猫が教える、人間のトリセツ

怒るお母さんを止める方法。by 福ちゃん(飼い主・イイノナホ)

人間を思うがままに操る、飼い猫たちの実例集「猫が教える、人間のトリセツ」。
月に1回、「猫と暮らすニューヨーク」の筆者、仁平綾さんとイラストレーターのPeter Arkle(ピーター・アークル)さんでお届けします。

  ◇

何か言いたげな表情、今にも人間の言葉を発しそう……。ガラス作家イイノナホさんの愛猫、福ちゃんの写真をインスタグラムで見るたびに、内心そう思っていたけれど、飼い主のイイノさんから「よくしゃべる猫。自分のことを人間だと思ってる」と聞いて、やっぱりねと納得。今回はそんな福ちゃんのお話です。


ガラス作家イイノナホさんの自宅は、敷地内にガラス工房を有する一軒家。3人の娘さんと柴犬(しばいぬ)の小太郎と共に暮らすその家に、猫を迎えたのは今から4年ほど前のこと。

「近所の獣医さんに猫が欲しいと相談に行ったら、生まれたばかりの猫がいると教えてもらって。7匹の子猫のうち2匹を譲り受けたんです」

キジトラの雑種で、メスの姉妹。1匹はやや長毛で、毛がふさふさ。「正面から見ると、ダリアの花のようだったのでダリアと名づけました」とイイノさん。もう1匹にも何か花の名前をと考えたけれど「なんか違うね、ということになって。福々しかったので福ちゃんと名づけました」

怒るお母さんを止める方法。by 福ちゃん(飼い主・イイノナホ)

子猫のときの2匹。左が福ちゃん、右がダリア。現在は4歳。「マイナスオーラが微塵もない陽気な2匹は、癒やしの泉です」

おとなしくて、抱っこが大好き。ふわふわのぬいぐるみみたいなダリアに対し、福ちゃんは、よくしゃべる猫。「声をかけると、まるで話しているようにいろんなニュアンスの『ニャ』で答えてくれる」とイイノさん。「自分のことを人間だと思っていると思います」

朝はガラス工房へ出向き、出勤してくるスタッフを「ニャ(おはよう)」とお出迎え。ミーティングに出席し、作業中も「ニャ?(何かお手伝いない?)」と積極的に参加。「たまに朝、福ちゃんが工房に姿を見せないことがあると、スタッフから『ナホさん、福ちゃん今日は無断欠勤です』と報告が入ります(笑)」

怒るお母さんを止める方法。by 福ちゃん(飼い主・イイノナホ)

何も制作できないけれど、工房の一員としてやる気満々。夜はスタッフが全員帰るまで、玄関で待っている福ちゃんです

「猫たちと一番下の娘の誕生日が一緒というのもあって、姉妹のよう。福もダリアも、私のことをお母さんだと思っています。娘が5人いる感じですね」

ある日のこと、福ちゃんが類いまれなる“姉妹愛”を発揮。それはイイノさんが、娘さんと向き合ってダイニングテーブルにつき、お説教をしていたときのことでした。

部屋の片づけのこと、勉強のこと……。怒って話すイイノさんの声を聞きつけた福ちゃん。どこからともなく飛ぶようにやって来て、イイノさんの膝(ひざ)の上に乗り、顔のほうへくるりと向き直ると、イイノさんの口を必死で塞ぐようなしぐさ。「右の前脚、左の前脚を交互に使って、私の口を撫(な)でるように押さえてきたんです」

体をはって姉妹を守ろうとした福ちゃん。なんとこれ、一度や二度のことではありませんでした。イイノさんが怒っていると、正義の味方みたいにどこからともなく飛んでくるそう。口を押さえようとするのを無視してイイノさんが怒り続けていると、今度は顎(あご)をガブガブと嚙(か)んでくるというのだから、かなりの本気度。福ちゃん、それじゃあお母さん、思わず笑ってしまって、お説教にならないじゃないですか。

怒るお母さんを止める方法。by 福ちゃん(飼い主・イイノナホ)

入ってはいけない場所へ福ちゃんが入ろうとしたとき、イイノさんが「そこはダメ」と伝えると、「ニャニャニャ」と言って後ずさりしたことも。人間語を聞きわける天才猫

イイノさんの言葉が理解できているとしか思えない福ちゃん。「最近は娘たちのことを『あいつらも悪い』と思ったのか、諦めたのか、お説教をしていてもあんまり飛んでこなくなりました。背中のほうで『ニャオ(ほどほどにな)』と鳴くぐらいです(笑)」

怒るお母さんを止める方法。by 福ちゃん(飼い主・イイノナホ)

「お母さん、怒るのはほどほどにしてくださいよ」。役者並みに表情豊かな福ちゃん


怒るお母さんを止める方法。by 福ちゃん(飼い主・イイノナホ)

イイノナホ
ガラス作家。北海道洞爺湖温泉町生まれ、東京四谷育ち。武蔵野美術大学彫刻科卒業後、吹きガラスを始める。ピルチャック・グラススクール(米シアトル)などで学んだ後、作家活動をスタート。iino naho glass garden(ingg)のブランド名のもと、アートピースのほか、ペーパーウェートやシャンデリアなどを制作。各地で個展を開催するなどして活躍。2019年、東京・千駄ヶ谷に直営店をオープン。

怒るお母さんを止める方法。by 福ちゃん(飼い主・イイノナホ)

東京都渋谷区千駄ヶ谷5-3-14 green park 101
03-6883-4932
水-土12:00-19:00、日12:00-17:00
月火休
https://www.naho-glass.com/

インスタグラム https://www.instagram.com/iinonaho/

次回は、3月下旬の配信予定です。

「猫が教える、人間のトリセツ」バックナンバー


  •    

    婿の使いかた。by みかん(飼い主・中島孝介&さくら)
       

       

    婿の使いかた。by みかん(飼い主・中島孝介&さくら)


       


  •    

    いざとなったら、テレパシー。by まるお(飼い主・坂田阿希子)
       

       

    いざとなったら、テレパシー。by まるお(飼い主・坂田阿希子)


       

  • 『猫と暮らすニューヨーク』が本になりました!!

    怒るお母さんを止める方法。by 福ちゃん(飼い主・イイノナホ)

    『ニューヨークの猫は、なぜしあわせなの?
    75匹の猫と飼い主のリアルな暮らし』

    仁平 綾 (著) 朝日新聞出版

    猫と暮らすニューヨーク』として連載していたものから、
    “猫の飼いかた”の部分に注目し、さまざまなアイデアや実践をセレクト、再編集した一冊。
    個性豊かで愛らしい、NYの猫たちの写真が満載で、猫好き必読の書。

    1760円(税込み)

    >>「猫と暮らすニューヨーク」まとめ読みはこちら

    PROFILE

    • 仁平綾

      編集者・ライター
      ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、『ニューヨークおいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(筑摩書房)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
      http://www.bestofbrooklynbook.com

    • Peter Arkle(イラスト)

      ピーター・アークル スコットランド出身、ニューヨーク在住のイラストレーター。The New Yorker、New York Magazine、The New York Times、Newsweek、Timeなど雑誌や書籍、広告で幅広く活躍。著書に『All Black Cats Are Not Alike』(http://allblackcats.com/)がある。

    ゴロゴロで翻弄する。by グーちゃん(飼い主・河村千影)

    一覧へ戻る

    飼い主はボディガード。byちゃちゃまる(飼い主・中村橋吾)

    RECOMMENDおすすめの記事