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<モードの新星>トモ・コイズミ 小泉智貴さん 「純粋にかわいいものを極める」

<モードの新星>トモ・コイズミ 小泉智貴さん 「純粋にかわいいものを極める」

小泉智貴さん 1988年生まれ=岡田晃奈撮影

モヤモヤなんて吹き飛ばして! トモ・コイズミのカラフルなドレスを初めて見た時、そう励まされ、エネルギーがわくような感覚があった。パステルカラーも、原色も、くすんだ色も臆さずミックス。ラッフルやリボンは過剰なほどたっぷりと。デザイナーの小泉智貴(ともたか)は「女性がきれいに見えるフェミニンなスタイルが好き。純粋にかわいいものを届けたい」と話す。

大学在学中の2011年にブランドを立ち上げてから、衣装デザイナーとしてパフュームやドリームズ・カム・トゥルー、YUKIなど多くのミュージシャンに愛されてきた。

昨年2月、自身初のショーをニューヨーク・コレクション中に開き、一躍有名に。作品を載せていたインスタグラムを通じて著名スタイリスト、ケイティ・グランドに見いだされたことがきっかけだ。同1月半ばに直接メッセージが届き、すぐに開催が決まった。現実味はなかったが「やれる?と聞かれて、ノーとは言えない。これを逃したら次はないかもしれない」。本番まで1カ月を切っていた。過去の作品と、急ぎ作り上げた新作と合わせて約30点を披露したショーは成功し、話題を呼んだ。

<モードの新星>トモ・コイズミ 小泉智貴さん 「純粋にかわいいものを極める」

2019年2月、NYで開いたショーのフィナーレ=大原広和氏撮影

子どもの頃からきれいな色にひかれた。幼稚園では金銀やグラデーションの折り紙を持ち歩き、並べては眺めていた。伯母が営み、母も働く葬儀社で、均整のとれた祭壇や大きな花輪が身近だったことも色彩感覚や左右対称のデザインの源流のようだ。

14歳の時、雑誌で見たジョン・ガリアーノによるクリスチャン・ディオールのオートクチュールに衝撃を受けた。大きなフリルのスカートなど、フラメンコやサルサに着想を得た03年秋冬作品。「これが本当のファッションなんだ。作ってみたい」。その年のクリスマスにミシンを買ってもらい、見よう見まねで服作りを始めた。

千葉大学では美術を学び、ファッション系サークルで腕を磨いた。作品がストリートスナップに採用されたり、セレクトショップから声がかかったり。知人の紹介で衣装の仕事も手がけるようになった。

200色から生むドレス 現場で磨いた瞬発力

衣装制作の現場では、すぐ手に入る素材で即応する瞬発力を鍛えた。代名詞でもあるラッフルのドレスも、約200色あるポリエステル製オーガンディを使う。

「定番の素材を大量に使って、面白く作り替えたい。ラッフルの作り方? それは企業秘密(笑)」。

廃盤品も色ムラのあるB級品も、彼の手にかかれば美しくよみがえる。圧縮袋に入れると段ボールに詰めて運べ、スチームをかければ元通りになる扱いやすさも気に入っているという。

<モードの新星>トモ・コイズミ 小泉智貴さん 「純粋にかわいいものを極める」

昨秋、東京でのショーは「ギフトボックス」をイメージ=大原広和氏撮影

飛躍の年を経た今、「無理なくのんびり、でも着実に続けていく。ユニークでオリジナリティーのある作品を見せたい」と話す。今秋には再び、NYでのショーを予定。今年の「LVMHプライズ」にも応募したばかり。「コラボもしてみたいし、ウェディングドレスも作りたい。かわいいの作る自信、ありますよ。オリンピックでも何かできたらいいな」

(松沢奈々子)

唯一無二、人々の心動かす

「装苑」児島幹規編集長

「載せないわけにはいかない!」。昨年、小泉さんの作品を女優の橋本愛さんに着用してもらい撮影しましたが、それはNYのショーに感銘を受けた部員の一言からでした。

幾重にも重なるラッフルで体のラインがほぼ見えないにもかかわらず、とても人間らしさを感じる唯一無二の存在。ファストファッションをクライアントとする媒体により、売れている=流行というゆがんだ認識が人々に植え付けられてしばらく経ちますが、市販されなくても、そしてたった一着の服でもファッションが多くの人の気持ちを動かすことを改めて伝えてくれた素晴らしい作品。いずれ既製服がでたら、街に個性の花が咲いていくように映るのでしょうね。楽しみです。

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