料理家・冷水希三子の何食べたい?

〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくれる連載「何食べたい?」。前回の番外編では、愛用の台所道具を紹介しました。今回は、冷水先生が日々使っている愛用の調味料についてのお話。選び方や使い方、調味料でぐっとおいしさが引き立つお料理についても伺いました。

     ◇

―― 冷水先生、こんにちは。今回は番外編ということで、前々からお問い合わせの多かった調味料について伺えたらと思っています。みなさん、冷水先生が愛用している調味料がすごく気になっているみたいです。

冷水 そうなんですか!? お役に立てるかどうかわかりませんが、好きなものはたくさんあるので、参考にしていただけるとうれしいです。

―― 調味料って、たとえば塩ひとつとっても無数にあるじゃないですか。産地はもちろん製法が違ったり……。私も何を基準に選んでいいのか正直さっぱりわからないんです(涙)。

冷水 そうですねえ、私も色々使ってみて「いいな」と思ったものを使うようにしています。たくさん試していくと自分の好みとか料理との相性もわかってくるので、実践あるのみです!

―― はい!

冷水 私が愛用しているものが、みなさんにとってもいいものだとは限りませんから、あくまでも参考程度ということにしてくださいね。

〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

左から有機白ワインビネガー〈グエルゾーニ/LA CUCINETTA〉、EXVオリーブオイル〈ザハラ/LA CUCINETTA〉、粟國(あぐに)の塩 釜炊き〈沖縄ミネラル研究所〉、にがり入りうすくち醤油(しょうゆ)〈かめびし

―― まずは、料理の基本中の基本である塩ですね。

冷水 これは沖縄の粟国島で作られているもので、天日塩と釜炊き塩があり、私は釜炊きのものを使っています。雑誌で紹介されているのを見て試しに使ってみたのがきっかけです。

―― 冷水先生でも雑誌を見て買ってみるっていうことがあるんですね! なんだか親近感……。

冷水 もちろんありますよ~(笑)。このお塩は、いい意味で「普通な感じ」で、下ごしらえに使うと素材の味をちゃんと引き出してくれますし、調味に使っても全体の味を邪魔しない。そこがすごく使いやすいなと思っています。

―― みんなと仲良くしつつ、きちんと仕事をしてくれるんですね! なんだか頼もしい感じです。

冷水 使い始めてしばらくして、思いがけずお仕事でこの塩を作っている工場を見学する機会があって、それからはより愛着を持って使っていますね。海からくみ上げた海水を1カ月近くかけて丁寧に塩にしていく工程には、本当に頭が下がりました。

―― 作り手の顔が見えて、その誠実さが実感できると、安心して使えますものね。ちなみに天日塩ではなくて釜炊き塩を使っているのはどうしてですか?

冷水 一般的に天日塩は釜炊き塩より粒子が大きめなので、そちらは料理の仕上げに使うことが多いですね。

―― なるほど、粒子が大きいとアクセントになりますものね。塩の使い分けが少しわかってきました! ちなみに以前教えてもらった「オイルパスタ」でもこの釜炊き塩を使っていましたね。

冷水 パスタに塩けは欠かせない要素ですが、前面に出すぎるとしょっぱいだけの味になってしまいます。塩はあくまでも素材の引き立て役に徹して欲しいので、この塩はぴったりなんです。

―― たしかに、このときも万願寺とうがらしの心地良い苦みとパスタの小麦の風味がしっかりと感じられました。塩が縁の下の力持ちをしてくれていたんですね。

冷水 塩はたいていのお料理に使うので、買い求めやすいお値段というのも意外と大切なポイントだと思います。

〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

シンプルなパスタこそ塩が大切。このときも塩けが前面に出ず、素材の味をひそかに引き立ててくれました。「パスタ好きの彼をうならせる夏のオイル系(冷水料理相談室)」より。レシピはこちら

―― 次はこれまた料理に欠かせない醤油ですね! あっと、これは薄口醤油ですか。

冷水 薄口醤油はお料理にあまり濃い色をつけたくない時に使うものです。ただ色は薄くても濃い口醤油より塩分が多いので、キリッと味を引き締めたいときに使っています。

―― たしかに冷水先生のお料理にはよく薄口醤油が登場しますね。以前教えていただいた「和風グリルチキン」でも使っていました。たしかに仕上がりの色がやさしくて、美しいです!

冷水 この醤油も、ものすごく個性があるというわけではないんです。きちんと醤油本来の役割を果たしてくれる頼もしい存在です。

―― 醤油本来の役割ですか……(ぽかん)。

冷水 醤油は塩けを足す調味料ではなくて、醤油のもつ味、おいしさをプラスするものです。だから醤油そのものが「おいしい」と思えるものを選ぶのがいいのかなと思います。

―― 醤油がベースになる煮物や煮魚は醤油選びでぐんと味が変わるということですか?

冷水 そうですね、あとはこの「和風グリルチキン」のようにおだしに加えて使う場合もそうです。

―― 今日家に帰ったら、うちの醤油をちょっと舐(な)めてみます! 醤油そのものの風味を気にしたことなんてありませんでした……。

冷水 薄口醤油を使い慣れていない人は分量に気をつけてくださいね。色が薄いからといってたくさん使うと、すごくしょっぱくなってしまうので(笑)。でも薄口醤油を使いこなせるようになると、お料理によってはより美しく仕上がりますので、ぜひ挑戦してみてください。

―― 冷水先生のような、優しげで素材の色が引き立っているお料理を目指します!

〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

鶏肉は皮目から焼き、フライパンにぎゅっと押し付けるようにして、皮をパリパリにします。香ばしい香りがたれに移って、よりおいしくなりますよ

〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

醤油を使っているとは思えないほど優しい色の仕上がり。これが薄口醤油の力です! 「初めてのママ友ホームパーティー。上品で大人な持ち寄り料理とは?(冷水料理相談室)」より。レシピはこちら

―― 三つ目は白ワインビネガーですね。酢の一種ですけど、酢って米酢とかりんご酢とか、こういう洋モノのビネガーとか色々あって、本当にもうどうしていいのかわかりません!

冷水 たしかにたくさんありますねえ。

―― 恥ずかしながら「和食には米酢、洋食にはビネガー、中華には黒酢」みたいな勝手な思い込みがあるのですが、それってどうなんでしょう?

冷水 う~ん、それはこだわらなくていいかな(笑)。

―― え~、じゃあどうやって使い分けたらいいんですか!?

冷水 私の個人的な感覚ですが、白ワインビネガーは米酢や穀物酢より酸がキリッとした印象なんです。なので、そういうふうに仕上げたいな~と思ったときに使っていますね。

―― 以前教えていただいた「きゅうりとメロンのサラダ」のときも白ワインビネガーを使っていましたね。

冷水 そうそう、これは甘みのあるメロンを使っていたので、酸味がないとデザートのようになってしまうんです。だからビネガーでキリッと感を出しました。

―― 甘いメロンと、ちょっと青っぽい風味のきゅうりの組み合わせってどうなるんだろうと思っていたんですけど、食べてみるとすごく調和していたというか、酸味が入ることでいい感じのバランスを保っていたような気がします。

冷水 そうそう、そういう役割です。いい具合に調和させつつ、お互いのいいところを引き出してくれるんです。

―― ビネガーも仕事人ですね。ちなみに愛用しているものは有機栽培のぶどうを使ったものなんですね。

冷水 大切に育てられたぶどうで丁寧に作られているせいか、角のないふくよかな酸味とうまみがあるんです。酸が強いだけのビネガーだと素材の味を殺してしまうと思うので、これは素材の味を邪魔せず、きちんと味を引き立ててくれます。

―― なんとも奥ゆかしいビネガーですね。酢を使う料理って、どうしても酸っぱさが際立ってしまってどうしたものかと思っていたんですけど、選び方に問題があったのかも……。

〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

メロンにビネガー?と思うことなかれ。ビネガーの仕事ぶりがダイレクトに伝わるサラダ、ぜひお試しあれ。「初夏にぴったり。涼やかなきゅうりとメロンのサラダ」より。レシピはこちら

―― そして最後はオリーブオイル。これも使用頻度が高いので興味津々です!

冷水 オリーブオイルを「調味料」の回に入れていいものかどうか迷ったのですが、私にとっては調味料という側面もあるのであえてご紹介しますね。

―― オリーブオイルが調味料!?

冷水 そう「味付け」です。あとは全体の味のバランスを整える役割ですかね。

―― えーと、もう少し詳しくお願いします!

冷水 たとえば以前ご紹介した「すももとミニバーグのサラダ」を例に出しますと、これは牛肉100%のミニバーグをすもも、赤玉ねぎ、ミニトマトなどとマリネしたサラダを一緒に食べるものなんですけど、このマリネの風味の肝になるのがエクストラバージン(EXV)オリーブオイルなんです。

―― オイルを風味づけに使うんですね!

冷水 こういう場合は熱を加えず「生」のまま使うので、酸度が高くなくて、果実と思えるようなオリーブオイルを選ぶといいですよ。

―― 「果実」ですか!

冷水 風味も豊かですが、このオイルは素材の輪郭を際立たせてくれるので、マリネには欠かせません。

―― たしかに冷水先生のキッチンにはいくつかオリーブオイルがあって、焼くとき用とサラダなどにそのまま使う用と、用途が別れていますものね。

冷水 熱を加えて使うものは使用頻度も高くなると思うので、お手頃価格のものでいいと思います。

―― 一方で「生」で使うものは妥協せず、ということですね。オリーブオイルは本当にたくさん種類があるので、自分好みのものを探すのも楽しそうです。

冷水 そうですね、購入するときに試飲できるといいですね。ぜひ色々試してみてください。

〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

生で使うオリーブオイルは「油!」という感じがしないフルーティーなものを選ぶのがポイント。試飲で少し舐めてみてから選ぶのがおすすめ。「甘酢っぱい夏の香り。すももとミニバーグのサラダ」より。レシピはこちら

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(料理 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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    冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

    〈番外編〉冷水先生の、切らしたら困る調味料

    料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

    PROFILE

    • 小林百合子

      編集者
      1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

    • 関めぐみ(写真)

      写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

    〈番外編〉冷水先生の、一生ものの料理道具 パート2

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