ほんやのほん

いくつもの失敗が重なった街?『渋谷の秘密』

いくつもの失敗が重なった街?『渋谷の秘密』

撮影/馬場磨貴 (撮影協力/アルフレックス玉川)

世界で一番SNSに投稿されているだろうスクランブル交差点に立つと、多くの広告が迫っているように感じるのは、そこが渋「谷」のスリバチ型の谷の底にあるからだという。ここから見える景色は、今も目まぐるしく変化している。

まさに100年に一度と言われる大規模開発を迎えている渋谷。2019年の後半だけでも、渋谷公会堂のLINE CUBE SHIBUYAとしてのリニューアルオープン、渋谷スクランブルスクエアの開業、渋谷パルコのリニューアルオープンと続き、東急プラザ渋谷が渋谷フクラス内に新装オープンしたばかり。この開発は27年まで続くという。この都市の過去と未来を見通す一冊が、このほど出版された。
 
『渋谷の秘密』は、渋谷パルコが19年11月に3年の時を経てリニューアルオープンしたことを記念した、渋谷に関する論考集だ。

渋谷はこれまでに、多くを語られてきた。たとえば、社会学者の吉見俊哉による『都市のドラマトゥルギー』(弘文堂、1987年)や、北田暁大による『広告都市・東京』(廣済堂出版、2002年)などが代表的なところだろうか。

前者では、1973年の渋谷パルコのオープンを代表とする80年代の若者たちが集う劇場としての渋谷、後者では90年代半ば以降のインターネットや携帯電話登場後に弱まっていった渋谷の特権性を論じた。この2冊や他の多くの都市論に比べると、本書は渋谷という毛細血管が張り巡らされた都市を、よりリアルな場所として語りつくそうとしているように思う。

渋谷という街の懐の深さ

本書には、12章に分かれて多彩な著者が論考を寄せている。例えば、1章では、編者の三浦展に加えて、建築家の隈研吾と東京R不動産の馬場正尊の対談。テーマは「都市と建築 失敗して取り繕う街並み」だ。開発の当事者であるパルコが出している本の中で、3人は渋谷を「一番、失敗が重層化した街」であり、しかしながらそうした失敗を取り繕おうとやってきたことが都市の魅力になっている、と語る。

他にも、円山町を中心とした花街の歴史や、GHQ居住エリアのワシントンハイツが及ぼしたアメリカの影響、ファッション、食、ライブハウス、映画館などの面から渋谷を読み解いている。

個人的に面白かったのは、キャバレー「ハリウッド」の創業者でキャバレー太郎と呼ばれた福富太郎の『わが青春の「盛り場」物語』の渋谷編の再録だ。終戦直後の渋谷において、不良たちが渋谷を舞台にしのぎを削る様子を堪能することができる。アンダーグラウンドの空気が色濃く漂うパートの次には、渋谷区長の長谷部健とロフトワークの林千晶による対談があり、クリエーティブシティーとしての渋谷の魅力と未来予想図という落差も大変面白く、渋谷の懐の深さを感じる。

渋谷の猥雑(わいざつ)さやカオスがそのまま表れたようなカバーはもちろんのこと、12章のカラフルなブックデザインも含めて、一面だけでは捉えることのできない渋谷を表現した一冊である。

(文・嵯峨山 瑛)

40の本屋に出会える。「二子玉川 本屋博」が開かれます

いくつもの失敗が重なった街?『渋谷の秘密』

約40の個性あふれる本屋が⼀堂に会し、本屋の魅⼒と可能性を発信するフェス「⼆⼦⽟川 本屋博」が2020年1⽉31⽇、2⽉1⽇の2⽇間、⼆⼦⽟川ライズ ガレリアで開かれます。企画は「ほんやのほん」でもおなじみ、⼆⼦⽟川 蔦屋家電の北⽥博充さん。もちろん、⼆⼦⽟川 蔦屋家電も出店します。心ときめく「唯一の本屋」を探しに、出かけてみませんか。 

■info
⽇時:2020年1⽉31⽇(⾦)11:00〜20:00、2⽉1⽇(⼟)11:00〜19:00
場所:⼆⼦⽟川ライズ ガレリア (⼆⼦⽟川駅直結〈東京都世⽥⾕区⽟川2-21-1〉)
参加費:無料
イベント公式サイト


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    「&w」では、「ほんやのほん」のブックコンシェルジュがあなたのために本を選び、お届けする企画『蔦屋書店 ブックコンシェルジュからあなたへ、ひと箱の贈り物』を行っています。

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    蔦屋書店 コンシェルジュ

    12人のブックコンシェルジュの皆さんに、
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    川村啓子(児童書 自然科学)/藤井亜希子(旅)
    八木寧子(人文)/若杉真里奈(雑誌 ファッション)

    嵯峨山瑛(さがやま・あきら)

    二子玉川 蔦屋家電、建築・インテリアコンシェルジュ。
    大学建築学科卒業後、大学院修了。専門は都市計画・まちづくり。
    大学院在学中にベルギー・ドイツに留学し建築設計を学ぶ。
    卒業後は、出版社やリノベーション事務所にて、編集・不動産・建築などの多岐の業務に関わる。

    変身をくり返し、成長する私たち『某』

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