#ステイホーム with 花のない花屋

#16 ステージ4と診断されて…… 息子に今、してあげられること全部

おうち時間に花束を――。

 

おうちにいる時間が増えている方が多いと思います。花を部屋に飾ることで沈みがちな気分が明るくなったり、水をあげることで心が落ち着いたり……。おうち時間を少しでも楽しく心身ともに穏やかに過ごせますように。
いま、“わたし”に贈る花束を。

 

心に大きな不安がのしかかっているこんなときだからこそ、花から伝わるメッセージを多くの読者の方に受け取って、感じてもらいたい!という思いを込めて。フラワーアーティスト東信さんが、5月26日から6日間連続で6人の方の気持ちに寄り添った花束をお届けします。

 

全国農業協同組合連合会(全農)では、新型コロナウイルスによる大きな影響を受けた花の生産者を支援する取り組みを行っています。今回はその一環として、ご協力いただきました。

#16
杉山和子さん(仮名) 36歳 女性
兵庫県明石市 主婦

     ◇

昨年4月、ステージ4の大腸がんと診断されました。
当時、息子は9カ月になったばかり。自分のいない時間を、幼い息子が生きていくのかと思うと、目の前が真っ暗になりました。

腹痛と便秘が続いたため、病院へ。検査後、即入院となりました。
私の場合はステージ4と診断されても、幸い手術で全部取り除くことが出来たのです。しかし、これで終わるわけではありません。

息子が幼かったため、抗がん剤治療は通院という形で行うことに決めました。それは、想像以上に過酷な日々でした。

私の場合、抗がん剤治療は8回と決められていました。
3週間に一度、抗がん剤の点滴を打ちに病院へ行き、飲み薬を2週間飲み、また病院へ……というサイクルです。

この点滴の後、私は強烈な吐き気や手足のしびれに襲われました。足がつったような感覚になり、1週間ほど歩けなくなることも。
そのため点滴を打った後は自宅に戻らず、同じ市内の実家でしばらく過ごしていました。その間、息子の世話は夫と、義父母が見てくれました。

実家で横になって過ごす時間は、とてもとても孤独でした。
息子の成長をそばで見られないつらさ。抗がん剤の関係で、手術前はそろそろかな……と考えていた離乳も強制的に決行。
私の知らない間に、色んなものが食べられるようになっていたり、入院当初はつかまり立ちがやっとだったのに、2、3歩ですが歩けるようになっていたり……。

昨年末ごろ、やっとつらい抗がん剤治療を終え、診断から1年経つ今は再発もなく経過観察になっています。
やっと家族で外出したり、ちょっとした旅行をしたりと、普通の生活が出来るようになったと思ったら、新型コロナウイルス感染拡大の波がやってきました。

しかし夫も在宅勤務となり、息子の保育園も登園自粛に。
今までにないほど家族の時間が持てるようになり、楽しく日々を過ごしています。

もちろん育児は楽しいことばかりではありません。どんなに息子がかわいくても、怒ることもあります。

でも今、私は「生かされている日々」と感じています。

何年先は……と考えない。息子に今できることは全部やってあげたい。怒ることすら楽しい。
みんなで一緒に、あれも出来る、これも出来ると考えられる「今」があることが、とてもうれしいのです。

思わぬ形で訪れた家族との大切な時間を、素敵なお花で彩っていただけたら、こんな幸せなことはないなと思います。

花束を受け取って……

#16  ステージ4と診断されて…… 息子に今、してあげられること全部

真っ黒な箱から、とても色鮮やかで数えきれないほどたくさんの種類のお花が見えたとき、思わず笑みがこぼれて心が満たされました。
我が家ではダイニングに飾らせて頂きましたが、息子も「おはな!」と指を指してうれしそうにしています。
この花束を見るたびに気持ちが穏やかになり前向きになります。
以前、東さんがテレビ番組で、花の枯れていく姿も想像しながら作られているとおっしゃっていたことを覚えています。朽ちていく花、これから咲く花、それぞれがどんな風になっていくのかその過程を見られるのがとても楽しみです。
コロナも落ち着いてきてはいますが、これからも「家族で一緒に過ごす」という当たり前のようで当たり前ではない時間を大切に、笑って過ごしていきたいです。本当にありがとうございました!

 

花束を作った東さんのコメント

大切なご家族との時間を彩りたいということでしたので、鮮やかで明るく、にぎやかな雰囲気となるよう、色とりどりの花を束ねました。
中央のダリアを取り囲むように、色も形も質感も違う花々が寄り添っていますので色々な角度から、見たり触ったりして楽しんでもらえたらなと思います。
大病を克服され、経過観察中ということですので、体に気をつけて彩り豊かな日々を送ってもらえたらと願っています。

#16  ステージ4と診断されて…… 息子に今、してあげられること全部

《花材》ダリア、アジサイ、ガーベラ、バラ、エキナセア、カーネーション、アリウム、ユリ、エピデンドラム、リンドウ、ナデシコ、カラー、ベニバナ、パフィオペディラム、ブバルディア、ピンクッション、チランジア、キイチゴ(葉)

(文・&編集部 大賀有紀子/写真・椎木俊介)

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  • >>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    #16  ステージ4と診断されて…… 息子に今、してあげられること全部

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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