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有名シェフの仕事論 思わず奮い立つ、熱い言葉たち

有名シェフの仕事論 思わず奮い立つ、熱い言葉たち

撮影/馬場磨貴 (撮影協力/RELIFE STUDIO FUTAKO)

『調理場という戦場』

今回は、東京・白金高輪にあるフレンチレストラン「コート・ドール」オーナーシェフ、斉須政雄さんの著書をご紹介します。あまりにも有名なレストランなので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

斉須さんは1950年生まれ。23歳のときに渡仏し、12年間の修行を経て帰国。1986年よりコート・ドールのオーナーシェフとしてご活躍されています。

現在はフランスをさほど遠い国とは思いませんが、斉須さんが渡った頃は日本人がほとんどおらず、人種差別もまだまだ厳しい時代でした。本書には、そんな苦しい環境の中、料理人として会得した知識や経験、料理や人生への思い、読者への熱いメッセージが込められています。

斉須さんは冒頭で、「若い人は失敗をしてもいいから、どんどん挑戦をしなさい」とおっしゃっています。若い方はもちろん、これから何かに挑もうとしている方の背中を押してくれるこの言葉がとても印象的です。

私が斉須さんのことを知ったのは、以前勤務していた書店で、はじめて専門料理の書籍を担当することになったのがきっかけでした。この頃は、専門料理の知識がほとんどなく、日々勉強でした。

店には、うそのような話ですが、斉須さんと幼なじみの上司がいたのです。ある日、その人から「フレンチシェフの斉須って知ってる?」と尋ねられました。しかし恥ずかしながら全く知らなかった私は、その方から「この本を読んでみて」と一冊の本を紹介されました。読んだ後はぜひ、レストランにも行ってみてほしい、という一言を添えて。

愛と勇気をもらえるレストラン

10年以上前のことですが、はじめてお店にお邪魔した日のことは、はっきりと記憶しています。大きな扉を開けて入店すると、澄んだ空気と隅々まで行き届いた清潔感のある空間。テーブルにしつらえてあるお花はみずみずしく、テーブルセッティングも美しいのひと言です。親切で温かなサービスにも心打たれました。

料理は、斉須さんの人柄を感じさせる、シンプルながら細部にまで配慮されたフレンチ。まさに彼にしか作れない料理だと感じました。

その日から、特別な日に度々お邪魔していますが、斉須さんはいつも変わらず、まっすぐな言葉を大きな熱量で投げかけて下さいます。お忙しいはずですが、長い時間お話に付き合って下さり、別れ際には決まっていつも握手をします。「また会いましょう」の気持ちを込めて。

斉須さんの手に触れるだけで、愛と勇気をもらえる気がしてなりません。料理から、そのお人柄から、いつも元気をいただきます。たくさんご苦労やつらい思いをされても、こんなにもけなげに年を重ねている方に巡りあえた幸せを感じます。

私がこの本を紹介してもらったときのように、今度は、私から皆さんにこの思いを託すことが出来たらと思います。この本を読んで、レストランに足を運んで頂けたら大変うれしいです。

(文・大川愛)


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    大川 愛(おおかわ・あい)

    二子玉川蔦屋家電、食コンシェルジュ。
    書店・出版社で、主に実用書や絵本の担当を経験。本に囲まれている環境が、自らにとって自然と感じる。

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