このパンがすごい!

ばりっばりピッツァにバゲットにぷるぷるブリオッシュ、止まらぬ快楽の電流/ラ・マン・キ・パンス

「ラ・マン・キ・パンス」=「考える手」という一風変わった名を持つ、別名「手のパン屋さん」。入り口に飾られる、パン生地で作られた巨大な手からそう呼ばれるようになった。

ばりっばりピッツァにバゲットにぷるぷるブリオッシュ、止まらぬ快楽の電流/ラ・マン・キ・パンス

パン生地で作った大きな手

店頭は季節の食材をのせたパンで飾られる。この冬、ピッツァは2種類。おあつらえ向きに、それぞれ白ワイン、赤ワインに合いそうだ。

「長ねぎのピッツァ」は近くの生産者・片山さんのねぎを使用。ばりっばり。薄くて硬い生地が砕けて、口の中に小麦が舞う。ネギから、さわやかな辛味、スパイシーな香り、つづいてとろっと溶けて、甘い。ふりかけた塩、そしてピンクペッパーが、おいしさの炎に油を注ぐ。

「きのこのピッツァ」の、旨味、香りは想定を超える。ぷにぷに歯に挟まれて踊るきのこと、ばりっばりの生地という、食感の両極が快楽の電流を生みだす。

ばりっばりピッツァにバゲットにぷるぷるブリオッシュ、止まらぬ快楽の電流/ラ・マン・キ・パンス

長ねぎのピッツァ、きのこのピッツァ

「お店に楽しい感じを出したい。季節のものが出ると、同じ生地でも、また新しい気持ちで食べてもらえる」と、シェフの田野尻崇さん。いまの時期なら、キッシュにはポロネギ、タルトにはキンカン。旬の食材が店頭を華やがせている。

「紅玉りんごとシナモンのパン」は、冬の果物・リンゴを、かりかりさくさくな円盤状のブリオッシュにごろっとのせている。フレッシュなリンゴにコクのある砂糖とシナモンをふりかけて焼く。キャラメリゼされた表面が甘く、一方中はジューシーで生々しく、紅玉の香りは次から次へあふれでて、酸味はきーんとしみわたる。

ばりっばりピッツァにバゲットにぷるぷるブリオッシュ、止まらぬ快楽の電流/ラ・マン・キ・パンス

自家製カスタードのクリームパン、紅玉りんごとシナモンのパン

この店にもう一種、さらに濃厚でリッチなブリオッシュ生地(クグロフ生地)が存在し、アイテムに合わせて使い分けられる。濃厚なほうで作ったのが、「自家製カスタードのクリームパン」。卵の風味も乳製品の風味もむんむん前に出てくるブリオッシュ生地は、ふわふわぷるぷるであり、端っこはクッキーのようにかさこそ。辛子色のクリームも濃厚とろとろ。二つの濃厚は溶け合って超濃厚へと結実。あっちからびゅーびゅー、こっちからびゅーびゅーと卵とミルクの嵐が吹き荒れる。

ばりっばりピッツァにバゲットにぷるぷるブリオッシュ、止まらぬ快楽の電流/ラ・マン・キ・パンス

ブリオッシュ各種

パリの世界的名店「エリック・カイザー」で修業。フランスの自由な空気を吸って、なにを一生の仕事にすべきか迷い、画家を目指したこともある。だが、美大の予備校で妻の茨草さんに出会ったことをきっかけにパンへと回帰、ラ・マン・キ・パンスを開店した。
「週末にパンといっしょにワインを飲むのが最高の楽しみ」と言うほど2人は食べることが好き。パンを持って帰っては食事やワインとの組み合わせを試す。その時間が新しいパンや食べ方を発見するゆりかごとなる。

「巨大かりんとう」的ルックスの「フィグ・トルネード」。食事の最初にワインと楽しむ「とりあえず」のパンとして、あるいはチーズをディップして赤ワインと合わせるにもうってつけ。ぼりぼりと陥没する皮の地崩れ的快楽。沈み込むと同時に、つぶつぶのシリアルが弾け、イチジクのねっとりとした甘さが広がる。

ばりっばりピッツァにバゲットにぷるぷるブリオッシュ、止まらぬ快楽の電流/ラ・マン・キ・パンス

フィグ・トルネード

「ハード系だけど甘いパンがあったらいいなと思って作りました。砂糖を使わずヘルシーなので、罪悪感が少ない。シリアル生地といっしょにイチジクや、太白ごま油、バターをフードプロセッサーにかけて作ります。グルテンができないからかりかりの食感になるんです」

サンドイッチも充実。パリで定番のタンドリーチキンのサンドイッチをほうふつとさせる「ツナカレーのサンドイッチ」。カレーの風味が、ツナの癖のみ取り去り、旨味(うまみ)を強調する。細く焼いたバゲットが秀逸。ばりばりと音を立て、ソフトせんべい的な軽やかさで砕け散る。

ばりっばりピッツァにバゲットにぷるぷるブリオッシュ、止まらぬ快楽の電流/ラ・マン・キ・パンス

ツナカレーのサンドイッチ

バゲットは、カイザー仕込みの成形冷蔵で作られる。秘密は3%だけコントレックス(超硬水の仏産ミネラルウォーター)を入れること。
「中身はしっとりし、外側はぱりぱりと、食感のコントラストができます」

生地の細かいニュアンスに心血をそそぐ日々。パン職人は本当に手で考えるのかと問えば、
「触ってみて、『今日はあたたかいな』『冷たいな』みたいなことはあります。職人の感覚ですね。パンには頭で考えること以上のなにかがあると思います」 

ばりっばりピッツァにバゲットにぷるぷるブリオッシュ、止まらぬ快楽の電流/ラ・マン・キ・パンス

田野尻崇さんと茨草さん

ラ・マン・キ・パンス
神奈川県川崎市多摩区生田7-11-8
044-934-3757
10:00~19:00(日曜月曜休)

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    PROFILE

    池田浩明

    佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
    日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
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