按田さんのごはん

ホタテから大根まで、残り物を無理に食べないために。試合に負けて勝負に勝つレシピ

東京・代々木上原と、二子玉川で大人気の餃子(ギョーザ)店、「按田(あんだ)餃子」の店主、按田優子さんの連載「按田さんのごはん」。昨年、著書『たすかる料理』のインタビューで語っていただいた、どこまでも自由な按田さんワールドを、さらにどっぷり、写真と文章で味わえる貴重な機会。第9回は「残り物を無理に食べないために」がテーマです。上の写真は按田餃子の忘年会に出された、按田さんの“謎の無名料理”。最後まで読むと、乾燥や発酵、塩の力を借りた、按田さんと「残り物」との奥深い勝負のだいご味が、見えてくるのです……。

    ◇

あっという間に年が明けて1カ月経ってしまいましたね。皆様いかがお過ごしでしょうか?
私は、今年も食べすぎない作戦で健康的に過ごしたいと思っております。体調管理って色々ありますよね、運動したり、野菜ジュース飲んだり、人によって習慣が違うと思いますが、私がたどり着いたのは、残り物を無理に食べないようにする、です。試合に負けて勝負に勝つ、みたいな。食べきれなかったのは私の負けじゃない、まだ勝負は決まってない、みたいな心意気で食べ物と向き合っています。
というわけで、私はまだ、年末からお正月にかけて食べきれなかったものを新しく買い足したものと織り交ぜながら食べつないでおります。

晩酌の友、ホタテは干し貝柱に

こんな具合です。
年末に買った刺し身類としめサバ。晩酌の友にしていたけれど食べきれず、しめサバは4切れ、ホタテは3切れ残ってしまいました。もう当分生ものは要らないや、という気分なのでもちろん翌日に食べるつもりなし。でも、私が食べないと一向に減らない。

こうなった時に、漬物や乾物でこの締め切り的なものを先延ばしにするのです。
ホタテは、塩を振ってちょっと呼び水を加えて鍋で炒(い)りつけて水分をとばしながら中までしっかり火を通します。それで、そのへんにほったらかしておけば数日後には干からびておいしい干し貝柱の出来上がり。塩分があるのでカビることはありません。

ホタテから大根まで、残り物を無理に食べないために。試合に負けて勝負に勝つレシピ

もうこれで半年貝柱のことを忘れてもよし! でも、煮干しと一緒なら忘れないでおけるね!

同じ要領で干しエビもできます。余った刺し身1切れとか2切れでやるのがなんとも楽しいです。そのくらいなら無理すれば勢いで食べられますが、おいしくは感じない。だけど、干してしまって別の機会にスープや炊き込みご飯に使えたら、なんだかラッキーです。買うほど慣れ親しんだものではないけれど、1粒あると便利なのが干し貝柱。もうこれで半年くらい先延ばしOK!

脂ののったしめサバとご飯で、思いついた

脂ののったしめサバ、2口くらいはおいしかったんですけどね……。ほかにごちそうたくさんあったし、この分だと2週間くらい食べたくない……。ラップして冷凍庫にいれたら最後、もう今年の大掃除まで思い出すことはないでしょう。そうならないように思いついたのが、いわゆる飯鮓(いずし)のようなもの。

残りご飯も1膳分あったし、ちょうど麹(こうじ=ベランダに置いていた)をもっていたので、4切れのしめサバにご飯と麹をちょっとまぶして容器に入れて机の上にほったらかすことにしました(なぜなら原稿を書くたびにふたを開けてみたり観察できるからです)。すでにサバに塩も酢もしてあるし、できる気がしてきたのでした。

ホタテから大根まで、残り物を無理に食べないために。試合に負けて勝負に勝つレシピ

1週間ごとにちょっとずつかじって味見していたサバのなれずし。もういい加減1カ月で観察はやめました。食べごろは2週間目でした! サバのいない机の上は、今とても殺風景です

それでも残っているご飯は……

それでも残っているご飯。
私は冷やご飯を温めなおしたり、チャーハンやおじやにしたりする習慣がないのでなるべく食べきる量を炊いて1回で食べきりたいのですが、残ってしまうこともあります。そんな時には、合わせ酢をまぶしてちらし寿司やライスサラダにするか、麹があると便利です。こうして飯鮓も手軽にできるし、甘酒にもできます。

ドンブリに冷やご飯とお湯と麹を入れてそのまませいろに入れて適当に温めて、ドンブリ内がお風呂より熱くなったら火を止める(私は職業柄ものすごく熱いものを素手で触れるのでけっこう熱めの温度です、たぶんお風呂じゃないです)。冷めてきたらまた火をつける、の繰り返し。夕飯の片付けをしている間にだいたい温度調節して、最後にまた熱くしてそのまま寝ると、翌朝は甘くなっている。

ドンブリの中身を鍋に移して火入れしたらおいしい甘酒の出来上がり。麹とご飯の割合も適当でOK! 温度がうまく調節できれば必ず甘くなります。保温モードの炊飯器じゃなくてもおいしくできますからご安心を。

ホタテから大根まで、残り物を無理に食べないために。試合に負けて勝負に勝つレシピ

お湯をいれると膨れるから作りすぎに注意! 麹も今の時期なら冷蔵庫で保管しないでベランダに置いていて大丈夫ですよー!

以前、ブータンで雑穀の甘酒のようなものを飲んだのですが、きっとこうやって作ったんだろうなと思います。穀物は蒸すほうが合理的だし、しかも、ずっと同じ温度を保つなんてそんな環境、世界中の台所にあるわけがありません、私たちが立っているところは厨房でなくてお勝手であることを忘れずに。

セイロがあれば、生の穀物を蒸すこともできるし、加熱して残った穀物を糖化させることだってできます。炊くとなると、一つの容器と一つの火口に一つの穀物しか炊けません。だから炊飯器という解決策ができて、さらに炊飯器料理が花開いたのですが、なんかそっちの気分じゃないなぁ、炊飯器ジャングルに持っていけないし。

ホタテから大根まで、残り物を無理に食べないために。試合に負けて勝負に勝つレシピ

大根やニンジンの頭がお店の塩水漬の壺にも収まらなかったので昆布と唐辛子で4%の塩漬けにして野沢菜漬けみたいなものに。これで2か月はほったらかしてOK!

こんな風にして、そういえば按田餃子の忘年会も、餃子の餡に使う大量にでた大根の頭を料理してみんなで食べたのでした(1枚目の写真は、蒸した古代小麦に友人が山でいぶしたベーコンと大量の大根葉を炒めたもので、30人分の料理に。始末料理ということは内緒。みんな謎の無名料理を楽しんでいました)。

【今月の按田餃子】
土日祝の「按田餃子」代々木上原店は朝9時から開店しております。
目覚ましに梅白湯に水餃子。二日酔いに朝だけど夜食麺なんてどうでしょう。
ご来店お待ち申し上げます。

おすすめの記事

  • 按田餃子の味を決める衝撃の魚しょうゆと、洗練のお弁当

    按田餃子の味を決める衝撃の魚しょうゆと、洗練のお弁当

  • 按田優子さんがペルーのジャングルで食べた、ある日のご飯

    按田優子さんがペルーのジャングルで食べた、ある日のご飯

  • PROFILE

    按田優子

    保存食研究家。菓子・パンの製造、乾物料理店でのメニュー開発などを経て2011年独立。食品加工専門家として、JICAのプロジェクトに参加し、ペルーのアマゾンを訪れること6回。2012年、写真家の鈴木陽介とともに「按田餃子」をオープン。
    著書に『食べつなぐレシピ』(家の光協会 )、『たすかる料理』(リトルモア)、『男前ぼうろとシンデレラビスコッティ』(農文協)、『冷蔵庫いらずのレシピ』(ワニブックス)。雑誌での執筆やレシピ提供など多数。

    2019年の按田優子さんに最も多く寄せられた、三つの質問

    一覧へ戻る

    RECOMMENDおすすめの記事