高山都の日々、うつわ。

#14 どんぶりの中の夢。

#14 どんぶりの中の夢。

だれにとっても特別な食べものがあると思う。
わたしにとってのそれは、間違いなく「どんぶり」だ。

とくに熱々のごはんに
とろ~り卵がかかった親子丼やカツ丼はたまらない。
大きなどんぶりを持ち上げてハフハフ食べる。
そんな夢を、これまで何度見たことだろう。

モデルだからといって、今も昔も極度な食事制限はしていない。
それでもさすがに丼ものを思い切り食べるというのは勇気がいる。
仕事を始めてからは自然と避けるようになって、
思い出せる限りでは、
最後に食べたのは昨年出場したマラソン大会前日のカツ丼。
その時も「ゲン担ぎだから」とかなんとか言って、
無理やり言い訳を作って食べたのだっけ。

そんなわけだから、うちの食器棚には長らくどんぶり鉢がなかった。
でも数カ月前に沖縄を旅したとき、ふと目が止まった。
茶色に黄土色の水玉が入ったこぶりなどんぶり。
渋い色合いの中にもやちむん特有のおおらかさがあって、
なんだか愛らしい。

#14 どんぶりの中の夢。

#14 どんぶりの中の夢。

こんな器で親子丼を食べたら、さぞ幸せだろうなあ。
できることなら誰かとふたり、そろいの器をお互い持ち上げて、
「おいしいねえ」と言いながら頰張りたい。
なぜかそんな妄想がむくむくと湧いてきて、
気づけば重いどんぶり鉢をふたつ抱えて
飛行機に乗っていたのだった。

何も予定のない休日。
あのどんぶりを使いたくて、親子丼を作ろうと思い立った。
でも、思えば家でどんぶりものを作ったことがほとんどない。
ふだんはあまり見ない料理の本を引っ張り出して読む。

おみそ汁用にとっておいただしを少し分けてもらって、
酒、しょうゆ、みりんは同量ずつ。玉ねぎはじっくりと煮詰めて、
鶏肉は固くならないようにさっと火を通す。

最大の難関、トロトロ卵にはコツがあって、
2個一緒にといた卵液を半分ずつ、二回に分けて加えること。
二回目はお鍋に入れたら10秒ほどで火を止めて、
ごはんを持ったどんぶりの上に滑り込ませる。
うん、我ながら上手にできた。

#14 どんぶりの中の夢。

#14 どんぶりの中の夢。

久しぶりに食べた親子丼は、甘くてふわふわでおいしくて。
やっぱり幸せな食べものだなあと思う。

誰かを招いて料理を振る舞うとき、
喜んで欲しい気持ちが強いほど、一生懸命
手の込んだ料理を作ろうとする。

でも、本当に幸せな料理って、
こんな風にささっと作って出して、
「おいしいねえ」と言いながら食べるものなのかもしれない。

肩ひじ張らず、背伸びもせず、ありのままに。
そんな普段着の幸せに似合う料理。
私にとってどんぶりはやっぱり特別で、あこがれなのだ。

#14 どんぶりの中の夢。

今日のうつわ

とうげい駒形のどんぶり

やちむんらしい素朴なたたずまい、ころんとしたフォルムとドット柄が愛らしいどんぶりは、丼ものにもうどんやラーメンなどの麺類にもちょうどいい。色みは渋くても、スリップウェアらしい絵柄はどこか西洋の雰囲気もあって、和洋どちらの料理にもすっと馴染(なじ)んでくれます。ふたつ揃(そろ)いで買ったので、早く幸せな食卓が訪れるといいな(笑)。

    ◇

写真 相馬ミナ 構成 小林百合子

PROFILE

高山都

モデル 1982年、大阪府生まれ。モデルやドラマ、舞台の出演、ラジオ番組のパーソナリティなど幅広い分野で活躍。フルマラソンを3時間台で完走するなどアクティブな一面も。最近は料理の分野でも注目を集め、2作目となる著書『高山都の美 食 姿2』では、背伸びせずに作る家ごはんレシピを提案。その自然体なライフスタイルが同世代の女性の共感を呼んでいる。

高山都の日々、うつわ。

丁寧に自分らしく過ごすのが好きだというモデル・女優の高山都さん。日々のうつわ選びを通して、自分の心地良いと思う暮らし方、日々の忙しさの中で、心豊かに生きるための工夫や発見など、高山さんの何げない日常を紡ぐ連載コラム。

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