#ステイホーム with 花のない花屋

#09 妊娠8カ月。家族みんなが元気なだけで幸せ

おうち時間に花束を――。

 

新型コロナウイルスで、外出自粛が求められているいま、 おうちにいる時間が増えている方が多いと思います。先が見えない漠然とした不安の中、花を部屋に飾ることで沈みがちな気分が明るくなったり、水をあげることで心が落ち着いたり……。おうち時間を少しでも楽しく心身ともに穏やかに過ごせますように。
いま、“わたし”に贈る花束を。

 

心に大きな不安と恐怖がのしかかっているこんなときだからこそ、花から伝わるメッセージを多くの読者の方に受け取って、感じてもらいたい!という思いを込めて。フラワーアーティスト東信さんが、2週間連続で14人の方の気持ちに寄り添った花束をお届けします。

 

※詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。(締め切り5月4日)

#09
菅原花梨さん 36歳 女性
神奈川県在住 会社員

     ◇

いま、第2子を妊娠しています。妊娠8カ月になります。妊娠がわかった頃は、まさか世界がこんな風に変わるとは想像だにできませんでした。当時は「東京オリンピック直前、世間がソワソワし始める頃に子どもが生まれ、夏は家でオリンピックを見ながら子守かな……」なんて思っていたものです。

あんな平和な日々は今や昔。先日の妊婦健診では、「新型コロナウイルスの影響で、予定していた無痛分娩(ぶんべん)は対応できないかもしれない」「帝王切開になる可能性もある」と言われました。まさかの余波です。

もちろん、自分自身の感染リスクも心配です。過度に心配する必要はないと言われてはいますが、妊婦は肺炎が重症化しやすく、飲める薬も限られています。もちろん母子感染や早産、死産との因果関係も、はっきりしたことはわかっていないようですし、現実問題として万が一私が感染してしまったら、子どもたちを夫に託し、私自身は最低2週間は隔離されます。今の状況では年老いた両親にヘルプをお願いすることもできず、家族の負担があまりに大きすぎます。

そんな数々の不安を抱えながら、大きいおなかでまだ電車通勤をしています。仕事があるだけ幸いかもしれませんが、職場環境は微妙です。マスク着用は個人に任されていますし、1カ月ほど前から手の消毒液も手に入らないらしく、補充されていません。ビルなので窓を開けることもできませんし、いまだに狭い会議室を使ったりもします。

半ばあきらめの境地で働いていましたが、そんな状況を夫に話すと、ふだんは穏やかな夫が珍しく怒りだしました。「ありえない!」「遊びじゃないんだよ、子どもの命がかかっているんだよ。どうして会社はリモートワークを許可しないの」。私もどこかで職場の雰囲気に慣れてしまっていましたが、本当にその通りだと思いました。

それからずいぶん悩んだ末、上司に思い切って相談しました。案の定「めんどくさいな」とけむたく思われたようですが、幸いリモートワークの日を増やしてもらえました。この状況で背に腹は代えられません。多少嫌がられても、言いたいことを言ってよかったと思いました。とはいえ、それでもまだ出勤する日はあります。

夫はそんな私を心配しつつも、仕事に出るときは「気をつけてね」とこころよく送り出し、ひとりで子どもを見てくれています。そうして一日が無事に終わり、家族みんなが体調も崩さずに帰宅できると、心底ほっとします。そしていつも横にいる夫を見るたび、「自粛生活がこの人とでよかったな」と改めて思います。友達にも会えない、旅行にもいけない……あれもできない、これもできない日々ですが、彼はいつも穏やかで明るく、こんな状況を少しでも楽しくしようとしてくれています。

実際、これまでにも「こんな状況だからこそ料理を楽しもう」と作ったことのない料理を一緒に作ってみたり、子ども部屋を改造したり、人ごみを避けながら都内自転車ツアーをしたり、寝室に新しく「ベッドシアター」を作ったり……何でもない日常を「今だからこそ」と楽しんできました。

思えば、結婚するときに2人で決めたことは、「楽しく生きようね!」ということでした。どんな状況であっても楽しみを見つけ出そう、どうやったら楽しく生きられるかに知恵を絞ろう。そんなことを話し合い、「人生ますます楽しむぞ!」とアクセルを踏んで結婚しました。

この緊急事態宣言下、すっかり忘れていたそんなことをふと思い出しました。毎日働いて、子どもの面倒を見る。ただそれだけ。これまでと比べて単調で地味な毎日です。それでも一日が無事に終わり、家族みんなが元気なだけで「よかったな、幸せだなあ」と思えます。家族がいる。ただそれだけで、いくら世界が変わっても、なんとなく大丈夫な気がします。結婚願望もなかった独身時代の私が聞いたらのけぞるような言葉ですが、今は本当にそう思います。

そこで私自身と、コロナ禍の日々を私と一緒に送ってくれている夫と子ども、そしておなかの中の子どもへも、ありがとうを込めてお花を贈りたいです。結婚パーティーのときに飾った、アジサイをメインに、おだやかな気持ちになれる花束を作ってもらえるとうれしいです。

花束を受け取って……

#09 妊娠8カ月。家族みんなが元気なだけで幸せ
アジサイの花を見た瞬間、結婚したときのことを思い出しました。アジサイのブルーと、白とグリーンの組み合わせがみずみずしく、まあるいグリーンのポンポンが朝露のようで、すごくかわいいですね!
ちょうどいい大きさのフラワーベースがなかったのですが、とりあえず手元にあったものに入れて、ダイニングテーブルの真ん中に置きました。
せっかくこんなすてきな花があるのに、友達を家に呼べないのは残念ですが、家族でぜいたくな気分を味わいたいと思います。どうもありがとうございました。

 

花束を作った東さんのコメント

思い出のアジサイをメインに、柔らかく穏やかな印象となるような花束をつくりました。
妊娠8カ月の今もお仕事を続けられているとのことなので、家でご家族と過ごす時間はホッとする優しい雰囲気に包まれるような、ふんわりとしたイメージです。
中心に大きなブルーのアジサイ、周りには白のトルコキキョウを入れて、ところどころグリーンベルという、その名の通り鈴がたくさんついたような花を入れています。
お子さんと一緒に、見て触って、ご家族皆さんで楽しんでいただけたらと思います。

 

#09 妊娠8カ月。家族みんなが元気なだけで幸せ

(&編集部/写真・椎木俊介)

    ◇

2週間連続!特別企画
おうち時間に花束を――。
あなたの「物語」を募集しています

「いまだからこそ」のご自身のエピソードと、花束を作って欲しいと思う理由をお寄せください。
今回は2週間連続の特別企画のため、毎日東さんに花束をつくっていただきます。そして、その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介します。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

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  • >>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    #09 妊娠8カ月。家族みんなが元気なだけで幸せ

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


    #08 精いっぱいのロマンチックを

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    #10 毎日の食卓を華やかに飾りたい

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