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現代生活で“帰るべき場所” ミナ ペルホネンのノスタルジー

現代生活で“帰るべき場所” ミナ ペルホネンのノスタルジー

撮影/猪俣博史

『Casa BRUTUS特別編集 ミナ ペルホネンと皆川明 完全版』

「ミナ ペルホネン」という名前を耳にしたことがありますか? 今年、25周年を迎えるファッションブランドで、デザイナーの皆川明さんがオリジナルのテキスタイルから作っています。フィンランド語に由来するブランド名にも含まれているチョウ(ペルホネン)をはじめとする、詩的な愛らしい図案をもとに、日本各地の織物・染工場の技術を駆使して表現されたテキスタイルは、見ても触れても優しい気持ちになるものばかり。

洋服にとどまらず、インテリアや食、最近は宿泊施設まで手掛けるなど、その世界はさらに広がっています。そんな皆川さんとブランドの歩みや魅力についてまとめた一冊、『Casa BRUTUS特別編集 ミナ ペルホネンと皆川明 完全版』(マガジンハウス)が今、人気となっています。

実は5年前に発売された『Casa BRUTUS特別編集 ミナ ペルホネンと皆川明』(マガジンハウス)も人気を博したロングセラーで、ついには出版社品切れとなってしまっていたので、再版が待たれていました。

今回の完全版は、前回の内容をもとに、先日まで東京都現代美術館で開かれていた「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展のリポートや、18年以降にオープンした宿泊施設「ウミトタ」(香川・豊島)、「京の温所 釜座二条」「京の温所 西陣別邸」(いずれも京都)の紹介など、最新動向が新たに加わっています。

“理想的な大量生産”を追う姿

「これほどまで皆が惹(ひ)かれるのは、どうしてだろう」――。この間、フェアやイベントで皆川さんとご一緒する機会に恵まれ、スタッフや熱烈なファンの方々とも実際にお会いしてきた私は、いくつか商品も愛用しながら、折に触れて考えてきました。心に響くデザインはもちろん、1点1点とても大切に思いを込めて作られていると伝わってくること、身に着けたり使ったりするたびに心が穏やかに、幸せな気持ちになることが理由なのかもしれません。

グラフィックデザイナーの葛西薫さんは、「ある種の郷愁。現代の生活の中で帰るべき場所というか、どこか原始的なものをデザインに感じるんです」と話します。「それは懐古的というよりは根源的で、未来的でもあります。皆川さんはしゃべり方もゆっくりしていて、世間とはまったく別の時間が流れていますよね。服作りにもそれが表れています」

また、「100年つづくブランド」を目標に掲げ、春夏、秋冬シーズンといった半年ごとのファッションサイクルやトレンドにとらわれることなく、時が経っても古びることのないモノを提案していることも魅力のように思います。

2000年に生まれた、ブランドを代表するテキスタイルの一つ「タンバリン」は、これまで生地ロールで約103キロメートル分も作られたとか! 「工場の方が頑張って作ってくださったものをワンシーズンで終わらせるのはもったいない。例えば1回で作る量は少なかったとしても、何年も作り続けたい。長く続けることで、作り出す労に報いたい」と、皆川さん。短期間に大量に作るのではない、“理想的な大量生産”を追求する姿勢に心から共感します。

誰かの人生の一部に

「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展では、皆川さんが誌面で最も重要と語っていらっしゃる「土」という展示パートに、私自身、大変感動しました。お客様から思い出の服とエピソードを募集し、集まった約100着から選ばれた15着が展示されています。

エピソードのなかには、亡くなられた奥さまが大ファンで、「闘病中もミナのお店に行っているときはとても元気になっていました。ありがとうございました」といったものもあり、思わず涙ぐんでしまいました。展示を通して、ミナ ペルホネンの洋服が着る人に力を与えたり、着る人の気持ちに寄り添ったりしながら、その人の人生の一部になっていることが分かります。ファッションの在るべき姿に気づかせてもらったような気がしました。

ミナ ペルホネンの快進撃の一方で、最近、かつて話題となった海外発のファストファッションブランドが相次いで日本から撤退していることは、時代を象徴する出来事のように感じます。

「ミナ ペルホネンには、まだまだ何かできるスペースがあるんだな、と。じゃあ、これから何をしようか。今はそこに興味が移ってきたところです」と話す皆川さん。ミナ ペルホネンが、従来のファッションブランドを超えて、これから、さらにどんな世界を私たちに見せてくれるのか、今から楽しみです。「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」展は、6月末から兵庫県立美術館に巡回予定だそう。関西の方はぜひ足を運んで、ミナ ペルホネンの世界に浸っていただきたいと思います。

(文・若杉真里奈)

5夜連続の作家トーク「代官山 蔦屋書店 文芸フェス」開催

*イベントは中止になりました。
「ほんやのほん」でおなじみ代官山 蔦屋書店の文学コンシェルジュ・間室道子さんの好きな作家を呼んでトークをしてもらう「代官山 蔦屋書店 文芸フェス」。今年は「2020 春の陣」と題し、3月に5夜連続で開催されます。いずれも午後7時スタートで、参加費は1500円(税込み)。●印の回はサイン会もあります。
お問い合わせ・お申し込みは各リンク先、もしくは代官山 蔦屋書店(03-3770-2525)へ。

3月2日(月)●津村記久子さん「なんでも質問箱スペシャル!」
3月3日(火) 川上弘美さん × 岸本佐知子さん「ひな祭りゆるゆる対談」(満席)
3月4日(水)●柴崎友香さん × 小野正嗣さん「スペシャルトークショー」
3月5日(木)●クラフト・エヴィング商會・吉田篤弘さん&浩美さん × 堀江敏幸さんトークショー「ラジオ・やわやわ」(満席)
3月6日(金) 筒井康隆さん × 松浦寿輝さん「スペシャル対談」(満席)


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    若杉真里奈(わかすぎ・まりな)

    湘南 蔦屋書店で雑誌、ファッションを担当するほか、湘南T-SITEの広報、イベント販促も務める。ファッション業界新聞社で編集、展示会事業を担当した後、湘南T-SITEの立ち上げに参加。
    現在、住む鎌倉は、自分にとっての“パワースポット”。

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