高山都の日々、うつわ。

#23 手作りケチャップでナポリタン

#23 手作りケチャップでナポリタン

長く続いたおうちでのひとり時間。
みんなどんなふうに過ごしたのかな。

ときどき、ふとどうしようもない寂しさが
押し寄せてくることもあったけれど
そんなとき、わたしはいつも台所に立っていた。

思い出すのは、
春に予定されていた楽しみなお仕事が
いったんすべて白紙に戻ってしまった日のこと。
残念さと、これから始まる未知の日々への不安で
どこか沈んだ気持ちで駅から家までの道を歩いていたっけ。

帰り道、いつものスーパーに立ち寄ると、
真っ赤なトマトが堂々と並んでいて
その美しさに思わず手に取った。

くよくよしていても何も変わらない。
何か、自分の機嫌をよくすることをしよう。
それで、トマトケチャップを作ってみることにした。

#23 手作りケチャップでナポリタン

#23 手作りケチャップでナポリタン

ヒントをくれたのは、
少し前に訪れたワインバーでのやり取り。
店主が出してくれた
ポテトフライに添えられていたケチャップが
とてもおいしくて、
尋ねると手作りだと言う。

自分でケチャップが作れるなんて!
その時は驚きだけで終わっていたのだけれど、
せっかくぽっかりと空いた時間。
これは神様から「自由時間」のプレゼントだと思って、
新しい挑戦に使ってみることにした。

トマトは8個くらい。少々熟しすぎていても構わない。
皮付きのまま適当に刻んで、
みじん切りにした新玉ねぎと一緒にミキサーにかける。
あとは鍋に入れて、
塩、砂糖、酢、クローブ、シナモン、ローリエの葉を
加えてコトコト煮込むだけ。

イチゴシェークみたいだった液体が、
だんだんと濃さを増して、
水分量が3分の1くらいまで減る頃には
おいしそうなケチャップ色になる。

#23 手作りケチャップでナポリタン

#23 手作りケチャップでナポリタン

いかんせん初めてのことだから、
何が正解かはわからない。
味見を繰り返して、うん、おいしい!と思った瞬間が正解。
それが、おもしろい。

出来上がった手作りケチャップは
市販のものよりずっとコクがふかくて、
トマトと玉ねぎの甘さがやさしい。
ケチャップって、
酸味が前に出るものだと思っていたけれど、
野菜の甘みとうまみを味わうものだったんだ。

自家製ケチャップで作ったナポリタンは
これまでのものよりずっとおだやかな風味で、
具材にした野菜の味が、
ひとつひとつちゃんと感じられた。

素揚げしたじゃがいもやオムレツにかけても
ケチャップ味を「プラス」するというより、
素材の味を引き立てるという感じで、すごくおいしい。
次はあれに、これにと色々試しているうちに、
あっという間に使い切ってしまった。

日々の暮らしのなかで、
ささやかでも、新しいことをする。
それは大きなワクワクと、小さな自信をくれる。
足踏みしているように見えても、
ちゃんと前に進んでいる。

私にとって台所での挑戦は、
もやもやと不安な日々を支えてくれる、
大切な時間だったんだ。

#23 手作りケチャップでナポリタン

今日のうつわ

グーリ・エルベックゴーのプレート

東京・代々木上原のギャラリー併設ビストロ「AELU(アエル)」で一目ぼれしたデンマーク人の陶芸家、グーリ・エルベックゴーさんの深型プレートは若草のような色、丸みを帯びたフォルムがどこまでも優しい印象。サラダやパスタをこんもり、高さを出して盛り付けるとすごくさまになるので、おもてなし料理にもよく使っています。

    ◇

写真 相馬ミナ 構成 小林百合子

PROFILE

高山都

モデル 1982年、大阪府生まれ。モデルやドラマ、舞台の出演、ラジオ番組のパーソナリティなど幅広い分野で活躍。フルマラソンを3時間台で完走するなどアクティブな一面も。最近は料理の分野でも注目を集め、2作目となる著書『高山都の美 食 姿2』では、背伸びせずに作る家ごはんレシピを提案。その自然体なライフスタイルが同世代の女性の共感を呼んでいる。

高山都の日々、うつわ。

丁寧に自分らしく過ごすのが好きだというモデル・俳優の高山都さん。日々のうつわ選びを通して、自分の心地良いと思う暮らし方、日々の忙しさの中で、心豊かに生きるための工夫や発見など、高山さんの何げない日常を紡ぐ連載コラム。

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〈特別編〉#22 家での時間が増えて見つけた料理の楽しみ。

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#24 夏を告げるグラス

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