朝日新聞ファッションニュース

不安な時代、安心をまとわせ 20年秋冬、NYコレクション

2020年秋冬のニューヨーク・コレクションが12日まで開かれた。米大統領選や新型肺炎の広がりでざわつく中、目立ったのはシンプルで着心地が良く、時代を問わないような服。サステイナビリティー(持続可能性)への取り組みや、ショーのあり方を考えさせるブランドもあった。

不安な時代、安心をまとわせ 20年秋冬、NYコレクション

マーク・ジェイコブス

服が売れない。買うならネットで安いものを、という考えが広がっている。昨夏に破産申請した老舗セレクトショップ、バーニーズニューヨークの旗艦店では、閉店セールで価格が80%オフなどの靴やバッグが無造作に置かれて痛々しかった。流行を生み、新作を出し続けるファッション界の限界を肌で感じた。

そんな流れのなか、シンプルに徹したのがマーク・ジェイコブスだ。パステルカラーや黒、赤などの単色がほとんどで、すっきりしたラインのドレスやコート。ただ、シンプルでもおとなしい、つまらないという訳ではない。そぎ落とすからこそ、まとう人の個性が際立つ。そんなメッセージを受け取った。

不安な時代、安心をまとわせ 20年秋冬、NYコレクション

(左)マイケル・コース、(右)ザ・ロウ

マイケル・コースは、ブランケットを羽織ったようなケープやタートルネックのドレスなどで体をゆったりと包んだ。デザイナーは「私たちが住む世界は不確かで、ぐらついている」とし、着心地の良さやくつろぎを重視したと説明した。

上質な素材やシンプルなスタイルで注目を集めるザ・ロウは、ボリュームのあるロングコートやワイドパンツでリラックス感があるが、ボタン使いや計算されたシルエットでルーズな印象がない。他人にこびない現代の服だ。

きちんと感を

不安な時代、安心をまとわせ 20年秋冬、NYコレクション

(左)トリー・バーチ、(中央)コーチ、(右)トム・フォード

少し肩のふくらんだジャケットが印象的だったトリー・バーチのような、きちんとした感じの服が主流だ。コーチも多彩な色で遊んだが、襟付きシャツやボウタイをとり入れ、優等生のようだった。

現地在住のファッションジャーナリスト、森光世さんは「韓国の格差社会を描き、米アカデミー賞を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』のように、世界中で貧富の二極化が進んでいる。いつ自分が落ちこぼれるか不安を抱える人が多い中、着心地が良く安心して着られるものが求められているのでは」と話す。

そんな心地良さとファッションの美しさ、楽しさを両立していたのがトム・フォードだ。映画監督でもあるデザイナーは「ファッションと映画は切り離せない」とアカデミー賞授賞式を控えたロサンゼルスでショーを開催。カジュアルなスウェットに花模様が優美な非対称のスカートを組み合わせた。パッチワークのデニムや緩いシルエットのパンツも、ジャケットや豪華な耳飾りと合わせ、モダンに昇華した。

余った古着で

不安な時代、安心をまとわせ 20年秋冬、NYコレクション

(右)コリーナ・ストラーダ、(左)エクハウス・ラッタ

米国でも人々の関心はサステイナビリティーにあり、古着やレンタルサービスが盛況という。

子連れや妊婦がモデルで登場したコリーナ・ストラーダは、デッドストックの生地や、アフリカに大量に寄付され余っている古着を使い、柄や色がにぎやかな服を見せた。アートのような柄や裁断が特徴的なエクハウス・ラッタは、現代的な試みをしていた。プラダやマノロ・ブラニクといった高級ブランドの靴を合わせたが、中古品を扱う店からの提供と明示した。

今回、3・1フィリップ・リムは、ショーではなく店舗で新作を披露。再生素材を使うだけでなく、スタッフの働き方なども含めて持続可能を考えたという。写真展のように、街中で新作を着たモデルらが写るパネルを並べたのはヘルムート・ラングだ。平面ながら服の雰囲気が伝わるユニークな展示で、大がかりなショーとは一線を画していた。

シンプルで時代を問わない服は、手持ちの服とも組み合わせられ、長く着られる。持続可能という意味でもそんな服が求められているのだろう。そこにどれだけ「着てみたい」「着ていて楽しい」という魅力を加えられるのかが、鍵だと感じた。

(神宮桃子)

大坂なおみ選手がデザインスケッチ アディアムとコラボ

不安な時代、安心をまとわせ 20年秋冬、NYコレクション

テニスの大坂なおみ選手と、日本ブランドのアディアムがコラボレーションした服が発表された。

ファッション好きで知られる大坂選手からの声がけで協業が決まったという。大坂選手のスケッチに、アディアムのデザイナー前田華子が手を加えた。アディアムのショーで、赤と黒の対比が際立つオフショルダーのドレスなど、フリルやレースをあしらった5体を披露した。

大坂選手はショー後、「スケッチしたものが形になり、観客が楽しんでいるのを見られて、本当にすごい。ファッションは私にとって、自分自身を表現するものです」と話した。

<ザ・ロウとトム・フォードはブランド提供。それ以外の写真はMarcelo Soubhia氏撮影>

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