このパンがすごい!

築100年の土蔵で厳選素材の丸パンやツナサンドをイートイン!/関次商店 パンの蔵 風土

藤沢の旧東海道沿い。築100年を超える土蔵を改装し、パン屋が営まれている。天井の高い大空間。なつかしい薄暗闇の中に、電球が吊り下げられて明るくなった一角に、パンが置かれている。まるで誘蛾灯のように、たくさんの人がそこに引き寄せられていた。

 中でも目を引いたのは、「なたね丸パン」。かぼちゃの種やひまわりの種、黒ゴマなど、種がトッピングされたもの数種類が、いかにもやわらかそうな様子で並んでいる。

築100年の土蔵で厳選素材の丸パンやツナサンドをイートイン!/関次商店 パンの蔵 風土

なたね丸パン

 土蔵に置かれた古いテーブルに座ってイートイン。ぽわわーんとした沈みっぷり。メッシュのような気泡の網目が舌に触れると、そのままゆるっと溶け、小麦の豊かな甘さをにじませる。トッピングの種、菜種油、小麦、どれもがナッツのような風味をもっていて響き合う。

 入り口ののれんに書かれた「オーガニック小麦×自家製酵母」の文字。岩田和憲さんはカナダ産のオーガニック小麦粉をメインに使用。全粒粉に関しては同じ小麦の玄麦から自家製粉している。

築100年の土蔵で厳選素材の丸パンやツナサンドをイートイン!/関次商店 パンの蔵 風土

入口

「湯種を作るときの(お湯を合わせた瞬間に立ち上る)香りから、もうぜんぜんちがう。この小麦でパンの風味が決まります」
 オーガニックレーズンから起こした発酵種、そして、先述の丸パンに使われるドイツ産「オーガニックイースト」を使用。オーガニックにこだわるのは、岩田さん自身がアレルギー体質であることと関係している。

「いい素材を使ってパンを作ると、食べやすいし、体に負担の少ない、食べやすいものができます。自分たちの食べたいものをいっしょに分かち合う感覚です」

 厳選された素材をはさむサンドイッチは、その数、約10種。注文後に作り、できたてを提供するスタイルだ。
 たとえば「ツナサンド」。ぽわんと弾む丸パンがおいしい具材をくるんでいる。削りたてのパルミジャーノチーズは強烈に香り、ツナはきちんとマグロの味わいを伝えてくる。味を調えるのは、マヨネーズではなく、ドライトマトが放つ旨(うま)み。

築100年の土蔵で厳選素材の丸パンやツナサンドをイートイン!/関次商店 パンの蔵 風土

ツナサンド

「自家製ピーナッツクリームバナナサンド」は、低温殺菌牛乳を使用した「ミルクパン」を使用。もわーんと沈み、ぱつーんと切れる。店内でピーナッツを挽いて作られる自家製ピーナッツクリーム。あまりにもピーナッツの風味が濃厚なためきな粉だと思いこんでいたほど。メープルシロップのコクと重なり合いまるで甘味噌(みそ)のよう。にゅるっと溶けてくるバナナの甘さと最高の組み合わせだ。

築100年の土蔵で厳選素材の丸パンやツナサンドをイートイン!/関次商店 パンの蔵 風土

自家製ピーナッツクリームバナナサンド

 ピーナッツクリームバナナサンドはじめ、やさしいおやつパンがそろっている。「バナナ缶」もそのひとつ。カナダ産小麦の香りを透かして、バナナの甘さ、そして発酵種が放つ土蔵のような香りを感じる。泡のような気泡の網目がふわんふわんもっちりと舌で弾んで溶けていく。嚙(か)みごたえの楽しさに促されて何度も嚙むうちに、やさしい甘さがどんどんあたたまっていくので、おやつとして成立するのだ。

築100年の土蔵で厳選素材の丸パンやツナサンドをイートイン!/関次商店 パンの蔵 風土

バナナ缶

 イメージは、パンで作るバナナケーキだという。
「パウンドケーキではなく、パンにすると砂糖の量を減らせる。10%だけですが十分に甘さを感じられます。毎日食べられるもの、子供に食べさせたいと思うものを作りたい」

 埼玉県出身の岩田さんが、かつての藤沢宿にあたるここで開業したのは、土蔵との出会いがあったからだ。戦時中、東海道沿いにあった土蔵は、戦火の延焼を防ぐためすべて取り壊されたが、少し奥まった場所にあったこの土蔵だけは残された。湘南は相州小麦の産地だったところ。一帯から集められた小麦がここに積まれていたという。そんな場所で、小麦を大切に考えるパン屋が営まれるなんて、不思議な縁を感じずにいられない。

築100年の土蔵で厳選素材の丸パンやツナサンドをイートイン!/関次商店 パンの蔵 風土

岩田和憲さんと佳奈さん

関次商店 パンの蔵 風土
神奈川県藤沢市本町4-5-20
090-2147-6314
9:00~15:00(売り切れ終了)
月・火曜:休み

>>店内やパンの写真をもっと見る ※写真をクリックすると、拡大表示されます

こんなお店もおすすめ

  • 極上のイタリア食材を選んではさんで/オルトレヴィーノ

    極上のイタリア食材を選んではさんで/オルトレヴィーノ


    鎌倉市

  • 湘南の海の幸、山の幸をたっぷりと/W Sandwich Factory

    湘南の海の幸、山の幸をたっぷりと/W Sandwich Factory


    神奈川県・三浦郡

  • ベトナム語の看板が出ているプレハブで食す“本物”のバインミー/タンハー

    ベトナム語の看板が出ているプレハブで食す“本物”のバインミー/タンハー


    横浜市

  • 食事処を理想とするパン屋「もっとそぎ落として力を抜いていきたい」/ ON THE DISH

    食事処を理想とするパン屋「もっとそぎ落として力を抜いていきたい」/ ON THE DISH


    横浜市

  • 自家製グレーズがたまらない、材木座の愛すべきおやつ / べつばらドーナツ

    自家製グレーズがたまらない、材木座の愛すべきおやつ / べつばらドーナツ


    鎌倉市

  • >>まとめて食べたい!「このパンがすごい!」記事一覧

    >>地図で見る

    PROFILE

    池田浩明

    佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
    日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
    http://panlabo.jugem.jp/

    「最高っていうより、毎日食べてちょうどいい」特別なあんこパンに田舎パン/秋日和

    一覧へ戻る

    美しいケーキ×総菜パン×イートインが共存する行列店/レタンプリュス

    RECOMMENDおすすめの記事