朝日新聞ファッションニュース

夢のような美、大胆に復権 2020春夏パリ・オートクチュール

この上なく美しい服とは?

1月下旬に開かれた2020春夏パリ・オートクチュール(高級注文服)コレクションは、合理主義のためになおざりにされがちだった服の美の復権を試みたのか、手の技を駆使した大胆で夢のある作風が目立った。一方で、新鋭デザイナーたちのサステイナブル(持続可能)な取り組みも興味深かった。

老舗の緻密な手仕事

夢のような美、大胆に復権 2020春夏パリ・オートクチュール

ジバンシィ

ファッション界では近年、売り上げ重視や生活者の志向の変化から、デザイン性よりもシンプルさや機能を重視する傾向にあった。しかし今回、大きく波打つフリルやドレープなど全体的なデザインや造形に力を入れたブランドが目についた。

会場の柱の上の“空中楽団”が奏でる重厚な管弦楽を背景に、ジバンシィは咲き誇りかけた大輪の花のように、みずみずしくロマンチックな作品を並べた。

テーマは「恋文」。手寄せの細かいプリーツやうねるフリル。黄や淡いブルーの花の色。それでいて、シルエットはきりっとして現代的。デザイナーは「本当に美しいもの。それを見て幸福になれることを伝えたかった」と話した。

夢のような美、大胆に復権 2020春夏パリ・オートクチュール

左:ヴァレンティノ、右:ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェ

ヴァレンティノも「夢そのものになる」として、刺繍(ししゅう)やドレープなどの手技を結集。シンプルな中に花弁状のドラマチックな造形をとり入れたドレスを始め、アイデア満載のコレクションだった。

ジョルジオ・アルマーニ・プリヴェは、アジアの伝統的な絣織(かすりおり)「イカット」のモチーフを刺繍などで表現し、手の込んだ小さなジャケットと揺れるボトムの組み合わせの中に入れ込んだ。緻密(ちみつ)な手仕事の作品が目白押しだった。

夢のような美、大胆に復権 2020春夏パリ・オートクチュール

左:メゾン・マルジェラ
、中央:クリスチャン・ディオール
、右:シャネル

メゾン・マルジェラは改装中のビルを舞台に、ブルジョワ的な華麗さと作りかけの要素をミックスした。繊細なチュールのドレスに、仕付け糸がついたままの上着。「破壊王」とされた創始者の精神を受け継ぎながらも、パリのシックな華やかさが漂う。

クリスチャン・ディオールの会場はフェミニストの米美術家が制作した女神の体を表す巨大な作品の“胎内”。「もし女性が世界を支配したら?」などの文字が刺繍されたタペストリーが下がる中、古代の女神を思わせる金色のプリーツドレスなどを並べた。

シャネルは創始者が子供時代を過ごしたオバジーヌ修道院の庭を会場に再現。ミニ丈のツイードスーツに白いソックスなど若々しく変わった。

新鋭は古着で華麗なドレス

夢のような美、大胆に復権 2020春夏パリ・オートクチュール

左:ジュリー・ドゥ・リブラン、中央:ユイマ・ナカザト、右:イマネ・アイシ

老舗ブランドのこうした動きに対して、主催協会に招待された新鋭たちは持続可能な物づくりを打ち出した。

昨年春に破産したソニア・リキエルを手掛けていたジュリー・ドゥ・リブラン。デッドストックの生地で、日常にも着られる小粋な服をそろえた。数十年前のエマニュエル・ウンガロの花柄地など希少な布で立体的に仕立てたミニドレスや、様々に着こなせるツーピース。スマホも入るポケット付きだ。

生地に限りがあり、20着までしか作れない。「色んな種類の美しい余り布が、パリで探せばいくらでもある。パーティーで誰ともかぶらないのも魅力でしょ」とリブラン。

ディオールなどで30年間も修業を積んだイタリア人ソフィア・クロチアーニによるアエリスも、古着などを再生した華麗なドレスを見せた。「顧客のためだけに作るオートクチュールこそ、エコでエシカル(倫理的)。1着ずつきれいな打ち上げ花火のようにその美を伝えたい」

日本のユイマ・ナカザトは、ビスで布片を合わせて縫製なしに形やサイズをカスタマイズするこれまでの作風に加えて、微生物を由来とする日本製の素材で新たな表現を見せた。布の収縮性が高いので体に沿う上、量感などを表すことも可能。手塚治虫の「火の鳥」をテーマにした大胆な配色のビッグドレスが印象的だった。

カメルーン出身で初参加のイマネ・アイシは、アフリカの民族柄や生地をミックス。プリミティブな強さと現代的な華麗さを兼ね備えた作品が新鮮だ。オートクチュールにサハラ砂漠以南のデザイナーが参加するのは初めて。フィナーレで感涙したアイシは地元誌に「アフリカが立ち上がったと見せることが私の義務。アフリカ独自の高級な服を作りたい」と語った。

夢のような美、大胆に復権 2020春夏パリ・オートクチュール

ジャンポール・ゴルチエ

また、ジャンポール・ゴルチエはファッション界からの引退ショーを開催。アンドロジナス(両性具有)ルックやマドンナが着たコーンブラなど、1970年代から性差や年齢などの枠を超えたとされた作品が勢ぞろいした。

今回は4日間の会期中、公式で36ブランドが参加。次回からは人気のバレンシアガが52年ぶりに戻ってくる。ベテランによる美の追求と、新鋭の新たなアプローチ。歴史あるパリ・オートクチュールは、こうして再生し続けるのか。

(編集委員・高橋牧子)

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