高山都の日々、うつわ。

〈特別編〉#22 家での時間が増えて見つけた料理の楽しみ。

連載20回目を迎えた高山都さんの連載「日々、うつわ。」。5月は特別編として、前後編で高山都さんのインタビューをお届けします。後編は外出しづらい日々が続いた中で、高山都さんが日々心がけていること、おうち時間を楽しむコツについて、そして今、考えていることを伺います。
(前編はこちら「<特別編>ひとつの器から物語が生まれる。」)

     ◇

春から初夏にかけて。1年のうちで一番美しく、気持ちのいい季節に突然降りかかった緊急事態宣言。公私ともにいつもアクティブに動いている印象の都さん、この時期をどんな風に過ごしているのでしょうか。

「私は普段の生活と比べて、そこまで劇的な生活の変化はじつは感じていないんです。それでもやはり気軽に外へ出られないのは窮屈に感じることもありますし、何より友人に会えないのは寂しいですね。家で過ごす時間が増えたことで、料理の楽しみは格段に大きくなりました」

インスタグラムで紹介している日々のごはん日記も大人気ですね。普段からていねいに食事を作っているイメージがありますが、作る料理に何か変化はありましたか?

「時間がたっぷりある分、いつもよりちょっと手の込んだものを作ってみたり、初めての料理にチャレンジしたりしています。たとえば普段は友人を招いたり、ホームパーティーをするときくらいしか作らない揚げ物を自分のためだけに作ってみたり。先日は鶏のもも肉をカラッと揚げて、そこに甘辛いタレを絡めた油淋鶏(ユーリンチー)を作ってみたんですけど、すごく上手にできました!」

自分のために揚げ物とは! 尊敬します……。

「友人を招いた食事会などではたまに揚げ物を作りますが、自分のために作るのは私も久々でした。作って食べるとやっぱりおいしいなと思いますし、何度か作っているうちにだんだんコツがわかって上達してくるんです。小さなことですが、自分が少しずつ成長しているなっていうのがわかってうれしい気持ちになるんですよね。いつかまた友人たちとにぎやかに食卓を囲める日がきたら作ってあげようとか、そういう想像をするとポジティブな気持ちにもなれて」

〈特別編〉#22 家での時間が増えて見つけた料理の楽しみ。

#16 居酒屋みやちゃん。」では、少し気分が落ち込んだとき、あえて手の込んだ料理を作る「豚の角煮リフレッシュ」法について綴(つづ)ってくれました。都さんにとって、料理は元気の源なのです

 

今のおうち時間を未来の楽しい時間のために使う。すてきですね!

「この数カ月で改めて感じたのが、『自分のために時間を使う』ことの大切さなんです。これまで普通にできていたことが自由にできない特殊な時期でしたよね。不安や寂しさからネガティブな気持ちになりやすいですし、イライラが募ることだってあると思います。でも新しいお料理に挑戦したり、時間がなくて読めなかった本を読んだりすると、確実に未来の自分の糧になる。そう考えると、すごくぜいたくな時間をもらったのかなって思えてくるんです」

“誰かや何かのせいで不自由を強いられている”と捉えるのではなくて、発想を変えたんですね。

「本当に自分の捉え方ひとつで気分が180度変わるんだなって思いました。そうやって毎日を過ごしているといつもご機嫌でいられるし、誰かや自分を責めたりしないですむ。だから毎日、『できないこと』より『できること』、『やってみたいこと』を探すように心がけているんです」

〈特別編〉#22 家での時間が増えて見つけた料理の楽しみ。

離れている時間が関係を豊かにしてくれる

普段からお友達を招いた食事会などを開いている都さんですが、ひとりで過ごす時間が増えた今、寂しさを感じることはありませんか?

「もちろん寂しいです。オンラインで友達とおしゃべりしながらごはんを食べることもありますが、同じ空間で過ごす時間には変えられないなと思います。そういう経験をする中で、きっと多くの人も同じように寂しい気持ちを日々抱えているんだろうなって強く実感したんです。それでほぼ毎日、インスタグラムでライブ配信をしよう!と思いたったんです」

はい、拝見してます(笑)。夕方から夜にかけて、ライブでお料理を作りながらファンの方々とおしゃべりする楽しい時間ですね。

「始めた当初は料理をしながらおしゃべりするのに慣れなくて、色々お恥ずかしいハプニングも満載でした(笑)。それも含めて見ている方々が盛り上がってくれて。調理法だけでなく、使っている台所道具のことや調味料のことなど、たくさんコメントをくれるので、その双方向性がすごく楽しくて。食事の時間がすごくにぎやかになりました」

〈特別編〉#22 家での時間が増えて見つけた料理の楽しみ。

#5 お弁当づくりから学んだこと。」では、約1年半続けたお弁当作りについて振り返りました。インスタグラムに日々記録した#みやれ弁にはたくさんのファンからのコメントが寄せられ、毎日の励みになったそう

ファンの方のコメントで特にうれしいのはどんなものですか?

「私が作った料理を参考に夕食を作ってくれたり、それまでは料理をする気持ちになれなかったという方々から『久々に台所に立ってみたら気分が晴れました!』とコメントをいただくと、とてもうれしいですね。実は本来ならこの時期に、いくつかトークショーやイベントを開催する予定でした。でも全部延期になってしまって……。ああ、自分にできることはないんだなって少し落ち込んだりもしていたんです。それが、インスタライブを通してたくさんのファンの方と時間を共有できて、すごく元気をもらいました。同時に、今、私にできることをやろう!と思えるようになったんです」

インスタライブは見ている方の反応がリアルタイムに、ダイレクトに伝わってくるのでいいですね。

「みんな自由に発言や質問するにぎやかな感じも楽しいですし、あそこのデリバリーがおいしいよとか、お取り寄せがよかったよとか、今の期間を楽しむコツをみんなでシェアできるのもすごくいい。たった1時間ほどの配信ですが、それを流し見るだけで『明日はお料理してみよう』とか、『これに挑戦してみよう』とか、小さな一歩を踏み出すきっかけにしてもらえたら何よりうれしいなと思うんです。人に会えなくて、寂しい時間が続きましたが、そんなときだからこそ見つけたコミュニケーションのあり方というか、人との新しいつながり方を発見したような気持ちです」
 

〈特別編〉#22 家での時間が増えて見つけた料理の楽しみ。

梅雨どきにも元気をくれる花について綴った「#2 雨の日の花しごと。」では自宅でのフラワーアレンジメントのコツも紹介してくれました。花があるだけで気持ちが晴れる。今、実践したいことのひとつかもしれません

置かれた場所で美しく咲きたい

離れているからこそ近づくものもある。ポジティブな都さんらしい考え方ですね。

「物理的には離れていても、気持ちが近くなるというか……。ふだん忙しくしているときは自分のことで精いっぱいになりがちですが、今は家族はもちろん、友人とも何げないことで電話やオンラインで話したりする機会が増えました。おいしい食材をお取り寄せしたときは『あの子にも、あの子にも』といろいろな人の顔が思い浮かんで、せっせと送ったり。そうするとたくさんお返しが届いて、わらしべ長者みたい(笑)。物の交換なんですけど、その中にある気持ちのやりとりがすごく温かくて、ああ、普段の自分にはこういう小さな思いやりを含め、心の余裕がなくなっていたのかもなと気づくことも多いです」

たしかに今は、お互いを思いやる気持ちを大切にしたいですね。

「誰かのために何かをしたとして、見返りを求める気持ちっていうのは誰にでも少なからずあると思うんです。だからこそ期待した反応が返ってこないとちょっとがっかりしちゃう。もちろん私もあります、そういうこと。でもここ最近の経験で、どんなことも『誰かのためにやるぞ!』って肩に力を入れて行動するんじゃなくて、自然とそういう想(おも)いが湧き上がってくる、その気持ちのままに動くと、こんなにも自分の気持ちを豊かに、穏やかにしてくれるんだと気がついたんです。そういう誰かを想う気持ちは、自分を大切にして、日々を機嫌よく過ごすことからしか生まれないんじゃないかなって」

そういう気持ちは伝染するというか、必ずまた自然と自分に返ってきますよね。「大変なときこそ、お互い様」という感じで、今はまさにそういう思いやりの気持ちの交換が自分も含めて周囲も元気付けるのかもしれませんね。

〈特別編〉#22 家での時間が増えて見つけた料理の楽しみ。

「『置かれた場所で咲きなさい』というフレーズを常日頃から大切にしていて、じつはこれは病気と闘っている友人が教えてくれました。思い通りにならない厳しい状況の中でも、つらいつらいと嘆かずに、その環境の中でできる限りきれいな花を咲かせられる人であろう。すごく勇気が出てくる言葉です。そのためには強くなくてはいけないんです。そこにはやさしさも必要だし、賢さだって欠かせないと思います。私も心が弱ってきたなと感じると、この言葉を思い出しています」

奇麗な花は周囲の心もほぐして、前を向かせてくれるものです。

「はい、自分もそんな存在になれたらといつも思っています。だから今過ごしている時間は『こころの鍛錬』かもしれないなって。私もまだまだ弱い部分や自分中心に考えてしまう部分がもちろんあります。でも、この時期にきちんと自分と向き合って、その過程にあるいろいろな発見や気づきを大切にすれば、今度またみんなに会えるときには、成長した姿を見せられるんじゃないかなって。そんなふうに考えると、未来がちょっとワクワクしたものに感じられて、また今日も頑張ろうと思えるんです」

今はつぼみを膨らませる時間ということですね。美しい花を咲かせた都さんに会えるのがとても楽しみです。

「新しいお料理もたくさん覚えて、どの器と合わせようかとか、あれこれ考えています。これからもこの連載を、楽しみにしていただけるとうれしいです」

〈特別編〉#22 家での時間が増えて見つけた料理の楽しみ。

花を飾るのもここ数年続けている習慣。「忙しくしていると、つい花の世話を忘れてしまいがちですが、元気のない姿を見ると、『ああ、いけない!』と自分を律するきっかけになることも。おかげで部屋も自然と整えるようになりました」

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写真 相馬ミナ 構成 小林百合子

PROFILE

高山都

モデル 1982年、大阪府生まれ。モデルやドラマ、舞台の出演、ラジオ番組のパーソナリティなど幅広い分野で活躍。フルマラソンを3時間台で完走するなどアクティブな一面も。最近は料理の分野でも注目を集め、2作目となる著書『高山都の美 食 姿2』では、背伸びせずに作る家ごはんレシピを提案。その自然体なライフスタイルが同世代の女性の共感を呼んでいる。

高山都の日々、うつわ。

丁寧に自分らしく過ごすのが好きだというモデル・俳優の高山都さん。日々のうつわ選びを通して、自分の心地良いと思う暮らし方、日々の忙しさの中で、心豊かに生きるための工夫や発見など、高山都さんの何げない日常を紡ぐ連載コラム。

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