料理家・冷水希三子の何食べたい?

ほんのりと春香る、鯛とふきのとうの春巻き

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回は春を告げる食材、ふきのとうを使ったサクフワの春巻きを教えていただきます。

    ◇
―― 冷水先生、こんにちは。ひなまつりも終わって、いよいよ春の気配が漂ってきましたね。街中にもちらほらお花が咲いて、なんだかワクワクします。

冷水 暖かくて、過ごしやすい日も増えましたねえ。

―― スーパーにも菜の花や山菜が並び始める時期ですね。読者のみなさんからも、ぜひ春を感じるお料理を教えていただきたいという声がたくさん届いています。

冷水 食卓から季節を感じられるって、とてもすてきですよね。じゃあ今回は、春の山菜の中でも一番早く市場に出回るもののひとつ、ふきのとうを使った春巻きなんてどうでしょうか。

―― え~! ふきのとうを春巻きにしちゃうんですか? 私は王道の天ぷらくらいしか食べたことがないので、興味津々です。でも春巻きってちょっと手間のかかるイメージです……。

冷水 中華料理屋さんで出てくる春巻きは安定のおいしさで私も大好きですが、たしかに中の具材を炒めたり、冷ましたりと工程が多いので大変です。でも今回の春巻きは具材をそのまま巻いて揚げるだけなので、とっても簡単ですよ。

―― それなら初心者でも挑戦しやすいですね。ぜひお願いします!

ほんのりと春香る、鯛とふきのとうの春巻き

ふきのとうは春を告げる山菜のひとつ。旬は短いですが、そろそろスーパーにも並び始める頃です

冷水 今回はふきのとうと鯛(タイ)のお刺し身を具材に使います。鯛の甘みとふきのとうのほのかな苦みがよく合うんですよ。

―― わ~、すごく上品な組み合わせで、春らしいですね。

冷水 なんといっても「春」巻きですからね(笑)! まずは鯛の切り身に油をなじませておきます。

―― これは何のためですか?

冷水 鯛の切り身から水分が出るのを抑えるためです。油でコーティングするようなイメージですね。水分が出てしまうと、揚げる時に油がはねてしまうことがあるので。そう、あとふきのとうは、半分に切って水洗いしたら、しっかりと水気を拭き取ってくださいね。

―― 何という心遣い!!

冷水 あとは鯛と半分に切った豆豉(トウチ)、ふきのとうを皮で巻いて揚げるだけです。簡単でしょう?

―― 豆豉ですか! 

冷水 半分に切った豆豉を入れることで味のアクセントになりますし、塩味が強いのでほかに調味料を使う必要がないんです。

―― 本格的な味になりそうで、今からワクワクします。

ほんのりと春香る、鯛とふきのとうの春巻き

具材を置く位置はこんな感じ。まず鯛を置き、その上に半分に切った豆豉、同じく半分にしたふきのとうを置きます

冷水 じゃあ皮に巻いていきますね。ここで注意してほしいのは皮の裏表です。両面同じように見えますが、触ってみるとザラザラした面とツルツルした面があることがわかると思います。

―― 本当だ! 

冷水 ツルツルした方が外側になるので、具材を巻くときはザラザラの面を上にしてそこに具材をのせてくださいね。

―― いよいよ核心の「巻き」の工程ですね……。何かコツはありますか?

冷水 具材が多すぎたり、巻きが甘かったりすると揚げている最中に具材が出てきてしまうことがあるので、適量をのせて、しっかり巻くことですかね。

ほんのりと春香る、鯛とふきのとうの春巻き

巻き終わりはしっかりとのり留めしましょう。外から見たときに皮から具材がはみ出していたり、皮と皮の間に隙間があったりしないかチェックしてくださいね

―― 「しっかり巻く」という塩梅(あんばい)が難しいんですよね……。あんまり力を入れて巻くと皮が破れてしまいそうだし。

冷水 「しっかり」というのは力加減のことではなくて、具材がはみ出さないように、具材全体を皮で包み込むということです。

―― なるほど。

冷水 まずひし形の角が自分の前に来るように皮をおいて、具材をおきます。

―― 具材は結構手前に置くんですね!

冷水 まず手前の三角になった部分の皮を具材の上にのせて、そのまま皮ごとくるっとひと巻きします。これで具材全体が皮にくるまれたでしょう? あとは左右の皮を折り紙の山折りのような感じで内側に折りたたんで、またくるんと。

―― 左右の皮に余裕があった方がしっかりと具材を包めますね。具材はあまり横に長くおかない方が賢明かもしれませんね。

ほんのりと春香る、鯛とふきのとうの春巻き

きつね色はこんな感じ。満遍なく火が通るよう、菜箸で抑えながら揚げるのがおすすめです

冷水 左右の皮を内側に折りたたんだ時、右と左の皮が重なるくらいが理想的です。巻き終わりは水溶きの小麦粉をのりにして、しっかりと留めてくださいね。

―― 具材の配置具合をマスターすれば、上手にできそうな気がします。あとはあまり具だくさんにしようとか、欲張らないことですね(笑)。

冷水 さあ、準備が整ったら揚げていきましょうね。油の温度は170度くらいです。最初は温度計で測ってみるのもいいかもしれません。何度か測っていると、だんだんと塩梅がわかってきますから。

―― あれ、先生はいつも揚げ物を油に投入したら、あまりいじらない!とおっしゃっていますが、今日は投入したそばから菜箸で春巻きを押さえてますね。

冷水 鯛が外側になっている面とふきのとうが外側になっている面の重さが違うので、押さえていないとずっと鯛の面が下になってしまうんです。まんべんなくきつね色に仕上げたいので、今回ばかりは押さえてあげてください(笑)。

―― 了解しました(笑)。

冷水 表面がきつね色になったら完成です。ふきのとうも鯛も火が通りやすい食材ですし、生でも食べられるので、あまり神経質にならなくて大丈夫ですよ。

―― うわ~! サクサクの衣を噛(か)むと、ふきのとうの香りがふんわりと漂ってきました。鯛もふっくらと仕上がっていて、これは何というか、本当に上品な春巻きですね!

冷水 ふきのとうと鯛が皮の中で蒸されるので、程よく食感を残しつつも、ふっくらと仕上がるんです。

―― 春巻きはある意味で蒸し料理なのかもしれませんね。これは大発見です!

冷水 春巻きに包むものにルールはありませんから、ぜひ季節の食材を組み合わせて、オリジナルの春巻きにも挑戦してみてくださいね。

今日のレシピ

鯛とふきのとうの春巻き
◎材料(2人分)

鯛の刺し身:100gほど 
油:小さじ1/2
ふきのとう:6個くらい 
豆豉:8粒くらい 
春巻きの皮:4枚 
揚げ油:適量

◎作り方

 鯛の切り身に油を合わせておく。ふきのとうは縦半分に切る。豆豉は半分に切る。

 春巻きの皮に鯛、豆豉、ふきのとうをのせて巻き、巻き終わりに薄力粉を水で溶いたのりをつけて留める。

 170度の油での春巻きを揚げる。

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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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    冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

    ほんのりと春香る、鯛とふきのとうの春巻き

    料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

    PROFILE

    • 小林百合子

      編集者
      1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

    • 関めぐみ(写真)

      写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

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