野村友里×UA 暮らしの音

UAさん「まずは己の体の免疫から。併せて精神のも、ね」

「Eatrip」を主宰する料理人の野村友里さんと、現在カナダで暮らす歌手UAさんの往復書簡「暮らしの音」。世の中が大きく変わりそうなことが起きている今、「地球に猛烈ラブレター書いたほうがいいのかも」と、友里さん。ところでラブレター、書いたことある?との問いかけに、UAさんは――。

UAさん「まずは己の体の免疫から。併せて精神のも、ね」

甲殻コレクション

>>野村友里さんの手紙から続く

友里へ

今回も素敵なラブレターをありがとう。じん、と響きました。この愛の往復書簡も、もうすぐ3年になるんだね。まったくそれにしても、まさか世界がこんな状況になるなんて。そしてまた3年した頃には、すっかりシステムは様変わり、「通勤ラッシュ? 資本主義?? いやあ、全く大変な時代だったよね~」なんて言ってたりして。

そんな話は後にも触れるとして、、、ちょっとやめてよ、その恋愛のナントカ。多分に私がしゃべりすぎるからってさ~。案外どっこいどっこいなのよ~、友里ちゃんっ、笑。

話は戻って、ラブレター。日本語だと「恋文」となるのが良いよね。「愛文」とは言わないところが意味深だけど、愛とは言葉で表せないものだとすると、やっぱり「恋文」がふさわしいか。何たって色があるものね。ポール・モーリアの大好きな曲『Love Is Blue』も、日本語タイトルだと『恋はみずいろ』なんだから。やっぱり愛となると、透明とか、光とか、宇宙色なんて言えば、らしいのかな。

UAさん「まずは己の体の免疫から。併せて精神のも、ね」

蝶々!

実は、私も恋文を書いて渡したことはないのかも。。。若い時のことは、記憶があいまいだけど、きっと忘れないんだろうから、やっぱり手紙で告白したことはないんだろう。例えば思い出すのは、自筆の絵を贈ったり贈られたりするのが好きだったなぁ、なんて。

確かに、たくさん書いた歌詞の中には、恋文と呼べるものもきっとある。そんなつもりじゃなかったのに、恋をしてる、愛している誰かさんのことを、つい想(おも)い浮かべてしまう。あるいは、まるで風邪をひいて微熱が続くみたいに、その曲を書いてる間の刹那(せつな)に、恋してる、なんてことも無きにしもあらず。

されとて「I need you, I can’ t stop lovin’ you. Yeah, Hold me tight!」 みたいなのは、まず無理ね。多分似合わないし。しかしひょっとして新時代の幕開けに、ニュー子よろしく、そんな新境地に、トライしてみたくはある! どちらにしろ、私の場合、今のところ地球宛てのほうが多めなのかな。

UAさん「まずは己の体の免疫から。併せて精神のも、ね」

こちらもコロナ(光環)

さて、触れずにはいられないこの騒ぎ。コロナ革命!? 一体全体、何が本当なんじゃ! そもそも世界の本当とは何なのか! このコロナ様、本当に存在するのか!?くらいの渦巻く勢いで情報が盛られる中、正直キョロキョロせずにもいられない。ただ、キョロキョロしたところで、我が家の日々は、ほとんど変わらない。春休みが通常なら 2週間だったのが、夏休みみたいに長いんだけど、全く出かけない、という感じ。

メディアとは裏腹な我が家のテンションに、若干不安になることもある。ん? 何でそこで不安になるんだっけ。。。その都度、自分に問う。

唯一、週1で通うのは、近所の大きなグロッサリー。地元と近郊、カリフォルニア、メキシコ辺りの有機を含めた豊富な野菜、その他大体の自然食品まで扱う、誰もが通う大型スーパー。早い時期からソーシャルディスタンスを徹底していて、9~10時は高齢者専用の時間となった。通常も人数制限があり、入り口では2~3人の男性が、カートを1台ごとに殺菌する。7、8台あるレジまでは2メートル間隔で1列に並び、長いときはチーズ売り場まで続く。なので、前よりじっくり商品を見たりしてね。基本的に支払いはカードだけ。しょうがない場合は現金可能なコーナーもあるらしい。

商品はコーナーごとに「目だけでお買い物!」と書かれ、2つずつまでしか買えない。マスク率はというと、元々習慣がないようで、1割くらい。それも使い捨てのものじゃなくて、バンダナとかスカーフみたいに個性的。そうかと思えば、まるで戦争映画みたいな3方向に飛び出してるガスマスクみたいなのを付けるゴツい男性に遭遇したり。。。

UAさん「まずは己の体の免疫から。併せて精神のも、ね」

だ〜れだ?

そこでね、ふと聴こえるのよ。
「らんらん らんらら らんらんらん らんらん らんらららーん 」

字だけで見るとちょっと怖いんだけど、友里ならもう鼻歌出ちゃってるでしょ? おそらく日本の過半数の若~中年層が、つられて歌うであろうこのメロディーは、映画『風の谷のナウシカ』で、ナウシカが腐海の底に落ちたときに夢の中で聴こえてくる。

私の場合、こちらの牧草の花粉症がひどい時期なんて、それこそガスマスクでもしてみたい。 すっかりめいっちゃって、「きっと近い未来、腐海みたくなっちゃうんだわ、この星は。プシュー(植物から胞子みたいな毒の出る音)」と、ぼやいていたもの。ところが、ナウシカはマスクを外したりする。さすが彼女、見るからに免疫力半端なさそうだものね。免疫力と言えば、高価なサプリも便利でいいけど、やっぱり身近な野草ほどありがたいものはない。この永い春、以前にも増して豊富な森の西洋イラクサをいろいろ料理しては免疫力向上に勤しんでるよ。抗体についても重要だけど、それでもまずは己の免疫から。併せて精神のも、ね。

だから、メディアは、恐れをあおるような情報ばかりじゃなく、例えば、すぐ回復した方々の普段の食生活とか、お亡くなりになった方々の生活習慣の実態だとか(不謹慎なのかもだけど、亡くなった方も、残る者のためにそれは本望なのでは?)、既存の病気での死亡者数との比較なんかをもっと広く前向きに伝えて頂けないものかしらと。

経済活動の減少により、みるみる澄みゆく空気とお水。野生が洗われるのを目の当たりにして、本当に怖いものは何なのかを考える機会となっているはず。

UAさん「まずは己の体の免疫から。併せて精神のも、ね」

息子の西洋イラクサ学習

では、ここで待望の、「昔、うー子がチェチェィン子と呼ばれたわけ」最終章になります!

「私も歌いたい~」。そう言い出したのは、就職先を1カ月でクビになり、北新地のジャズクラブでバイトを始めて1カ月もしない頃。ボーイフレンドに贈られたアレサ・フランクリンのレコード『Aretha’s Gold』にソウルの存在を知ってまもなく、迷わず歌いたかったのは『Chain of Fools』。それなのにママを始め、歌指導を引き受けてくれた先輩シンガーにまで、「初めっから、そんな難しい歌、やめときなはれ!」と言われてしまう。その代わりに、アレサがカバーする『Groovin’』が宿題となり、1週間の出勤前練習。実は、その曲をアレサが歌ってたことも知らなかったんだけど、ともかく全ては初体験。やるしかない。

ところが人生初舞台の日、蝶(ちょう)ネクタイのトリオの生演奏に、想像を絶する大緊張。歌い出すタイミングが一向につかめず、終始、仁王立ちのまま、演奏だけのグルーヴィン、笑。一声も発せないまま、曲が終わるか終わらないうちに、ダダーっと、小さな衣装部屋に駆け込んで、号泣すること30分。「もう二度と歌うなんて言いませんー!」と落ち込んで、そのままずっと衣装部屋にこもってから帰宅。

されど若いって素晴らしい。そのまた1週間もしないうちに、「私やっぱり『Chain of Fools』が歌いたいねん!」とケロリと言い出して、初完唱。加減を知らない大声で、耳をふさぐ人も見えたが、お構いなし。と言うか、お構えやしない。

そんな風に、バンド経験すら一度もなかった私が、白髪交じりのジャズトリオに励まされ、日々レパートリーを増やしていくのだけど、それでも十八番は、チェチェィンチェーィンと繰り返す『Chain of Fools』。洋楽を聴かないお客様に、「何や、タイのキックボクサーの歌みたいやなあ」というお言葉を頂き、しばしばリクエストまでちょうだいするようになった頃には、「チェチェィン子」と呼ばれていましたとさ。ちゃんちゃん。

早く日本に歌いに行きたいよ~。

うーこ

>>野村友里さんのお返事に続く

    ◇

往復書簡「暮らしの音」へのご感想をお寄せください! UAさんと野村友里さんへの質問やメッセージなども、こちらの応募フォームから受け付けています。

おすすめの記事

  • 野村友里さん「猛烈ラブレター、地球に書いたほうがいいかもね」

    野村友里さん「猛烈ラブレター、地球に書いたほうがいいかもね」

  • UAさん「アレサは4歳から歌ってるのに!」 泣きながらミナミのアメリカ村を疾走した日

    UAさん「アレサは4歳から歌ってるのに!」 泣きながらミナミのアメリカ村を疾走した日

  • 野村友里さん「元気?って言われて、元気!って迷わずに答えるって気持ちいい」

    野村友里さん「元気?って言われて、元気!って迷わずに答えるって気持ちいい」

  • PROFILE

    • UA

      1972年大阪生まれ。母方の故郷は奄美大島。1995年デビュー。1996年発表のシングル『情熱』が大ヒット。以降、浅井健一(元ブランキー・ジェット・シティ)らと組んだ「AJICO」、ジャズサックスプレーヤー菊地成孔とのコラボ、映画主演、NHK教育テレビでの歌うお姉さんなど、活動は多岐にわたる。2016年、7年ぶりとなるオリジナルアルバム『JaPo(ヤポ)』をリリース。ライブ、フェス、楽曲制作と精力的に活動している。また、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中。現在はカナダに居住。4人の母でもある。α-STATION(FM京都)の番組「FLAG RADIO」にレギュラー出演中。2020年6月21日、デビュー25年を迎えた。
      http://www.uauaua.jp/

    • 野村友里

      料理人、「eatrip」を主宰。おもてなし教室を開く、母・野村紘子さんの影響を受けて料理の道に。主な活動に、レセプションパーティーなどのケータリングフードの演出、料理教室、雑誌の連載、ラジオ番組など。2009年、初の監督作品『eatrip』を公開。11年、「シェ・パニース」のシェフたちとともに、参加型の食とアートのイベント「OPEN harvest」を開催。その経験を経て日本のシェフたちとともに「nomadic kitchen」プロジェクトをスタート。12年、東京・原宿に「restaurant eatrip」をオープン、19年、表参道・GYREに「eatrip soil」をオープン。著書に『eatlip gift』『春夏秋冬 おいしい手帖』(マガジンハウス)、『Tokyo Eatrip』(講談社)、共著に『TASTY OF LIFE』(青幻舎)がある。
      https://www.instagram.com/eatripjournal/

    野村友里さん「猛烈ラブレター、地球に書いたほうがいいかもね」

    一覧へ戻る

    野村友里さん、外出自粛期間に思った「私はどんな人が好きなんだろう?」

    RECOMMENDおすすめの記事