#ステイホーム with 花のない花屋

#20 離れていても、花で思いよつながって

おうち時間に花束を――。

 

おうちにいる時間が増えている方が多いと思います。花を部屋に飾ることで沈みがちな気分が明るくなったり、水をあげることで心が落ち着いたり……。おうち時間を少しでも楽しく心身ともに穏やかに過ごせますように。
いま、“わたし”に贈る花束を。

 

心に大きな不安がのしかかっているこんなときだからこそ、花から伝わるメッセージを多くの読者の方に受け取って、感じてもらいたい!という思いを込めて。フラワーアーティスト東信さんが、5月26日から6日間連続で6人の方の気持ちに寄り添った花束をお届けします。

 

全国農業協同組合連合会(全農)では、新型コロナウイルスによる大きな影響を受けた花の生産者を支援する取り組みを行っています。今回はその一環として、ご協力いただきました。

#20
林田夏菜さん(仮名) 32歳 女性
東京都新宿区 会社員

     ◇

私は現在、仕事の関係で大阪の家族と離れて東京で一人暮らしをして4年目になります。
月に一度はしていた帰省も自粛しているため、2カ月以上、家族に会えていません。

そんな中でも、私たち家族は「花」を通してつながってきました。

ゴールデンウィークごろ、義理の母が入院しました。
入院といっても、腕のけがの関係で以前から予定されていたものです。
しかしこの情勢下につき、お見舞いの面会は不可。差し入れも守衛の方を通して渡すしかなく、義母の好きな花は差し入れることができません。

義母は自宅の庭の草花を大切に育てており、入院する前日も、庭の牡丹(ボタン)が満開になったことを、私に知らせてくれました。入院中も気にかけていたようで、義父がLINEを通じて草花の様子を報告していました。

私は義母に何かを差し入れることもかなわぬ立場だったので、在宅勤務の合間に近所の花屋でまだつぼみの芍薬(シャクヤク)を買いました。実際に病室に花を飾ることはできませんが、満開になるまでの経過を写真とともに伝えました。新型コロナウイルスによる混乱などものともせず、日々粛々と育ちゆく芍薬のけなげさは、私たち家族を勇気づけ、入院や在宅勤務で失いがちな時の流れを思い出させてくれるものでした。

私と夫は昨年結婚して、まだ子どもがいません。子どもがいれば、「孫」が共通の話題や連絡のきっかけになるのかもしれません。それが私たち家族にとっては「花」なのです。

実は私と夫は、まだ一緒に暮らしたことがありません。
転職の可能性なども踏まえて、「今年の夏ごろには……」なんて話もしていたのですが、コロナのため白紙に。
夫との新生活が始まるのも、いつになることやら。

そんな夫も、義母の影響なのか、観葉植物を育てることが趣味です。
電話をすると、「ヒマだったから水をやった」とか「今日はベランダに出した」などと話してくれます。

私も東京で一人暮らしを始めてからは、部屋に花を絶やさないようにしています。
ひとりで過ごす味気ない日常を、花はそこにあるだけでパッと彩ってくれます。

花を飾る花瓶は、昨年、新婚旅行で訪れたフランスで、夫と選んで購入したものです。
その時はこんな事態になるとは思いも寄りませんでしたが、この花瓶に花を飾ることで、夫と思いを共有しているような気持ちになれます。

新型コロナウイルスによる影響は見通しが立ちませんが、花がいつかは散ってしまうのと同じように、この状況もいつまでも続くものではないと思います。咲かない花は無いと信じて、つぼみのように、我慢の時期(いま)を過ごしていく決意の花束を、夫と選んだ花瓶に飾りたいです。満開になるまでの過程も、家族と楽しめるような花束だとうれしいです。

花束を受け取って……

#20  離れていても、花で思いよつながって

在宅勤務で、ひとり家で過ごす時間が増えていた頃に、お花が届きました。少しずつつぼみがひらいてお花が咲く、毎日表情が変わるような花束を見ていると、寂しい気持ちも和らぎました。いつか家族と一緒に住めるようになった時には、お花や植物がたくさんある家にしたいなあと思っています。

実は退院した義母の快気祝いも兼ねて、5月末に食事会を予定していたのですが、政府の県をまたぐ移動自粛をうけて、帰省は見送ることとしました。
でも日常の制限が少しずつ無くなり、先の見えない不安からは解放されました。楽しい予定はこれからもう一度つくればいいし、いまは帰省する時に家族とどこに行こうか、何を食べようか、何を話そうか、と色々と考えることを楽しんでいます。

 

花束を作った東さんのコメント

満開になるまでの過程も楽しみたいということで、今回はつぼみの花をたっぷりと束ねました。
きれいな山吹色の花が咲くベニバナも、オレンジ色の竹島百合(タケシマユリ)も、白い小花を咲かせるグリーンベルも、最初は色を隠したようにグリーンに覆われています。少しずつ色をのぞかせながら変化する様子も楽しんでもらえたらと思います。
離れているご家族とも、花を通じて心はつながっていられると信じています。

#20  離れていても、花で思いよつながって

《花材》グリーンベル、クレマチスシード、シモツケ、ベニバナ、シャクヤク、竹島百合

(文・&編集部 大賀有紀子/写真・椎木俊介)

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  • >>これまでの「花のない花屋」をまとめ読み

    フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

    #20  離れていても、花で思いよつながって

    1976年生まれ。
    2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
    近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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    http://azumamakoto.com/

    PROFILE

    椎木 俊介(写真)

    ボタニカル・フォトグラファー

    2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

    2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


    #19 ゆっくり待つのも、悪くない日々

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