花のない花屋

「自立しないと……」自分を責めてばかりの私を支えてくれる両親へ

〈依頼人プロフィール〉
山川緑さん(仮名)23歳 女性
帯広市在住
無職

     ◇

私は小学校の頃からずっと、まわりとの違和感を抱いてきました。一つ一つの出来事に対して、友達と捉え方がだいぶ違ったのです。たとえば、先生が誰かを叱っていると、自分が叱られているわけではないのに、ものすごくつらく感じたり、それが原因で学校へ行くのが嫌になったり……。みんなは何とも思っていないようでしたが、私は「明日も学校がある」と思うだけでご飯がのどを通りませんでした。中学まではなんとか学校へ行けたものの、高校は途中から通信制に転校しました。

その後は、札幌のデザイン専門学校へ通うようになりました。アルバイトも始めましたが、その帰りに、2回連続で痴漢にあったことがきっかけで、家から一歩も出られなくなりました。男性が極端に怖くなり、公共交通機関を使うこともできなくなってしまったのです。そのとき、「同じように痴漢にあっても普通の生活を送れる人がいるのに、ここまでおかしくなる私は異常じゃないか」と思い、自ら精神科を受診しました。

そして、下された診断は「発達障害」。やっぱり……という思いでした。そして、これまでずっと「私の性格が悪いのかも」「すべて私のせいかも」と自分を責めていましたが、診断名がついたことでずいぶん気持ちがラクになりました。聞けば、私が3歳くらいの頃、保育園の先生に勧められて病院で検査をしてもらったこともあったそうです。

「発達障害」だとわかったことで将来へのアプローチも変わり、私は自分と向き合って自立することを目標に、専門学校を辞めて実家へ戻り、就労移行支援に通い始めました。

一年ほど通ったでしょうか。だいぶ回復して外へも出られるようになり、地元でアルバイトもできるようになりました。私はまた両親に無理を言って札幌へ引っ越し、アルバイトをしながら別の専門学校に通うことに。でも、実際はそこまで回復していなかったようで、すぐにアルバイトを続けられなくなりました。

当時、弟はまだ小学生、妹は高校生で、金銭的にこれ以上両親に負担はかけまいと思っていたので、アルバイトを続けられなくなったことが私自身とてもショックでした。結局それが引き金となり、学校の勉強もうまくいかなくなって退学。しばらくすると貯金も底をつきそうになり、少しでもお金を稼がなくてはと休日だけアルバイトを始めましたが、それもまだ早かったようです。すぐに精神科の先生からは、ドクターストップをかけられてしまいました。

それでも自立しないと……という思いがあり、両親とも相談して実家には帰らず、福祉課のアドバイスで生活保護を受けて、札幌で一人暮らしを続けていました。

妊娠がわかったのはそんなときです。両親は驚いたものの、もともと保育士だった母は初孫だとよろこび、最初は話もできない状態だった父も、徐々に応援してくれるようになりました。婚約者は東京にいるため、心身ともに不安定な中、一人暮らしを続けるのは難しく、昨年末から実家に戻って両親と暮らしています。

私を責めることもなく、支え続けてくれている両親には感謝の気持ちでいっぱいです。どうにかしてこの気持ちを伝えられないかと思っていたところ、偶然この連載を見つけました。ぜひ両親へ感謝の花束を作っていただけないでしょうか。

明るくてとても仲がいい両親です。専業主婦の母はパワフルでかわいいものが大好き。父は会社員で穏やかな性格。遊びや新しいものが大好きです。

両親への感謝は言葉では言い表せません。どうかこの気持ちを、黄色やオレンジなどの明るいパステル調の華やかなアレンジで伝えていただけるとうれしいです。

「自立しないと……」自分を責めてばかりの私を支えてくれる両親へ

花束を作った東さんのコメント

明るくて仲の良いご両親への花束ということで、イエローとオレンジを基調にした明るいパステル調の花束を作りました。

使用した花材は、サーモンピンクのバラ、ラナンキュラス、イエローとピンクのキルタンサス、スプレー咲きのカーネーション、アスクレピアス、エピデンドラム、フチがピンクで内側がクリーム色のカーネーション、紫とオレンジのグラデーションが珍しいフリージアなどです。この紫色がパステルカラーの中でアクセントにもなっています。

また、周りには少し赤味がかったアイビーとドラセナの2種類の葉をぐるりとまわしました。花器は黒いものを選び、花の色が映えるようにしています。

ご両親にはよろこんでもらえたでしょうか。山川さんも元気な赤ちゃんを産んでくださいね。

「自立しないと……」自分を責めてばかりの私を支えてくれる両親へ

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(&編集部/写真・椎木俊介)

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    「&w」では、読者のみなさまから「物語」を募集しています。
    こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
    花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
    詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    「自立しないと……」自分を責めてばかりの私を支えてくれる両親へ

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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