私のファミリーレシピ

朝食のバナナブレッドを、ヴィーガンで

「おふくろの味(ファミリーレシピ)を作ってください」。ニューヨーカーの自宅を訪ね、料理を囲み、家族の話を聞いてつづった、ドキュメンタリーです。今回は、友人のジェシー&ジョイ夫妻のお話です。
(文と写真:仁平綾)

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ニューヨークで暮らし始めて、初めて出会った「肉を食べない人」が、ジェシーだった。それまでベジタリアン(菜食主義者)のことは知っていたけれど、日本では身近にいなかったこともあって、思わず「どうして?」「いつから?」とジェシーを質問攻めにしてしまったのを覚えている。それから数年が経った今、私のまわりには、たくさんの「肉を食べない人」がいる。

実際には、肉も魚も食べない人、卵は食べる人、チーズまでOKな人など幅があって、ジェシーは肉、魚、卵、乳製品を一切食べない菜食主義者(ヴィーガン)で、奥さんのジョイは、魚を食べる菜食主義者(ペスカタリアン)だ。元々肉を食べていたけれど、ジェシーと付き合うようになって変わったという。

朝食のバナナブレッドを、ヴィーガンで

ジョイはチーズもバターもOKだけれど、ヴィーガンのジェシーは食べられない。2人が冷蔵庫に常備しているのは、植物性の油やナッツなどが主原料のヴィーガンバター

ジェシーのヴィーガン歴は長い。きっかけは「16歳の時。パンクロックミュージックから」。(ちなみに、私のまわりにいるヴィーガンやベジタリアンは、畜産業が環境に与えるインパクトを憂慮して、あるいは動物愛護の観点からなどさまざま)。

当時傾倒していたパンクロックの歌詞やレコードのライナーノーツから、反政府、環境保護、動物愛護などのメッセージに触れ、菜食主義を実行することに決めた。そんなジェシーが、ヴィーガンになる前から親しんでいた家庭の味が、バナナブレッドだ。

バナナブレッドは、アメリカではポピュラーな朝ごはん。「カフェに行けばだいたい売ってるし、コーヒーとバナナブレッドは定番だね。パンプキンブレッドなんかもそう」とジェシー。「パンケーキと同じような存在かも」とはジョイ。

朝食のバナナブレッドを、ヴィーガンで

バナナブレッドをおいしく作るコツは「皮が真っ黒になるまで熟れたバナナを使うこと」と2人。いつでもバナナブレッドが作れるよう、真っ黒なバナナを冷蔵庫に保存しているそう

当時、カリフォルニアに住んでいたジェシー。近くに暮らしていた祖母のジーンさんが、毎週月曜日にジェシーと妹のケイティーさんの面倒を見に自宅に来ては、夕食を作ってくれていた。ジーンさんの得意料理は、鶏肉や魚のソテーに、野菜を添えたもの。それから、じゃがいも料理。いずれも「1950年代のアメリカの典型みたいな食事」で、ゼリーの素“ジェロ”を使ったゼリー料理が食卓に並ぶこともあったという。ベイキングも得意だったジーンさんが、たびたび作ってくれたのがバナナブレッドだった。

朝食のバナナブレッドを、ヴィーガンで

普段食事を作るのは、時間の融通が利くアーティストのジェシー。「料理よりもベイキングが得意」と言うジョイは、インターナショナル・マーケティングに従事する敏腕会社員。現在妊娠中で、2月末に出産予定

小麦粉に砂糖やミルクを加え、よく熟れたバナナを潰して混ぜ込み、焼く。祖母ジーンさんのバナナブレッドは「砂糖たっぷり。しっかり甘かった」とジェシー。そのレシピを受け継いだのは、母のパティさん。ジェシーのため動物性食品を避けた料理を作るうち、菜食主義になったパティさんは、ミルクや卵の代わりに豆乳や植物性オイルを使うレシピにアレンジ。サンクスギビングやクリスマスなどのホリデー前になると、いつもバナナブレッドを焼き、カリフォルニアからニューヨークの2人の元へ送ってくれていた。そのバナナブレッドのバトンを受け取ったのが、ジョイだ。カルダモンやシナモンのスパイスを利かせ、自分たちの好みに合うよう味を変化させ楽しんでいる。

朝食のバナナブレッドを、ヴィーガンで

生まれてくる子どものため、最近引っ越しをした2人。ブルックリンのクリントンヒルと呼ばれるエリアに暮らす。最新のキッチンと洗濯乾燥機付き(NYでは貴重!)の部屋で、うらやましい限り

ヴィーガンバナナブレッドは、材料も作り方も、いたってシンプル。ボウルに砂糖とオイルを入れ、ミキサーで混ぜる。そこに豆乳、潰したバナナ、ふるっておいた粉類を加えてさらに混ぜたら、型に流し入れ、オーブンで焼くだけ。オーブンに入れてから約1時間で、こんがりきつね色のバナナブレッドが完成する。

続きはこちら「2人の相違を“違い”だとは思わない」

朝食のバナナブレッドを、ヴィーガンで

ジェシーの母、パティさん直伝の隠し味が、豆乳クリ―マー(コーヒー用のクリーム)。普通の豆乳よりも、こってりとリッチで甘みもある

朝食のバナナブレッドを、ヴィーガンで

2人の暮らしに音楽は欠かせない。趣味のレコードを楽しむためのプレーヤーはテクニクス社製。スピーカーはBOSEのものを愛用

ジェシー・ワイルズさんのウェブサイト https://www.jessewhiles.com/

■ヴィーガンバナナブレッド(約12㎝×23㎝の型1台分)

・材料
小麦粉 1 3/4カップ
ベーキングパウダー 小さじ1 1/4
ベーキングソーダ 小さじ1/2
塩 小さじ3/4
砂糖(ブラウンシュガーを半量混ぜると良い) 2/3カップ
キャノーラオイル(またはココナツオイル) 1/3カップ
ヴィーガンミルク(豆乳クリ―マーを使用) 大さじ2
熟れたバナナ 1カップ分(3本以上)
シナモン(パウダー) 小さじ1
カルダモン(パウダー) 適量
クルミ 1/4カップ

・作り方

1 ふるった小麦粉と、ベーキングパウダー、ベーキングソーダ、塩を合わせておく。
2 ボウルに砂糖とオイルを入れて混ぜ、ヴィーガンミルクを加え、なめらかになるまで混ぜる。
3 2のボウルに1 の粉類、つぶしたバナナを加えて混ぜる。混ぜ過ぎに注意。シナモンとカルダモン、刻んだクルミも加える。
4 生地を型に流し入れ、約180度のオーブンで50~55分焼く。
5 刻んだクルミ、砂糖、ヴィーガンバター(いずれも分量外・適量)を混ぜたものを、バナナブレッドの上に乗せる。さらに10分焼いたら完成。

続きはこちら「2人の相違を“違い”だとは思わない」

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  • PROFILE

    仁平綾

    編集者・ライター
    ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、『ニューヨークおいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(筑摩書房)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
    http://www.bestofbrooklynbook.com

    母と息子をつなぐ、一冊の料理本

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