インタビュー

石井ゆかりさんに聞く「アドバイスしない」星占いとのつきあい方

石井ゆかりさんに聞く「アドバイスしない」星占いとのつきあい方

Evgenii141/Getty Images

2020年の年間星占いをそろそろ読み尽くした皆さま、いかがお過ごしでしょうか。&w編集部内でも占いにはみな関心が高く、多くの部員に“心のおかかえ占い師”がいます。中でも皆が「大好き」と口をそろえるのが、石井ゆかりさんです。
毎朝無料占いが届く公式Twitterアカウントのフォロワー30万人、毎年の占いでは120万部を超えるベストセラーを出し続ける人気のいっぽうで、占星術家とは決して名乗らず、自分の写真も公開していません。肩書は「ライター」。そんな石井さんの占いに、惹かれている人が多いのは、なぜなのでしょうか。どんな風に、言葉を選んでいるのでしょうか。ご本人に話を聞いてみました。(&w編集部)

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たとえば毎朝7時にLINEで流れてくる無料の星占い。
最初に、「月は日中山羊座で、22時過ぎに水瓶座に移動する。25日が新月なので、最後の月齢。土星・冥王星の上を舐めていく。大きな扉や門を、静かな光が照らしだしているような」と、星空のスケッチのような説明が入り、そのあとに12星座の占いが30字前後で続く。

筆者の星座を読むと、「獅子座は秘めた実力がサクレツするような日。力を出すチャンス」。
あら。そういわれるとなんとなく、ちょっとわくわくして1日を始められる気が。毎日読んでいると、「クッキーモンスターみたいな日」「破天荒な調整役」「乾いたところに水を注いでもらえる日」等々、何だかその日が楽しみになるような言葉を読むのが、だんだんクセになってくる。

最新刊『月で読む あしたの星占い』の帯にも「簡単ではない日々を、なんとか受け止めて、乗り越えていくために」とある。石井さんの著作に共通するのが、この、上から目線でもなければすぐ隣りで励ましてくれるわけでもない、絶妙な距離感だ。

あなたのせいじゃない。っていいたいんです、私は

実はインタビューを申し込んだとき、石井さんが日々書いている占いと同じお話になってもと、「2020年、大事にしたい三つのことば(キーワード)」という形で、1年を楽しく生きていくためのお守りになる言葉を教えてほしいというお願いを添えた。だが、石井さんから返ってきたメールには、こう書いてあったのだ。

>すみません、私の占いやエッセイでは、
>「こうすればいい」「こういうことを大事に生きよう」といった、
>何かを行動で変えようとするような内容は、書くことがありません。

アドバイスしない、星占い! どうしてですか?
やっと会えた石井さんは、その理由をさらっと笑顔で言った。

「『こうすればよくなるよ』、というのは、『自分でコントロールできる』っていう前提の発想ですよね。でも、人生には、自分ではコントロールできないことがたくさんあります。なのに『全部、自分でなんとかできたはず』と思うのは、つらいんです。2020年はこう過ごした方がいいですよ、って言っちゃうと、もうすでに、『自分』のせいになってしまいます」

「もちろん、そういう『アドバイス』を求めるニーズはあります。『こうしたらいいよ』という占いを必要とする人はたくさんいて、それを否定するつもりはありません。でも、数ある占い記事の中には、それ以外のものもあってもいいと思うんです。私の占いでは少なくとも、それをしない。『あなたのせいじゃない』って言いたいんです、私は」

なるほど。占いってもっと“予言”したり、よりよい運勢のためにするべきことを教えてくれたりする、ものではないのですか? 

「読み手になじみのある、言わば『占いの文法』みたいなものは確かにあります。それが一番、わかりやすいです。でも、たとえば私はよく、占いの文体として『きょうは、○○したくなるかもしれません』って書きます。したくなるかもしれないし、ならないかもしれない。こうしたらいいよ、でも、こうなります、でもない。あなたがそれをしたくなるかもしれないし、したくならないかもしれない、つまり、占いとしては、何も言っていない(笑)。でも、そのぐらい無責任になったときに初めて、ああ、私のせいじゃなかったって思えるのかなぁと」

では、石井さんが星占いで見ているものは、何なのだろうか。

火星がさそり座にいると、赤くしたくなる

そこでカバンから石井さんがさっと取り出したのが、クリアファイルにはさまれた紙だった。よく見ると、本の校正刷りの裏紙。そこに、来月の12星座の図「ホロスコープ」が書いてあり、月や火星や木星、金星など10個の星のマークが、いろんな色で囲まれている。パソコンでももちろん作れるのだが、星座の配置を見るときに、こうして星に手で色をつけながら書いていくほうが、頭に入ってくるのだそうだ。

石井ゆかりさんに聞く「アドバイスしない」星占いとのつきあい方

「なんでこの色かっていうのは、たぶん占いをやってる人が見れば、なんとなく、こういうイメージでこの色にしたんだろうなと想像してもらえると思います。たとえば火星って火の星で、その火星がさそり座にいるとすごく元気なので、赤くしたくなるわけです」

じゃあ、火星が別の星座にいるときは、赤くはならないんですか?

「ちょっとゆるい赤とか、紫にしたいところもあります。だからペンもいろんな微妙な色をそろえておいて、緑だけでも3種類とか(笑)、そういうので少し強弱をつけたりしますね」

それで星座ごとにイメージを思い浮かべて書くのかと思ったら、「こういう配置があったときにこういう言葉遣いとか、わりとロジカルに文章を書いている」そうだ。

石井ゆかりさんに聞く「アドバイスしない」星占いとのつきあい方

「占星術は、すごくミステリアスなイメージを抱いている人もいると思うんですが、基本的には、人間のイマジネーションと根をひとつにしているものだと思います。ごく平たく言えば『茶柱が立ったからいいことがある』みたいなのも『占い』です。人間の心が自然現象をつかまえて、そこに意味を見いだす、というしくみがあるんですね。星がこう動いたから今日、今年はこんな感じ、っていうのを人間の心がつかまえている。たぶん、そこに『つかまえられるものがある』ということに、大事な意味があるんです」

と、石井さんは言う。

「意味があるというのは、スピリチュアルな意味ではなく、たとえば、たくさんの大人が、サンタさんがいないってわかってるのに、子どもに『サンタはいるよ』って言いますよね。あのファンタジーのありかたと、『インチキだと思いつつ、星占いを読む』っていうメンタリティとは、あまり変わらないのではないかと。そこに、大事な意味があるのではないか、と思うのです」

「すみれ組」の組という漢字が気になって仕方なかった

小さいときから、文字への興味が強かった。原体験は、幼稚園時代に、げた箱で見た「すみれ組」の「組」という文字。

「あれ、たぶん組って読むんだ、すごい難しい字だなって思ってたのを覚えています。あと、家で大人が新聞を読んでいるのを見て、『あれが全部字なんだ、意味があるんだ! 大人になったら全部読めるんだ。本当かな』って、考え込んでましたね。本当に自分もあれが読めるようになるのかな、って」

そのまま、大きくなったら本を書く人になるだろうと思っていた。でも最初から、「占い」を書きたかったわけではない。「星占いだったら、自分が書いたものを読んでもらえると思ったから」。

石井さんが占いを始めたのは学生時代、つきあっていた人に、ほかに好きな人ができたと別れを告げられてから。そのお相手の女性が「占いが得意らしい」と聞いて、興味がわいた。

「単純にまず、占いってどうやるのかな、と自分のホロスコープを書いてみたら、いい配置という風に思えた。誤解だったんですけど、よく見えた。それがきっかけだったのかな」

それで2000年、大学卒業後に就職した会社を辞めたとき、“修行のつもりで”始めたのが、文字ベースの占いサイト「筋トレ」だ。インターネット黎明期で、携帯電話のネット接続もなく、みんな会社のパソコンで見ていた頃。

「読者は女性が多いんですけど、そのころ会社でパソコンを使う女性ってどういう感じかっていうと、『占い好きの若い女性』のイメージではないんですね。大人の女性です、現場というより管理職とか、私から見れば『すごく偉い人』も多かった。だから、大人に向かって書いてる感じでしたし、教えていただくことも本当に多くて。いまもその気持ちは変わらないですね」

特に多くを学んだのが、占いを伝えるときの“言葉遣い”について。ウェブはインタラクティブなので、書くたびに、読み手から直接、メッセージや意見、感想が飛んできた。

「その中で、ああ、こういう書き方すると傷つくんだとか、怖いんだとか、こう言うと伝わるのかとか。あいまいな書きかたをすると、悪いほうにとる方が多いんです。文脈ではなくて、言葉にすごく敏感に反応される。たとえば、恋愛の占いで、『つらいことが終わる』、みたいに書いても、その“終わる”が心に響くんです。彼との仲が終わるんじゃないか、つらい恋だけど終わりたくない、とか。こちらは、ケンカして仲直り、みたいなイメージで書いていたとしても、違うことが伝わるんですね」

だから、“終わる”ではなく、“一段落する”、“収束する”、“落ち着く”、“着地する”、などと書く。

「これはただアタリをやわらかくしようとか、オブラートにくるむみたいなことではなくて、むしろ、はっきり伝えたい、誤解されたくない、という思いがあるからです。状態が風景で見えるように、動きとして感じられるように書ければ、と思います。なかなかうまくいかないですが」

逆に、自分でよくわからない言葉……運勢とか、性格というような言葉は使わない。そんな石井さんの本は、星座や年間の占いにはとどまらない。“愛に心を痛める人”に向けて書かれた『愛する人に。』『愛する力。』。『青い鳥の本』『金色の鳥の本』『黒い鳥の本』のような「ビブリオマンシー」とよばれる、開いたページの言葉をそのときのメッセージとして味わう本。
占いや夢などについて、より詳しく書かれた『月のとびら』『星の交差点』『夢を読む』……さらに『禅語』『親鸞』のような、仏教の言葉から生きる手掛かりを探し出すエッセー。いずれも、一つの言葉やシンボルから、イメージが大きく羽ばたいていくような本ばかりだ。

2020年、あなたは「集団」のどっち側にいる?

石井ゆかりさんに聞く「アドバイスしない」星占いとのつきあい方

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さて、2020年は、星回りとしてはどんな年なのか。
実は今年は占星学上では、約20年に一度、木星と土星が重なる「グレートコンジャンクション」という大イベントがある年なんだそうだ。

「でも、グレートコンジャンクションが起こるのは、今年末の12月22日。年内は、実は2017年終わりごろに始まったことが一番大きくなる年です。だから2019年と2020年ってちょっと似てるというか、ぱっとカラーが変わるっていうんじゃなくて、むしろどんどん強まっていって大きな塊になるようなイメージです」

2019年から2020年、星はちょうど人間の組織や国家としての力を象徴する“やぎ座”に集まるのだという。

「個人としての人間ではなくて、集団としての人間です。これは一般論ですが、人間って、ひとりぼっちだとすごい弱いんですけど、集団になると強いですよね。でも、タチが悪いんです。一人でおとなしく飲んでいる飲んべえはかわいいけど、集団になると、仲間うちでもおそろしいことが起こったり、外に対しても傍若無人になったりしますね(笑)。人間は、ひとりひとりは、弱くて優しい、イイ人なんです。でも、それが集団になると、戦争みたいなとんでもないこともできるのです」

そんな風に集団が強い時期には、「自分がその集団で、どういう立ち位置に立つのか、というのがすごく重要になってくる」と、石井さんはいう。

「つまり会社の中にいて、この会社はどうなるんだろうなって思ってるのと、この会社をどうしようって思ってるのとでは、だいぶ動き方が変わります。集団の力がクローズアップされたときに、自分がやられる側に回っちゃうと非常に弱くなるかもしれない。だから、たとえば『世の中はどうなっちゃうんだろう』じゃなくて、『選挙に行こう』みたいに、この世の中にどうかされてるんじゃなくて、この世の中を私も作ってるっていう風に思っておいた方が、支配されつくさなくてすむんじゃないかと思うんです」

「でも何でしょうね、2020年はどんな年?っていう質問は、その年に何かカラーがあるはずだという、その思い方がすごく面白いと思います。誰に教えられたわけでもないのに、昨年とは全然違う今年なんだ、って多くの人が思っている。たぶんそれが『希望』なんだと思うんです」

みんなで同じ時代を生きているっていう感じは持っている

石井ゆかりさんに聞く「アドバイスしない」星占いとのつきあい方

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サイトを立ち上げてから20年、占いの位置づけも意味も、変わってきたなぁと感じている。

「私が『筋トレ』を始めた時は、インターネットを使っている人はごく一部だったんですけど、いまはみんなが使うようになって、ものすごくオープンな場になってしまいました」

占いってもともと、こそこそやるものなので、と石井さん。

「占いが恥ずかしいというより、隠しておくことで力を持つ部分があるんです。隠れてやるのが醍醐味、みたいなもので(笑)、だから、こんなふうにぱーっと外に出ちゃうのは、占い自体の意味合いが変わってしまうというか、ちょっとこわいなと思う部分もあります」

最近は特に「生きづらさ」とか「自己肯定感」とかいう言葉が占いの場でも普通に使われるようになり、これってどういうことなんだろうな、と、よく考える。

「自分が単純に『ここにいていい』って思えること、ここにいる権利があるって自然に思えるっていうのが、自己肯定感なんだろうなと思います。お店でラストオーダーを取りに来たとき、注文できる能力というのか(笑)」

それは自分が何かをよくできているとか、頑張っているという「自己評価」とは違う。

「頑張らなくてもここにいていい、という思いが自己肯定感なので。そういう意味で、自己肯定感がない人が私の占いを読んで、あ、自分のせいばかりでもなかった、って思ってもらえたらいいなあと思います。決して『自己肯定感を高める』みたいなことはできないけれど、『自分が悪い』『自分のせいだ』と思いすぎないでいられるために、かすかにでも、目先を変えられたらと」

言葉の裏側には、20年間、サイトでつながっている読者との連帯感、があるという。

「長く読んでくださっている方が多いので、みんなでいっしょに生きてるよね! というような感覚がでてきました。いけないなと思いつつも、よく占いの中に『わたしたちは』っていう言葉を使ってしまいます。べつに集まってなにかしたり、やりとりしたりするわけではないんです。ただ、ほんとうにうっすらとした連帯感みたいなものを、読者の方との間に、勝手に感じています。やっぱりみんなで同じ時代を生きているよね、っていう感じを」

だからみんな励まされちゃうんですね。勝手に。

「いや、読者の方はどうかわからないですが、でもお互い、そうだったらいいですね(笑)」

愛の追い風

もう一つ、気になることを聞いてみた。石井さんの大ファンである編集部員が特に好きな石井さんの占いフレーズ、「愛の追い風」について、だ。インタビュー前、こう頼まれた。

「『愛の追い風』が吹く時期が誰にでも年に数回あるんですが、いざ来てもどう使えばいいかわからないんです。どうしたらいいのか、聞いてきてください!」

――追い風って、石井さん、何ですか? と聞くと、星の角度の話になった。

「星の吉角、昔からいわれる120度というのがあるんですが、この角度の時に『追い風』と書くことが多いです。また、古くから吉星とされる金星と木星が自分のところに来たときも書くことがありますが、こちらは、“追い風”というよりはむしろ、自分自身が輝いているような、スポットライトが当たっているみたいなイメージになります。『追い風』は少し離れた場所から、強い星に応援してもらっているようなイメージです」

じゃあその追い風がきたときは、どうしたらいいんでしょうか?

「好きにしろ、ですね(笑)。そのときの気分で。追い風っていう言い方が好きなのは、そこに乗って動けば意味があるけど、動きたくなければ、乗らなければただの風ですむ、というところです。決して強制するものではなくて、使いたければ使えるよ、という『風』です。私の占いは、基本的に、ぜんぶ『好きにしろ』なので。言い方が悪いかもですが、『もっとやれ』か『好きにしろ』か、そのどっちかなんです」

乗っても乗らなくてもいい、風のような「希望」。石井さんの言葉には、その軽やかさがある。私も2020年、好きにしようっと。

石井 ゆかり

ライター。星占いの記事やエッセーなどを執筆。2010年刊行の「12星座シリーズ」(WAVE出版)は120万部を超えるベストセラーになった。『12星座』『星をさがす』(WAVE出版)、『3年の星占いシリーズ」(文響社)、『禅語』『青い鳥の本』(パイインターナショナル)、『新装版 月のとびら』(CCCメディアハウス)、『星ダイアリー』(幻冬舎コミックス)、『月で読む あしたの星占い』(すみれ書房)ほか著書多数。
■ Webサイト「筋トレ」

清川あさみさんと最果タヒさん「百人一首がくれる、恋の処方箋」

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