ほんやのほん

信じること。私の中の「女の子」を、退屈させないために

信じること。私の中の「女の子」を、退屈させないために

撮影/猪俣博史

『ウニヒピリのおしゃべり』

私がはじめて「ウニヒピリ」という言葉を知ったとき、なんて可愛らしい音の響きなのだろう、と感じたことを覚えています。今回ご紹介する一冊『ウニヒピリのおしゃべり』の表紙のイラストは、日だまりに包まれた芝生の上で、やさしくほほ笑んだ女性が胸の前に両手を広げ、その上には女性と向き合うように小さな少女が座っています。

タイトルの響き、表紙に描かれた絵、その二つの素材に触れただけでも心がほのかに和み、優しい気持ちへと導かれたようで、私はこの一冊を読んでみたいと思いました。

著者は、小説家の吉本ばななさんと、ハワイの伝統的な問題解決方法「ホ・オポノポノ」の講演を各国で行う平良アイリーンさんです。本書は「ほんとうの自分を生きるってどんなこと?」をテーマに、お二人の対談形式で進んでいきます。

冒頭には、今から10年前に雑誌『Grazia(グラッツィア)』に寄稿された、吉本ばななさんの短編小説「ウニヒピリ 自分の中の小さなこども」が紹介されています。

恋人と別れ、モヤモヤした気持ちを抱える“私”が、久しぶりに再会した旧友の由美子。由美子のバッグの中には、淡い縁取り鏡や、花柄のポーチ、金髪の小さな女の子の人形、ブレスレットやリップスクラブなど、キラキラしたものがたくさん入っています。

「由美子、相変わらず、いろんなものが入っているね。かばんに。」
「ウニヒピリのためにね。」

不思議に思う私に、由美子は言います。
「それは、私の中にいる、昔から、どんなときでもいっしょにいる、小さい女の子。その子が退屈しないように、その子が好きなものを持って歩いている。」

「自分の周りの人の世話をしても自分が世話をしてもらえないとき、その子はいつも小さく縮こまっている。だから、いつもその子のために、その子が喜ぶものを持って歩いたり、選んだりするだけで、人生の可能性がほぼ無限と言っていいほど広がるのよ。」

「ウニヒピリ」とは、誰の中にも存在する内なる子ども=潜在意識のことを指しています。これは、ハワイの問題解決方法「ホ・オポノポノ」とも結びついています。

「“愛”か“記憶”か」

本書によれば、ウニヒピリは言わば記憶の保管庫で、感情や志向、興味の対象、立ち居振る舞いといった個人の性格やクセは、ウニヒピリが保管している記憶の再生によるものだそう。不必要な記憶から解放されるためには、「ありがとう。ごめんなさい。許して下さい。愛しています」、この四つの言葉を心の中で唱えること(クリーニングと呼ぶそうです)。そうすれば、本来の自分を取り戻すことができるとも書かれています。

みなさんも、悩みや困難に直面している時、「本当は自分はどうしたいのか?」などと、自分のことでありながら自分がよく分からないという状況に陥ったり、生きづらさを感じたりすることはないでしょうか? アイリーンさんは、何をやってもうまくいかない時、こう問いかけるそうです。「“愛”か“記憶”か」

そのどちらかを選ぶとして、自分の人生がどういう状態であれ、「愛」を選択した瞬間から、それがたとえ口先だけでも、なぜか不思議と流れが変わるのです。

私はヨガを学んでいるのですが、先生の「この世は我が身の合わせ鏡」という言葉が思い出されます。自分の目に映る景色には、自分自身の心が映し出されているという教えです。自分の心が穏やかであれば、目に映る世界も穏やかになり、自分の心が粗雑であれば、世界も粗雑に見えてしまうのです。

私の心の中にあるウニヒピリは、過去の不必要な記憶ですっぽり覆われたまま再生されていないだろうか? この世界を、どのくらいほんとうの自分の目で見ることができているだろうか? ほんとうの自分の声を聞いてあげられているだろうか?

ばななさんの言葉が、優しく響きます。

「自信」つまり、「とにかく自分を信じる」ということ、もうそれに尽きるんです。
ウニヒピリとの関係がうまくいっていれば、自信は揺るぎなくいつもそこにあるはず。

(文・藤井亜希子)

     ◇

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