猫が教える、人間のトリセツ

朝ごはんを2回もらう。byブルース(飼い主・サヤカ・トキモト・デイヴィスさん)

人間を思うがままに操る、飼い猫たちの実例集「猫が教える、人間のトリセツ」。
月に1回、「猫と暮らすニューヨーク」の筆者、仁平綾さんと、イラストレーターのPeter Arkle(ピーター・アークル)さんでお届けします。

     ◇

早朝に顔を踏まれ、ごはんを要求される。味の好みがころころ変わり、せっかく買ったカリカリが無駄になる……などなど、猫の飼い主なら、きっとそれぞれに抱えているであろう、猫のごはん問題。ニューヨーク在住のファッションデザイナー、サヤカ・トキモト・デイヴィスさんの場合は、飼い猫のブルースによる、まさかの演技に騙(だま)されて……。


「人見知りでシャイ。プライドが高いけれど、心を許した相手には甘えん坊でスウィート」

愛猫の性格をそう表現するのは、ニューヨークのブルックリンに暮らすファッションデザイナーのサヤカ・トキモト・デイヴィスさん。10歳になるオス猫のブルースは、夫のロバートさんが近所の空き地で見つけた野良猫。ロバートさんが空き地に通い、ごはんを与えるうち懐くようになり、冬が間近に迫っていたある日、自宅に連れ帰ったのだとか。

ブルースの名前は、ロバートさんのファーストインプレッションから。「目を見た時に、ブルースだ!と閃(ひらめ)いたそうです」。

朝ごはんを2回もらう。byブルース(飼い主・サヤカ・トキモト・デイヴィスさん)

元野良猫ブルースの特技はハンティング。「部屋に迷い込んだ鳥をハイジャンプで捕まえたこともあります」

  

その名前のせいか、ブルースは音楽好き。「お気に入りのアルバムはアントニオ・カルロス・ジョビン(ブラジルを代表するミュージシャンで、ボサノバの父)の『Wave』。このアルバムを流すと目を細めてリラックスします」とサヤカさん。

至福の時間は、サヤカさんが自宅でパソコンに向かって仕事をしている時。「ブルースが必ずひょっこりやって来て、私の腕の中にうずくまり、お昼寝するんです。それがもう、かわいくて、かわいくて。このままここにいて!という思いで、手がしびれるのも、トイレに行きたくなるのも、ブルースの脚がパソコンのキーを変に押してしまうのも、つい我慢してしまいます」

元野良猫のためか、「そんなふうに甘えてくるようになるまで、10年弱かかった」とサヤカさん。今やブルースのツンデレっぷりに、夫妻は完全に操られているそう。
 

朝ごはんを2回もらう。byブルース(飼い主・サヤカ・トキモト・デイヴィスさん)

腕の中ですやすや眠るブルース。猫の重み、柔らかさ、温かさを、腕にじんわりと感じる幸せ……

ブルースのとある企(たくら)みが判明したのは、昨年のこと。

ロバートさんの転職をきっかけに、夫妻の朝のスケジュールが変化したタイミングでした。朝6時に起きて身支度をしたロバートさんが、7時半に出勤。その後8時ごろ、サヤカさんが起きようとしたところ、「私の気配を察して、ブルースがベッドルームまで迎えに来たんです。ミャーミャー鳴いて、ちらちら振り返りながら、私をキッチンへ先導するんですね。なんだろうと思って見てみたら、ごはんのボウルが空っぽ。“あれ? ダディーはごはんくれなかったの?”と聞くと、訴えかけるような声で、ミャーオ!ミャーオ!とドラマチックに鳴くんです。“ごはんまだだよ! ぼく、おなかぺこぺこだよ!”って……」。

以来、朝起きたらブルースにごはんをあげるのがサヤカさんの日課に。でもなぜか、ブルースはすぐにごはんを食べなかったり、プイッと立ち去ってしまったり。“ごはんに飽きたのかも。種類を変えてあげようかな”と思ったサヤカさん、夫のロバートさんに相談すると、「“え? 僕、毎朝ごはんをあげてるよ”って。それで、ブルースの朝ごはん二度食べが発覚しました(笑)。1回目のごはんは、私が起きる前に大急ぎで平らげていたようです」。

名演技で飼い主を騙し、やすやすと朝食二度食べを実現するなんて。やるなあ、ブルース。
 

朝ごはんを2回もらう。byブルース(飼い主・サヤカ・トキモト・デイヴィスさん)

「骨太でアスリート体質」というブルース。家の中を1人で猛ダッシュし、廊下を行ったり来たりして、毎日カロリーを大量に消費。「だから食いしん坊なのかも」とサヤカさん

結局夫妻は、ブルースのおねだりを断ることができず、朝ごはんを半量ずつ、2回に分けて与えることに。一方ブルースは、どうやら半量になったことに気づいていない模様。いまだに飼い主たちをうまく騙せていると確信しているのか、「“ごはんちょうだい”のドラマチックな“ミャーオ”の演技は健在です(笑)」とサヤカさん。朝ごはんを巡る、猫と人間のかわいらしい攻防は続くのであります。

朝ごはんを2回もらう。byブルース(飼い主・サヤカ・トキモト・デイヴィスさん)

朝ごはんを2回もらう。byブルース(飼い主・サヤカ・トキモト・デイヴィスさん)


朝ごはんを2回もらう。byブルース(飼い主・サヤカ・トキモト・デイヴィスさん)

Sayaka Tokimoto Davis(サヤカ・トキモト・デイヴィス)
ニューヨーク・ブルックリン在住のファッションデザイナー。2013年、ニューヨークを拠点に自身のレディースブランドSAYAKA DAVISを立ち上げ。「日常の中の非日常」をコンセプトに、オーガニックやミニマルと非日常性や意外性をかけあわせた服作りをしている。現在、ニューヨークや東京の人気セレクトショップ(Tomorrowland、Ron Herman、United Arrows、Style & Edit Takashimayaなど)を中心にコレクションを展開。

http://www.sayakadavis.com
インスタグラム:https://www.instagram.com/sayakadavis/

次回は、5月下旬頃の配信予定です。

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  • 『猫と暮らすニューヨーク』が本になりました!!

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    『ニューヨークの猫は、なぜしあわせなの?
    75匹の猫と飼い主のリアルな暮らし』

    仁平 綾 (著) 朝日新聞出版

    猫と暮らすニューヨーク』として連載していたものから、
    “猫の飼いかた”の部分に注目し、さまざまなアイデアや実践をセレクト、再編集した一冊。
    個性豊かで愛らしい、NYの猫たちの写真が満載で、猫好き必読の書。

    1760円(税込み)

    >>「猫と暮らすニューヨーク」まとめ読みはこちら

    PROFILE

    • 仁平綾

      編集者・ライター
      ニューヨーク・ブルックリン在住。食べることと、猫をもふもふすることが趣味。愛猫は、タキシードキャットのミチコ。雑誌等への執筆のほか、著書にブルックリンの私的ガイド本『BEST OF BROOKLYN』、『ニューヨークの看板ネコ』『紙もの図鑑AtoZ』(いずれもエクスナレッジ)、『ニューヨークおいしいものだけ! 朝・昼・夜 食べ歩きガイド』(筑摩書房)、共著に『テリーヌブック』(パイインターナショナル)、『ニューヨークレシピブック』(誠文堂新光社)がある。
      http://www.bestofbrooklynbook.com

    • Peter Arkle(イラスト)

      ピーター・アークル スコットランド出身、ニューヨーク在住のイラストレーター。The New Yorker、New York Magazine、The New York Times、Newsweek、Timeなど雑誌や書籍、広告で幅広く活躍。著書に『All Black Cats Are Not Alike』(http://allblackcats.com/)がある。

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