このパンがすごい!

罪深きカレーパン! 座右の銘は「ボリューム命」/ブーランジェリーオンニ  

横浜に、人を狂わせる罪深き「カレーパン」がある。からり揚がった粗挽(び)き衣かりかりと、舌に垂れ落ちるたっぷりのカレーどろりのコントラスト。スパイスの爽快さもさることながら、玉ねぎの甘さ、肉のコクがぱんぱんに充満、とろけていく生地の甘さとのあいだで至福の甘辛ワールドが展開される。

このカレーには、なんとも甘く、コケティッシュな油分が存在している。近賀健太郎シェフがかつて食べたカレーから、ヒントを得たものだ。
「カレーライスに厚切りベーコンが乗ってて超おいしかった。それが忘れられなくて、カレーパンにベーコンは絶対入れようと思ってました。飴(あめ)色ベーコンをカレーと混ぜて、ひと晩ふた晩寝かせるようにしています」

罪深きカレーパン! 座右の銘は「ボリューム命」/ブーランジェリーオンニ  

カレーパン(上)と断面

ベースとなるカレーは大阪の「インド料理ナビン」による。ナビンは数々の名ベーカリーにオリジナルのカレーフィリングを提供。「プライスカードに『ナビン』の文字を見つけたら買い」を私は実践している。

近賀シェフは、カレーパンで名高い「ZOPF」の出身。長時間揚げることによる濃厚な味わいの衣に、ZOPFの遺伝子を感じる。

「食パンの耳を粗くくだいてかりかり感を出しています。しっかり長めに揚げ、油っぽくならないようにしっかり油を切る。生地はバターロール。発酵しすぎていると油を吸っちゃうので、発酵具合も気をつけて」

近賀シェフの座右の銘は「ボリューム命」。
「とにかく具材を多く。『なんとかパンにはさまってる』ぐらいの厚さにしています」

罪深きカレーパン! 座右の銘は「ボリューム命」/ブーランジェリーオンニ  

総菜パン各種

「ハーブウインナーとレモンゼスト」。デニッシュに対して通常より明らかに巨大すぎる極太ソーセージ。気持ちよくくだけ散るぱりぱりデニッシュ。ソーセージからだだもれになる肉汁、肉香を、受け止めるのは底に敷かれたマッシュポテト。こってりの嵐の中、すりおろしたレモンゼストが清涼剤となる。

このパンには、聞いて納得の誕生秘話がある。
「高校生の男子が、いつも部活の帰りにパンを買って食べてくれていたんですが、もっとがっつりしたのがほしいと言われて。このパンを作って『どうだ!』と出したら、すごく気に入ってくれました(笑)」

罪深きカレーパン! 座右の銘は「ボリューム命」/ブーランジェリーオンニ  

デニッシュに対して通常より明らかに巨大すぎる極太ソーセージ

こってりの嵐といえば、「黒オリーブとセミドライトマトのリュスティック」もぜひ挙げたい。外側が超かりかりなのに、なんで内側はこんなにしっとりちゅるりなのか。チーズがとろけ、小麦がとろけ、トマトとオリーブの旨味(うまみ)があふれる。のみならずガーリックの風までも吹くこてこてぶり。

罪深きカレーパン! 座右の銘は「ボリューム命」/ブーランジェリーオンニ  

黒オリーブとセミドライトマトのリュスティック

断面をよく見てみる。生地と具が層になっているのがわかるだろうか。これこそ、通常では考えられないほどの「かりかり」と「ちゅるり」ギャップの秘密。生地と具材をミルフィーユ状に重ねているのだ。
「生地と具材を6層ずつ重ねています。生地1枚1枚が薄いので、かりかりばりばりになる。具材から水分が出て、しっとりになります」

ときには、生産者から送られてきた季節の野菜でアドリブ的な季節メニューが短期間出ることも。ほうれんそうには、チーズ、ベーコン、じゅわっとしみすバター。出会えたらラッキーこの上ない。

菓子パンもこってりボリューミーを貫く。ブリオッシュの器に、カスタードとフランボワーズをたっぷり盛った「フランボワーズのブリオッシュ」。卵感濃厚ぎんぎんなカスタードのとろとろ激流が、ベリー感を発散するフランボワーズの輝きと争いながら、その闘技場であるブリオッシュそのものを地崩れのように溶かし去り、ますますコクを増していくという怒涛(どとう)の展開。

罪深きカレーパン! 座右の銘は「ボリューム命」/ブーランジェリーオンニ  

フランボワーズのブリオッシュ

カスタードの濃厚さの源は、たっぷり使われるフレッシュな卵黄と、炊き上げ寸前に入れるバター。「香りやコクを出すため、バターにあまり火が入らないようにしています」。カスタードによっていとも簡単に消失するほど口溶けがいいブリオッシュは、火通りのいい型を使って焼きあげることから生まれる。ただボリューミー、ただこってりなだけではない。そのインパクトをどうしたら食べ手に十二分に届けられるか、工夫に余念がないのだ。

罪深きカレーパン! 座右の銘は「ボリューム命」/ブーランジェリーオンニ  

店内風景

ブーランジェリーオンニ
神奈川県横浜市港南区上大岡西3-10-1
045-367-8501
8:00~18:00
日曜・水曜休
http://boulangerie-onni.com

>>店内やパンの写真をもっと見る ※写真をクリックすると、拡大表示されます

こんなお店もおすすめ

  • 食事処を理想とするパン屋「もっとそぎ落として力を抜いていきたい」/ ON THE DISH

    食事処を理想とするパン屋「もっとそぎ落として力を抜いていきたい」/ ON THE DISH


    神奈川県・横浜市

  • 横浜・元町で130年! 日本最古の伝統を引き継ぐノッポの山食パン/ウチキパン

    横浜・元町で130年! 日本最古の伝統を引き継ぐノッポの山食パン/ウチキパン


    神奈川県・横浜市

  • 本場NYの斜め上をいく、新食感ベーグル/ブラフベーカリー

    本場NYの斜め上をいく、新食感ベーグル/ブラフベーカリー


    神奈川県・横浜市

  • 最新ベーカリーが「昭和風看板」のままの理由/ GORGE(ゴルジュ)

    最新ベーカリーが「昭和風看板」のままの理由/ GORGE(ゴルジュ)


    神奈川県・横浜市

  • ベトナム語の看板が出ているプレハブで食す“本物”のバインミー/タンハー

    ベトナム語の看板が出ているプレハブで食す“本物”のバインミー/タンハー


    神奈川県・横浜市

  • >>まとめて食べたい!「このパンがすごい!」記事一覧

    >>地図で見る

    PROFILE

    池田浩明

    佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
    日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
    http://panlabo.jugem.jp/

    行列店で出会った八朔りんごのパイ……その衝撃を一言でいうなら!/志茂

    一覧へ戻る

    ハード系もしっとりもっちり「SAWAMURA」森田シェフが実現した三つの夢/BREAD IT BE

    RECOMMENDおすすめの記事