#ステイホーム with 花のない花屋

#19 ゆっくり待つのも、悪くない日々

おうち時間に花束を――。

 

おうちにいる時間が増えている方が多いと思います。花を部屋に飾ることで沈みがちな気分が明るくなったり、水をあげることで心が落ち着いたり……。おうち時間を少しでも楽しく心身ともに穏やかに過ごせますように。
いま、“わたし”に贈る花束を。

 

心に大きな不安がのしかかっているこんなときだからこそ、花から伝わるメッセージを多くの読者の方に受け取って、感じてもらいたい!という思いを込めて。フラワーアーティスト東信さんが、5月26日から6日間連続で6人の方の気持ちに寄り添った花束をお届けします。

 

全国農業協同組合連合会(全農)では、新型コロナウイルスによる大きな影響を受けた花の生産者を支援する取り組みを行っています。今回はその一環として、ご協力いただきました。

#19
戸村俊子さん(仮名) 49歳 女性
横浜市保土ケ谷区 パート

     ◇

5月1日で結婚20周年を迎えました。子育ても一段落し、今年は特別な結婚記念日にしよう……。そう思っていました。

結婚して3年目に双子の男の子が産まれました。その日から、家事に育児に、ノンストップで走ってきた気分です。その後娘も産まれ、パートも始め、自分のために時間を使った記憶はほとんどありません。

ふと気がつくと、息子2人は高校生、娘は中学生に。部活動に塾にと、自宅以外で過ごす時間が増え、私もいつの間にか自分の時間ができるようになりました。パートの時間も増やし、空き時間にはヨガを始めたり……。

毎朝5時に起き、ご飯を6合炊いてお弁当も四つ作る日々は変わらないのですが、パートをしながらでも自分の時間を持てる日が来るなんてと、いまだに信じられない気持ちでいます。

結婚記念日は、毎年家族全員で外食に出かけていました。でも20年記念の今年くらいは、夫と、ちょっと豪華なランチを食べにお出かけしようね――。

そう計画していた矢先、新型コロナウイルスの感染拡大により、一斉休校、外出自粛……生活が一変しました。
仕方の無いこととはいえ、楽しみにしていた20年分の思いも散ってしまいました。

毎朝子どもたちを学校に送り出すこと、子どもの行事を見に行けること、家族そろって外食すること、休みの日に観光すること、全て当たり前だったことがこんなにも尊く幸せだったんだ……。毎日のささいなことこそ大切なんだと、思い知らされる日々です。

家の中で過ごすことしかできない中、なんと子どもたちが自分たちで料理をするようになりました。私がパートに出る日は、お昼を用意して行かなくても大丈夫になり、また一つ、母親としての役目を終えた気分です。こうしていつの間にか、子どもたちは巣立っていくのでしょうか。

結婚記念日は、ちょっといいお肉を買って、家族そろって自宅で焼き肉をしました。結局、結婚記念日だけどいつも通り。少し残念な気持ちもあるけれど、でもこれでいい。

子どもたちがまた、部活に学校にと、忙しい日常に戻ったら、今度こそ、夫と一緒にどこへ行こうか――。
この20年は、本当にあっという間に過ぎ去ってしまったので、そんなことを考えながらゆっくり待つ時間も、悪くないかもしれません。

花束を受け取って……

後日談用

純白の芍薬(シャクヤク)とカラーのエレガントで素敵すぎるブーケに胸がいっぱいになりました。
結婚式で手にしたカサブランカのブーケを思い出して、再びウェディングブーケをもらったような気持ちです。こんなにも心動かされるお花は初めてです。
大好きな芍薬の芳香が部屋中に広がって、ただただうっとり……20年分のご褒美をいただきました。
夫との20年の歩みと子どもたちの成長をかみしめながら毎日眺めては元気をもらっています。
これから先の明るい未来を信じて頑張っていこうと思える、生涯忘れられない記念になりました。いつか青山のお店にも伺いたいと思います。すてきなお花をありがとうございました。

 

花束を作った東さんのコメント

結婚20周年もきちんとお祝いできないままということで今回は華やか、かつ優しい雰囲気の花束をつくりました。
大輪の白の芍薬(シャクヤク)を中心に、周りにも真っ白なカラーを、そしてふわふわしたスモークツリーで全体を包み込むような構成です。蕾(つぼみ)の芍薬が徐々に開き、ますます華やかな雰囲気になる花束です。
何げない日常も、特別な日も、どちらも人生には欠かせない要素ですよね。花を通じて、少しでも日常が豊かに彩られることを願っています。

 

#19  ゆっくり待つのも、悪くない日々

《花材》芍薬、カラー、スモークツリー

(文・&編集部 大賀有紀子/写真・椎木俊介)

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  • >>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    #19  ゆっくり待つのも、悪くない日々

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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    http://azumamakoto.com/

    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


    #18 描いていた青写真のようにはいかなくても 支えてくれる妻へ

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    #20 離れていても、花で思いよつながって

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