上間常正 @モード

外出も意識した、新しい部屋着スタイル 三陽商会「エポカ」の新シリーズ

家でくつろぐ時間や近所へのちょっとした外出用の服といえば、男性のジャージー姿は論外だとしても、女性でもファストファッションのフリースアイテムや、ダラっとしたデニムウェアなどで済ませている人も少なくはない。部屋着こそきちんとした素材と仕立てで、流行にもあまりとらわれずに、自分らしく着られるような服がいいのでは? 新型ウイルスの世界的な感染拡大などで人出が減っていることもあってそんなことを考えていたら、国産アパレルの大手メーカー三陽商会のブランドの一つが目に付いた。

外出も意識した、新しい部屋着スタイル 三陽商会「エポカ」の新シリーズ

「ラ・マリア・イン・カーサ」のギンザシックス期間限定ショップ

このシリーズは「エポカ」の「ラ・マリア・イン・カーサ」。三陽商会の主力ブランド「エポカ」から2011年に派生したニットアイテムによるトータルコーディネートのシリーズ「ラ・マリア」、そしてそれからさらに、大人の女性のリラックスシーンに向けた新カテゴリーとして、昨年9月からまず秋冬物が発売された新シリーズだ。

2019年秋冬は、スペインのメーカーが開発した再生ウールに国内ウールを撚糸(ねんし)した軽くて柔らかい素材や、カシミヤの糸くずやワタを使った再生カシミヤなどを使い、ゆったり着られるセーターやワンピース、ワイドパンツやレギンスなど10型。価格帯は29,000円~49,000円。ほかに、アルパカ混の糸を使った一見ファーのようなロングカーディガン(63,000円)や、ブランケット(39,000円)なども。

今年2月から発売されている2シーズン目の春夏物は、オーガニックコットンが中心。イタリア製の糸のみ、それに細い麻、もう一つはポリウレタンを織り込んだ3パターンの糸で、それぞれの特徴を生かしたデザインで構成されている。色はオフホワイト、黒、グレーの3色。サイズは9号のみだが形がシンプルでゆったりしていてストレッチ性もある編み方なので、体形への許容の幅が広そうだ。価格帯は21,000円~56,000円。

外出も意識した、新しい部屋着スタイル 三陽商会「エポカ」の新シリーズ

黒のパーカとドレス

全体としての特徴は、リラックス感がありながらも、服としてのきちんとした質感と、デザイン性の高さがあることだ。アクセサリーなどとの組み合わせも工夫すれば、仕事を含めた外出着としても十分に使えるだろう。シリーズの企画・制作に関わった三陽商会第一事業本部エポカビジネス部婦人服企画課の森雅史さんは、「もともとオンタイムの外出着であるエポカの派生シリーズなので、そうした狙いも込めている」という。

外出も意識した、新しい部屋着スタイル 三陽商会「エポカ」の新シリーズ

オフホワイトのニットトップとスカート、レギンス

アパレルビジネス不振が言われて久しいが、このように時代の変化に敏感に照準を合わせたブランドは、他にはなかなか少ないと思う。それに考えてみれば、女性が仕事着としてスーツを着る必要は必ずしもないのだ。1980年代に女性の社会進出が本格化した頃は、男性と肩を並べるためには男性の仕事着であるスーツを着なければいけなかった。にもかかわらず、女性はスカートをはいて、ネクタイではなく女性っぽいブラウスやアクセサリーを身に着けていた。

ビジネス社会や官庁などでのジェンダーの壁はまだなお高い。とはいえ、80年代からもう40年も経たいま、女性はスーツを着ることをやめてもいいのではないだろうか。職種によっては男性もスーツを着ない例も増えていることもある。

時代に関係なく、ファッションは社会的な秩序に制約されてきた。しかし、それは必ずしも一方通行ではなく、人は何気なく服を選ぶことによって、社会的通念を知らぬまに支えてしまってきた。ラ・マリア・イン・カーサは、そんなことに気づくきっかけの一つの例になるのかもしれない。

外出も意識した、新しい部屋着スタイル 三陽商会「エポカ」の新シリーズ

ギンザシックスのショップ限定カラー青のボレロとドレス

外出も意識した、新しい部屋着スタイル 三陽商会「エポカ」の新シリーズ

バッグとスニーカーも

東京・銀座のギンザシックス4階で、このブランドの期間限定ショップが3月31日まで開かれている。服のほか、やや大ぶりなバッグや、ブランドのイメージに合わせてイタリアから買い付けた3種のスニーカーも発売されている。また、東京・丸の内や仙台、名古屋など7カ所の直営店「エポカ ザ ショップ」と、西武池袋本店 、松坂屋名古屋店、大丸心斎橋店、オンラインでも買える。

こちらもおすすめ

  • おうちコーデで気分上げて おしゃれの達人、インスタで発信

    おうちコーデで気分上げて おしゃれの達人、インスタで発信

  • 通販でサステイナブル

    通販でサステイナブル

  • >>「上間常正 @モード」 記事一覧

    PROFILE

    上間常正

    ジャーナリスト、ファッション研究者。1972年、東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社。記者生活の後半は学芸部(現・文化くらし報道部)で主にファッションを担当。パリやミラノなどの海外コレクションや東京コレクションのほか、ファッション全般を取材。2007年に朝日新聞社退社、文化学園大学・大学院特任教授(2019年3月まで)としてファッション研究に携わる。現在はフリーの立場で活動を続けている。

    ゴッホとナビ派 「子ども」を画題に時代をどう描いたのか?

    一覧へ戻る

    ショー中止の「東コレ」 デザイナーらが工夫する新しい発表スタイルとは

    RECOMMENDおすすめの記事