花のない花屋

彼がいなければつぶれていた。私を支えてくれる太陽みたいなパートナー

〈依頼人プロフィール〉
浅野美奈子さん(仮名) 43歳 女性
福岡県在住
販売員

     ◇

一緒に暮らして1年半になるパートナーがいます。同居のきっかけは、叔父の介護でした。

76歳になる叔父は結婚しておらず、身寄りがありません。若い頃に北九州の実家を飛び出してから京都で仕事をしていたようですが、詳しいことはよくわからず。私が叔父に会ったのは、5歳のときに父が亡くなったときのお葬式が最初で最後、というような存在でした。

しかし、その叔父が体調を崩して6年前に帰郷。最初は一人暮らしをしていた母が面倒を見ていたのですが、きょうだいとはいえ長年疎遠で、それまで自由気ままに生きてきた2人が一緒に暮らすのは難しかったようです。母もだんだん精神的に追いつめられ、私や妹が代わる代わる面倒をみるようになり、2年前からは、離婚して息子と2人暮らしをしていた私が、全面的に介護を引き受けることになりました。

叔父はもともと足が悪く、杖を使ってなんとか歩ける程度で、いくつもの持病を抱えています。とても1人で生きていける状態ではなかったので、三度のご飯作りから、通院などが一気に私1人にのしかかってきました。しかも、面倒を見始めてから半年後に認知症も発症してしまい、働きながら慣れない介護をするのは想像以上の負担に……。先の見えない看病にすっかり疲れ切ってしまいました。

そんな私を支えてくれたのが、今のパートナーです。彼も大学生と高校生の子どもがいるバツイチの男性で、前の職場が近かったことで知り合いました。彼は私の不安をすべて受け止め、気が済むまでグチにつきあってくれるだけでなく、実際に通院の送迎を手伝ってくれたり、深夜まで病院につきそい、一睡もしないで仕事に行ったりしたことも一度や二度ではありません。しかも、「一緒に暮らそう」という話になったときには、私と叔父の住むマンションの階下に部屋を決めてくれました。「その方が、俺が手伝えることも増えるから」と……。

私は叔父の身内やきょうだい、私の家族に頼ることもできず、たった1人で介護に向き合っていたので、彼の存在がなければ途中でつぶれていたと思います。彼にとって叔父は赤の他人なのに、いつも私と叔父のことを優先してくれ、「言葉より先に行動が出る」やさしさと行動力には感謝しかありません。

叔父は入退院を繰り返すうち寝たきりになり、先日、特別養護老人ホームに入所が決まりました。ここ3カ月程度は叔父の看病が落ち着き、少しほっとして肩の荷が下りた気分です。彼と一緒に暮らし始めてからこれまで、ずっと慌ただしく、恋人らしい時間ももてなかったので、これまでの感謝とこれからもよろしく、という気持ちを込めてパートナーに花を贈りたいです。

彼の大きな背中にはやさしさと強さがあふれ、とても穏やかな性格で太陽みたいにあたたかい人です。グリーンが好きで、家では観葉植物を育てています。大きくてやさしく、あたたかいイメージのお花が似合うと思います。私がこれまでに出会った人の中で誰よりも大切で、これからもずっと一緒に生きていきたい彼へ、特別な花束をお願いいたします。

彼がいなければつぶれていた。私を支えてくれる太陽みたいなパートナー

花束を作った東さんのコメント

介護というのはきれいごとではなく、心身ともに消耗するもの。実の親でもないのに、お二人ともそこまで尽くせるというのは本当にすごいことです。

今回は「太陽のようなパートナー」へのお花ということで、まさに太陽をテーマにアレンジをしました。使用した花材は、ストレチア、ダリア、ガーベラ、マリーゴールド、グロリオサ、グズマニア、ピンクッション、トリトマなど。赤やオレンジ、イエローのあたたかい色のグラデーションの花々。それらの上に覆いかぶさるように、オレンジとイエローのカラーを2種類挿しました。少し長めに切って炎のような動きを出しています。

周りに挿したグリーンは、ドラセナの「ソング・オブ・インディア」というもの。こちらも太陽をイメージして選びました。

お二人でお花を眺めて、少しでも元気になってもらえたらうれしいです。

彼がいなければつぶれていた。私を支えてくれる太陽みたいなパートナー

彼がいなければつぶれていた。私を支えてくれる太陽みたいなパートナー

彼がいなければつぶれていた。私を支えてくれる太陽みたいなパートナー

彼がいなければつぶれていた。私を支えてくれる太陽みたいなパートナー

(&編集部/写真・椎木俊介)

>>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み


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  •    

    「君の実家も大好き」 私の名字を残すと決めた夫へ
       

       

    「君の実家も大好き」 私の名字を残すと決めた夫へ


       


  •    

    「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を
       

       

    「これからは羽を伸ばして」 1人で育ててくれた母へ感謝の花束を


       

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    「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
    こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
    花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
    詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    彼がいなければつぶれていた。私を支えてくれる太陽みたいなパートナー

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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