料理家・冷水希三子の何食べたい?

シトロン香る、大人のふわふわロールケーキ

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくれるという夢の連載。2020年最初の今回は、乙女心が爆発するロールケーキ。柑橘の爽やかな香りがたまらない、清々しいおやつです。

    ◇

―― 冷水先生、あけましておめでとうございます!

冷水 おめでとうございます。今年も張り切ってお料理を作っていきますので、どうぞよろしくお願いしますね。

―― 昨年、先生にいろいろなお料理を教えていただいたおかげで、今年のお正月は台所に立つ時間がとても楽しかったです。

冷水 まあ、それはうれしい。

―― 今年はさらに腕を磨きたいと思っています!

冷水 やる気満々で素晴らしいです!

―― それで、新年早々で恐縮なのですが、今回はワタクシのリクエストでもいいでしょうか……?

冷水 久々に出ましたね、公私混同(笑)! でも歓迎ですよ。

―― じつは、今年こそずっと避けて通ってきたお菓子作りに挑戦したいと思っていて。材料や工程がそこまで複雑じゃなくて、でも洗練されたお菓子ってできないでしょうか?

シトロン香る、大人のふわふわロールケーキ

粉や砂糖などはスケールを使ってしっかりと計量。これが成功の秘訣です

冷水 わあ、欲張りですね(笑)! まあでもお菓子作りに慣れていない方はきっとそういうレシピが知りたいですよね。じゃあ柑橘の風味が爽やかなシトロンロールケーキはどうでしょうか?

―― ネーミングからして気品高い! ぜひ教えてください~。

冷水 まず、お菓子作りにおいてもっとも大切なことは正確に分量をはかることです。少しでも分量が変わるとうまくいかないことがあるので、これは肝に銘じてくださいね。

―― 「目分量」は厳禁ってことですね、承知しました!

冷水 まずはメレンゲから作っていきましょう。卵を白身と黄身に分けて、卵白に砂糖を加えながら泡だてます。角が立つまでしっかりと泡だてないとスポンジがふわふわにならないので、頑張りましょう。

―― これは電動の泡立て器がマストですね。メレンゲが完成したら一旦冷やすんですか?

冷水 はい、メレンゲは常温だと泡が壊れやすいので、冷蔵庫で冷やしておきましょうね。次は卵黄です。ここは材料を入れる順序をしっかり守ってくださいね。まずはすりおろした柑橘(かんきつ)の皮を入れて、少しずつ砂糖を加えながら泡だてます。もったりとしてきたら太白ごま油と牛乳を入れて混ぜましょう。

―― そして最後に粉を投入ですね! 薄力粉はなかなかうまく混ざりませんね……。

シトロン香る、大人のふわふわロールケーキ

メレンゲの泡立て具合はこんな感じ。角が立つ程度を目安にしてください

冷水 粉っぽさがなくなるまで根気よく混ぜましょうね。お菓子作りは気を抜ける工程がないので大変ですが、ひとつひとつ丁寧に、確実にやっていくと上手にできますからね。

―― 丁寧な作業は結果にコミットしてくれるんですね(笑)!

冷水 そういうことです(笑)。さあ、薄力粉が混ざったら、冷やしておいたメレンゲの1/3量を卵黄のボウルに加えて混ぜます。ある程度混ざったらまた1/3量を加えて、ヘラでさっくり混ぜましょう。

―― でた! お菓子作りの本でよく見る「さっくり混ぜる」。いまいちよくわからないのですが……。

冷水 ぐるぐると混ぜるとせっかく泡だてたメレンゲの泡が壊れてしまうので、ボウルの底からすくい上げて、切るように混ぜるような感じです。こうすると薄力粉のグルテンも出づらいので、焼いた時に生地がふんわりと仕上がるんです。

―― なるほど~! 理由がわかると納得できます。

冷水 あ、ちょっと待ってください。残りの卵黄はメレンゲのボウルに加えるのではなくて、これまでとは逆で、混ぜたメレンゲを残った卵黄のボウルに加えましょう。

シトロン香る、大人のふわふわロールケーキ

焼きあがった生地を冷ますときは、表面が乾燥しないようにラップをかけて。表面にラップが触れないように、ふんわりと。

―― え! まさかの逆回転? これはどうしてですか?

冷水 こうした方がメレンゲの泡が壊れづらいので。人によってやり方はいろいろだと思いますが、私の場合は最後だけ逆回転(笑)。

―― うん、ふわっとした感じに仕上がりましたね~。天板に生地のもとを流し込んで、いよいよ焼きの工程ですね!

冷水 ちょっと大きい音がするけどびっくりしないでくださいね~。

(ドンッ!!とものすごい音)

―― えっ!! 

冷水 こうやって生地のもとを入れた天板を高いところから落とすことで生地の中の空気を抜くんです。空気が入っていると焼きあがったスポンジが気泡だらけになってしまうので。

―― なるほど~。ケーキ作りは力仕事ですね……。

冷水 ちなみにこの「落とし」、生地が焼きあがった後にもやるんです(笑)。

―― ひえ~。

シトロン香る、大人のふわふわロールケーキ

シロップをたっぷり塗ってからクリームをオン。手前側にクリームを多めに置くと巻くときにスムーズです

冷水 焼きあがった生地は乾燥しないようにふんわりラップをかけて冷ましましょうね。その間にシロップとクリームを作ります。シロップは鍋に柑橘の果汁と砂糖を入れて沸かすだけなので簡単です。残ったシロップはソーダで割って飲んでもおいしいですよ。

―― わ~、それいい!

冷水 生クリームは砂糖と柑橘の皮のすりおろしを加えて、少し固めに泡だてます。

―― 生地にもクリームにも柑橘が入るんですね。すでにキッチンに爽やかな香りが満ち満ちてます。

冷水 生地が冷えたら、焼き目が上になるようにラップの上に置いて、シロップを塗って、クリームをのせて……そして最後の難関、「巻き」の工程です!

―― うわ~、これはかなりの難関ですね……失敗する気しかしません(笑)。

冷水 ポイントはラップを巻き簾のように使って、手前から一気に巻くことです。躊躇すると生地が折れてしまうので、えいやっ!といきましょう。

―― おおお~、本当に「ぐるんっ!」という感じでいきましたね、鮮やか!

冷水 そうそう、生地を転がすような感じです(笑)。あとは冷蔵庫でしっかり冷やして、クリームが固まったら切り分けましょう。

―― うわ~、食べた瞬間に柑橘の香りがふわ~っと漂って、なんとも大人っぽい味です。甘さも控えめで、まさに大人のロールケーキですね。

冷水 レモンや柚子のほかにベルガモットを使ってもぐっと大人っぽい風味になるので、もし手に入ったら試してみてくださいね。

今日のレシピ

シトロンロールケーキ
◎材料(26cm×26~28cm天板1台)

卵:4個 
薄力粉:70g 
砂糖:65g 
太白ごま油:30g 
牛乳:30g 
柚子やレモン皮:2個分
生クリーム:200ml 
砂糖:大さじ1 
柑橘果汁:50ml 
砂糖:25g

◎作り方

 卵を卵黄と卵白に分ける。
 卵白に半量の砂糖を少しずつ加え、角が立つまで泡立てる。その後、冷蔵庫で冷やしておく。

 卵黄に柑橘の皮半分量と残りの砂糖を少しずつ加え(泡立器は洗わなくてもよい)、もったり白くなるまで泡立てて太白ごま油と牛乳を加え混ぜる。

 のボウルに薄力粉をふるいながら加え、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。

 の卵白を1/3量加え混ぜ、さらに1/3量加えてさっくり混ぜる。その後、残りの卵白を入れたボウルに移し、切るように混ぜ合わせる。

 天板にクッキングシートを2枚重ねて敷き、の生地を流し入れる。天板を少し高い位置から落として衝撃で空気を抜き、170~180度に予熱したオーブンで10分ほど焼く。

 焼きあがったらオーブンから天板を取り出し、少し高い位置から落とす。ラップを生地につかないようにふわりとかぶせてそのまま冷ます。

 小鍋に柑橘の果汁と砂糖25gを入れ、沸かして砂糖大さじ1を溶かす。

 生クリームに砂糖と柑橘の皮の残りを加え、固めに泡立てる。

10 の生地の焼き目を上に向けてのシロップを適量に塗り、のクリームを手前側に多めに乗せて巻く。ラップを巻いて冷蔵庫で冷やす。

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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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    冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

    シトロン香る、大人のふわふわロールケーキ

    料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

    PROFILE

    • 小林百合子

      編集者
      1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

    • 関めぐみ(写真)

      写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

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