム・ハンクス

■キャロル・バーネット賞(テレビ貢献賞)
★エレン・デジェネレス

昭和初期の浪漫を感じる、森の中の一軒宿。下呂温泉 湯之島館で過ごす休日

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