花のない花屋

「ワイン農家になる!」会社を辞めて移住した親友へ

〈依頼人プロフィール〉
野口陽菜さん 30歳 女性
東京都在住
会社員

     ◇

親友と出会ったのは、大学時代。同じフランス語学科で仲良くなり、それぞれ同じ時期にフランスに留学しました。現地では言葉がなかなか思うように話せない悔しさや、慣れない環境の中での苦労をお互いに吐き出し合い、切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲です。

大学卒業後は、私も彼女もフランスとは関係のない企業に就職しましたが、3、4年くらい経った頃でしょうか、突然、彼女は「やっぱり会社員は向いてない。フランスでワイン造りを勉強する」と言って会社を辞め、単身フランスへ旅立ちました。

フランスではアルザスや南仏などあちこちのワイン生産地を回り、農家で収穫や醸造を手伝いながらさまざまなことを吸収して帰ってきました。帰国後はまた日本の企業に就職し、働きながらワインの勉強を続けていたようです。そして昨年末。とうとう彼女は「ワイン農家になる!」と言って会社を辞め、長野へ移住してしまいました。

今は他の方が経営するワイナリーで働きながら、自分のブドウ畑の準備を進めています。もちろん金銭的な不安が頭をかすめることもあるようですが、日々慣れない耕作やまき割りをしながら軽トラを乗り回し、文字通り体当たりで夢に向かってがんばっています。

思えば、昔からどこか筋が一本すーっと通っていて、やると決めたら自分が満足するまでとことんやるのが彼女でした。私はその姿に何度も背中を押され、刺激を受けてきました。今はフランスとはまったく関係のない仕事につき、昨年結婚して夢を追いきれなかった私から見ると、 彼女はとてもまぶしく、輝いて見えます。
 
そこで、新しい人生の一歩を踏み出した彼女へ、心からの応援の気持ちとこれまでの感謝を込めて、花束を贈りたいです。

小柄で可愛らしく、みんなから愛される女性ですが、芯の強さは人一倍。フランスの文化やワインが好きなので、どこかフランスを思わせるスモーキーで大人っぽい雰囲気がありながら、ワインをイメージさせるアレンジにしてもらえるとうれしいです。

「ワイン農家になる!」会社を辞めて移住した親友へ

花束を作った東さんのコメント

ワイン農家になると決意した親友への花束とのことで、今回のテーマはワイン。ボルドー色でシックにまとめました。

大輪のダリアは「黒蝶」という種類。カーネーション、ラナンキュラス、ガーベラ、チューリップ、スカビオサなどもすべてボルドーから紫色のグラデーションです。ところどころに挿したパフィオペディルムと観葉植物のネオレゲリアがアクセントとなり、黒いカラーが全体を引き締めています。このカラーは、おそらく自然界にある花の中では一番黒いのではないでしょうか。

全体が同じトーンなので、今回は花をミックスさせず、「グルーピング」という手法を使って同じ花をまとめ、それぞれの花の特徴がよく見えるようにしました。

ボトムには色づいたアカシアをたっぷりと。ところどころ緑色が残っており、そのトーンもアクセントになっています。

落ち着いた色で大人っぽく、芯の強さが感じられる花束になりました。赤ワイン片手に、楽しんでくださいね。

「ワイン農家になる!」会社を辞めて移住した親友へ

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(&編集部/写真・椎木俊介)

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    「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
    こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
    花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
    詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    「ワイン農家になる!」会社を辞めて移住した親友へ

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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