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贈り物でジャムやお茶をもらうとつらい…… 人気バイヤー直伝、相手も自分も困らないギフト選び

いくつもの別れやスタートが重なる春は、贈り物の機会も多い季節です。とはいえ、ギフト選びは慣れていないと、楽しいだけでなく、「何をあげれば喜ばれるか、わからない」「失敗したくない」などと、気負ってしまう側面もあります。

自分ではない誰かに喜んでもらうために、審美眼をフルに発揮して「もの」を選ぶ――。ギフトを選ぶという行為は、バイヤーの仕事に通じるものがありそう。

そこで、インテリアショップIDEEや、羽田空港内のTokyo’s Tokyo、国立新美術館のミュージアムショップなどを手がけてきたフリーバイヤーの山田遊さんに、“ギフト選びのゆううつ”を乗り越えるヒントを聞きました。

自分が語れないものは危険

―― 山田さん、失敗しないギフト選びのコツって何ですか?

僕の贈り物は、おすそわけに近いですね。自分が使ってみてよかったなとか、おいしいなとか、そういうものを差し上げることが多いです。最近だと、大分県の別府温泉の湯の花のエキスで入浴剤を作ってる会社さんがあって、知人のデザイナーがパッケージをデザインしたんですよ。それで小さいやつをもらったんですけど、それがすごく良かった。で、冬になったとき、ちょうどいいなと思って家族に贈ったんです。

たまに「うーん……」と言われることもあるんですけど(笑)、仕事上いろんなものを選んできて、いろんなものを使ってきているんで、そこを信じて。逆に、「あの人が好きだろうな」って自分が知らないものとか、わからない領域のものを選ぶと、そっちの方が間違いが多かった気がします。

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―― たとえばどんな失敗が?

やっぱり身につけるものはサイズ感もあるし、難しいですよね。僕、この仕事をやる前にジュエリー屋をやっていて、いろんな間違いを見てきたので(笑)。たとえば男性が女性にジュエリーを贈るとき、相手の女性を連れてきてくれれば何かしらおすすめもできるんですけど、そうでなければわからないじゃないですか。いくら頑張って想像しても、知らない人に、しかも身につけるものって。

使ってもらえないのが一番つらいんで、まあ無難な方向にいってしまうんですけど、そうするとコミュニケーションも生まれにくいというか。

それがどんなもので、どこがすごく良くて、ジュエリーなら「この石にはこんな話があって……」みたいな会話が生まれないと、あともう、そのモノを気に入るか気に入らないかの話になる。それがどのブランドで、値段がいくらで……みたいな。それ、ものすごく危ないんですよ。ジュエリーだけでなく、何でもそうです。

僕はだいたい一回は使って、これいいなって思っているものをすすめるようにしています。雑誌の取材とかでも、基本的に同じ。自分の好きなものがあって、それを人にあげた方が、その時点で会話ができますよね。

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困ったときの「季節感」

―― 日ごろそんないいもの使っているわけではないし、自分のセンスにも自信があるわけではないから、使い慣れたものはむしろ、贈りづらい気がします。

そうなったときは意外と、季節感が大事です。季節感って万人に共通ですし、いまはだんだん四季がなくなってきていますけど、日本人はそういうところに趣を感じる人なので、やっぱり考えてあげるといいですよね。

たとえば相手が花粉症だとわかっていれば、アロマオイルとかスプレーとか。いまは新型コロナウイルスがニュースになっているからマスクを贈る……っていうのもヘンですけど、まあ、そういう時事ネタ、季節ネタみたいなのは重宝されますよね。

あと最近、東京も暑いじゃないですか。だから扇子とか。ただ、相手が扇子を持ってるか持っていないかくらいはチェックしておかないと、さすがに。お気に入りのものを持っていたら、それはちょっと違う、となりますよね。

ほかにも、夏ならオーガニックの虫よけスプレーもいいと思います。普段使っているものよりほんの少しいいものを、という風にしてあげたら、けっこう喜ばれます。やっぱりドラッグストアで売っているような蚊取り線香をもらっても、つらいですよね。全然悪くはないですけど、あんまり日常的すぎるとやっぱり……。

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―― ギフト感は乏しいですよね。自分で買ってるし、みたいな。

そうそう。そこも大事なポイントです。夏の話になったので、たとえばですけど、これけっこういいんですよ。和紙のうちわですけど、ちょっと水をつけてあおぐと涼しい。水に強いうちわなんですね。やっぱりただのうちわじゃなくて、ちょっとだけプラスがあるじゃないですか。そんな風に少し足し算とかかけ算とかがあると、話の種になります。

ちょっと高い線香花火とかも喜ばれます。自分では買わないけど。「ちょっと遊んで」って渡すと気が利いてますよね。寒いときだったら、あったまるものとか。そういう視点だと、考えやすくなりません?

あと、国にもよります。暑い国に持っていくならチタンの二重構造のカップもいいと思います。もともと魔法瓶の会社さんが作っているものなんですけど、チタンってすごく熱伝導が低い金属なので、冷たいものは冷たく、温かいものは温かく保ってくれる。朝、氷水を入れておくと、夕方まで冷たいですよ。二重になっているので、触ってもカップ自体が冷たいとか熱いってことはないですし。

―― ハイボールを飲むのに使いたいです(笑)。

最高。ハイボール飲むの、絶対最高。今度、仕事でシンガポールに行くんですけど、あちらの人ってハデ好きだから、こういうカラフルなものを持っていくとめっちゃウケるんですよ。

最近、海外に行くときは、日本茶のスターターキットを持っていくことが多いです。水出しのゆず緑茶なんですけど、外国の方にまちがいなくウケる。日本的ですし、抹茶系のものってすごい売れてるし。水出しって、時間がかかるのが嫌じゃないですか。けどこれはすごい楽で、このボトルに水を入れて、ティーバッグ1個入れて、30秒振るだけで飲めるんですよ。

茶葉をもらうのって、この面倒な感じをどうしよう?みたいなこともありますよね。でも、これだとティーバッグだし、海外の人は翌日から普通に「うまいねー」って飲んでたので、よかったよかったって。

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ワンランク上の“消えもの”

―― 「いただいたものを使うには、これが必要」「うちにはこれがないから、せっかくもらったのに使えない」とならないのは、いいですね。

僕はけっこう“消えもの”で変化球はいつも探してます。食べ物とか使ってなくなる物を僕らは「消えもの」って呼んでますけど、そういうのってあげやすいから選ばれがち。気づくと、もらいもののお茶っぱだらけってことありません? 僕の場合、コーヒーはまだ飲む気になるけど、お茶はなあ……って。でも、いつの間にかすごいたまっちゃって。

ジャムとかも、もらうとつらいんですよ。ハチミツとかもらうと、これは使いきれんぞ……みたいな。ありがたいんですけど、これは無理だぞ……というのがすごいあるので、消えものの変化球をいつも探してますね。まあ大事なのは、その人のことをよく知っているかだと思うんですよね、やっぱり。

―― 日ごろ、相手のどんなところを見ていれば、贈りものをするときに困らないですか?

たとえば、暑がりとか、汗っかきとか。そういうときにハンカチとか、タオルとか、自分が知っててこれ良いよっていうものがあったら、非常に渡しやすいですよね。

たとえばこの今治タオル。僕これ、使ってます。タオルって、家庭で使う場合は結局、白とかベージュとか清潔感のある薄い色が人気なんですよ。これも白なんですけど縁だけ色があって、複数持ってると重宝するんですよ。

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なぜかというと、こういうタオルっていろんな所で使うじゃないですか。キッチンとか洗面台とか、トイレとか。縁に色があると、使う場所で色分けできたりとか、家族でおんなじタオルをシェアする場合、たとえばバスタオルとか「ちょっとお父さんのは……」みたいなときに(笑)、色によって誰のものか判別ができたり。

―― うわあ、便利そう!

いま、モノがなかなか売れない時代ですけど、やっぱりそのモノを持ったときに、どういう使い方とか、生活とか、シーンが生まれるかみたいな、そこはけっこう大事なんです。タオル詰めを贈って、ただ「今治だよ」って言うより、自分が使っているものなら、よっぽどいろんなことが言えると思うんですよね。その方が間違いがないし、それをもし相手が知っていたとしても、「いいよね!」と盛り上がればいいし。

僕、この前もらってすごいうれしかったのが、オーガニックのピロースプレー。枕に吹きかけるヤツ。「なんか最近、寝付きが悪くて」って話をしていたらくれて、「ありがてぇー!」って思って。それまでピローミストっていう習慣がなかったんですけど、もらったらやってみたくなるじゃないですか。案の定、良い香りの中で寝るとぜいたくで、毎日使ってます。

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贈り物のハードルを下げる

―― 会話にヒントがあるんですね。

さっきも汗を拭かれてましたけど、そこで「暑がりなんですか?」っていう会話があれば、インプットできるじゃないですか。そうすると、「前にお会いしたとき、そうでしたよね?」って言って、もう何か贈れる。

―― 日ごろから意識していないとダメですね。私はいつも、必要に迫られて贈り物を無理やり選んでましたけど、そういうスタンスだから苦労するんだな、と。

この間、すごいおいしいオリーブオイルをもらって、「うまっ!」って思って。それがある日、小瓶でバーッと売られてたときに、えーい!って買って、「うまい」「うまい」って配ってましたけど、まあ喜ばれました。

僕、けっこう気軽にいろいろとあげてます。なんでもない日に。この日のために何か買おうじゃなくて、いいものあった、買った、あげる、みたいなほうが多いです。普段からそういうことをちょこちょこやっていると、誕生日を忘れようが何しようが許される(笑)。一応、母の日とか父の日とか誕生日も意識はするんですけど、そういうときの方が選ぶの嫌なんですよ。プレッシャーがかかるじゃないですか。

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―― それです、我々が贈り物をするときのメンタリティーは。

ですよね。だから僕は贈り物をすること自体のハードルを下げようと思って。アメをあげる大阪のおばちゃんくらいの“あげる好き”な人間になっておくと、一度や二度失敗したとて。ねえ?

僕、セブンイレブンの冷凍食品のラーメンがすごいうまいと思ってるんですけど。あれ、食べたことない人には「絶対食え!」ってめちゃめちゃ力説するんですよ。「あれが200円台とか100円台とかでやれるセブンの恐ろしさたるや、やばい!」って。そうして自分が感じた「うまい!」を共有できれば。

―― その「思い」はもらった方も否定しようがないから、「失敗」はないですね。

ないないないない。僕の場合ですけど、ちょっとした喜びを人と共有したい。一緒においしいスイーツとかご飯食べにいくのって、幸せじゃないですか。あれに近いです。そのモノ自体がこうでなきゃというよりは、「うまーっ!?」って一緒にやってる、あの感覚。あれがものをあげるときに起きていると、なんか良くないですか? それです、僕にとってのギフトは。

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カタログギフトは「無難さの象徴」

―― やりがちな失敗ってありますか、一般の私たちが。

万人に好かれるものなんかないと思うんですけど、やっぱカタログギフトって需要が多いんですね。でもあれは、放棄っちゃ放棄なんで(笑)。それが、ある種の無難さの象徴だと思うんですけど。僕の場合はもらってもなーんもうれしくない。うれしいですか?

―― 最初はやったー!って思うんですけど、ページをめくっても別に欲しいものが……

なくないですか? その人からもらった感が何もねえな、みたいな。「ありがとう」って気持ちが「やったー!」になっちゃって、それを贈ってくれた人とのコミュニケーションも、一切ないですよね。

かといって、ヘンな絵皿をもらったら、それはそれでつらいんですけど(笑)。でも、笑いにはなりますよね。「なんだよ、これ」ぐらいは言えますから。

贈り物でジャムやお茶をもらうとつらい…… 人気バイヤー直伝、相手も自分も困らないギフト選び

―― そういえば、以前、引き出物で「岡田」って書かれた徳利(とっくり)をもらったことがあります。

えっ!?ってなりますよね。でも無難にいくなら、失敗した方がいいってことですね、記憶に残るから。

お酒なら、NOUSAKUとか。これ、普通のお酒をおいしくするのにとても適してて、ちょっとまろやかに感じるじゃないですか。この辺はさっきのチタンのカップくらい“鉄板”ですよね。やっぱ岡田の徳利よりは絶対こっちだよね。パワフルに推すな、これを。いやあ、岡田の徳利は(笑)。

―― いじりますね。でも笑い話になったから、もらって無駄になりませんでした(笑)。

そう感じられたらいいですよね。まあ言えるのは、やっぱり自分で使ったり食べたり飲んだりしてよかったなって思えるものは、間違いないですよね。物で残るのは結構重いんで、ひとの負担にならないものはいいですね。なおかつ自分が愛せるものっていうのは。岡田の徳利、贈る人は絶対使ってないですもんね(笑)。

(文・&w編集部 岡田慶子 写真・猪俣博史)

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