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アフリカ勢、パリに新風 デザイナー3人に聞く

パリ・コレクションで近年、アフリカ出身の新進デザイナーたちの活躍が注目されている。グローバル化や市場の拡大、多様性が求められる社会の変化を追い風に、それぞれの地元の素材を使った独創的な作品を見せる。なかでも気鋭の3人に聞いた。

古来の工芸文化を現代に イマネ・アイシ(51)

アフリカ勢、パリに新風 デザイナー3人に聞く

左:イマネ・アイシ カメルーン生まれ。2000年代から服作りを本格的に始めた
右:20年春夏パリ・オートクチュール

数年前から、パリ・オートクチュールコレクションの時期に非公式スケジュールでショーを続けてきた。この1月、ようやく公式に招待されてデビューして、涙が出るほどうれしかった。サハラ以南の地域からの公式参加は初めて。アフリカ中から反応があり、「新しいモードの扉を開いた」と言われました。

故郷カメルーンの木の皮をたたいて作った繊維の織物や、ナミビアのパッチワーク、セネガルやブルキナファソの貴重な布のドレス。どれも工芸として素晴らしいのに、廃れかけている。

一般にアフリカ的と思われている、ろうけつ染めの派手な柄の布は、実は植民地時代に欧州から持ち込まれたもの。私はそれ以前のアフリカの工芸文化に光を当てて、現代的な形でよみがえらせたい。それが地元の雇用拡大につながる。糸も染料も天然素材だからエコなのです。

故郷では、祖父が帽子屋で、父がボクサーで母はミス・カメルーン。1992年に渡仏した私はダンサーやモデルを経て独学で服作りの道へ。最近は、仕事への厳しささえあれば、誰にでも役割やいるべき場所が与えられるようになった。アフリカ文化を基盤にした新しい形で、皆が知らないモードを作りたい。

西洋と融合、連帯生む服を ケネス・イゼドンモウエン(30)

アフリカ勢、パリに新風 デザイナー3人に聞く

左:ケネス・イゼドンモウエン ナイジェリア出身。16年に独立。ブランド「ケネス・イゼ」設立
右:20年秋冬パリ・コレクション

2月のパリ・コレでの初のショーでは、祖国ナイジェリアの様々な色味の手織り布を使った。それをモダンな形に仕立てて、西洋とアフリカが融合する服を並べた。世界中で人権問題などが山積みのいま、愛と自由、人々の連帯を呼び掛けたかった。

私は生まれて2日後に、着のみ着のままナイジェリアからオーストリアに一家で渡った移民。幼い時から高校生になるまで、バービー人形の着せ替えに熱中した。周りに黒人はいなくて、ファッションは唯一の自己表現であり、サバイバルの手段だった。それはいまもパワーの源。故郷の若者にファッションの教育や雇用の場を作ろうと奮闘しています。

最近、ハイブランドが、アフリカを市場として発展させようとしているのは喜ばしいこと。アフリカの若い世代の多くは親世代よりも教養を身につけているし、自信満々です。私はアフリカ人というより、1人の人間として、人と人をつなげるような服作りをしていきたい。

故郷モチーフに「私とは」 テベ・マググ(26)

アフリカ勢、パリに新風 デザイナー3人に聞く

テベ・マググ 南アフリカ共和国生まれ。15年にデビューし、19年、LVMHプライズで最優秀賞

2020年秋冬のテーマは「イポペング」。生まれ育った南アフリカ・キンバリーにある地域名で、自らを美しくするという意味もある。家族や友人との思い出、教会や実家の居間などを着想源に、「私とは何者か」を見せたかった。

ストライプに見える生地は叔母の家のトタン屋根の写真プリント。花柄のトレンチコートは祖母宅のテーブルクロスをヒントにした。全体はマスキュリンでも、袖など細部にフェミニンな要素を混ぜた、自分らしいスタイルを作りたい。

アフリカには洗練された文化遺産と共に、前向きな近代性もある。伝統を重んじながらもオープンマインド。この二つの価値の共存が多くの人にとって新しく映るのではないだろうか。

いまファッションは危機的な状況にあって、特に気候変動や疫病の流行など世界で起こっていることを考えると、大企業による大量生産大量消費型のビジネスの方法は再考すべき時だ。そんな中で、環境に配慮し、地域社会に還元したものづくりを試みているアフリカのブランドに、人々はひかれているのかもしれません。

(編集委員・高橋牧子)

 <ショー写真は大原広和氏、デザイナーは濱千恵子氏撮影>

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