朝日新聞ファッションニュース

キモノの世界、過去・今・未来 英ビクトリア&アルバート博物館で企画展

日本の民族衣装としてではなく、ファッションという観点から企画したキモノの展覧会が英ビクトリア&アルバート博物館(V&A)で開かれた。計300点以上を展示し、キモノの構造や歴史、欧米モードへの影響などを深く広く掘り下げている。感染症対策のため現在は休館中で再開は未定。

歴史や影響みせる300点 性差・年齢問わぬ服

展覧会のタイトルは「Kimono:Kyoto to Catwalk」。ロンドンのV&Aは芸術とデザインを専門分野とし、以前からキモノを集めてきた。

同館東洋部のアナ・ジャクソン部長は、「ファッションが欧米で発祥したとの考え方は間違っている。世界中で生まれ、花開いてきたということを、すでに世界のファッションアイテムの一つになっているキモノを通して伝えたかった」と語る。

展覧会では、キモノの伝統と西洋への波及、大衆文化としての存在という三つのテーマに分けて展示している。

キモノの世界、過去・今・未来 英ビクトリア&アルバート博物館で企画展

会場入り口に展示された19世紀の打ち掛け(左)と2007年春夏のクリスチャン・ディオールのスーツ(中央)、斉藤上太郎の現代的なキモノ

会場入り口の抹茶色の部屋には、この展覧会の趣旨を象徴するような3作が並ぶ。19世紀初頭のカキツバタが全面に咲く古典的なキモノ、ジョン・ガリアーノがキモノから着想した2007年春夏のクリスチャン・ディオールの桜色のスーツ。そして、東京コレクションに参加する斉藤上太郎の、古典柄を現代的に表現したキモノ。過去と現在の表現が交差した展示が、キモノの未来を感じさせる。

キモノの伝統を伝える部屋には、江戸時代の歌舞伎役者が勇壮に舞う刺繍(ししゅう)が施された打ち掛けや吉原の遊女を描いた浮世絵が近くに飾られ、当時のトレンドリーダーが歌舞伎役者や花魁(おいらん)であったことがわかる。

キモノの世界、過去・今・未来 英ビクトリア&アルバート博物館で企画展

歌舞伎役者の柄を大胆に刺繍した打ち掛け

広げると1枚の絵のように見えるキモノのダイナミックなグラフィック性、オートクチュールのような緻密(ちみつ)な刺繍や立体的なアップリケ、色や柄の対比やバリエーション豊かな生地、男女差のない形。そうしたキモノの魅力が、ファッションの視点から丁寧に紹介されている。

キモノが西洋に伝わったのは、17世紀に日本と貿易していたオランダから。17世紀のキモノ姿を描いたオランダの油絵や、19世紀の西洋画に描かれた女性が着た物と同じキモノの展示が興味深い。パリモードの黎明(れいめい)期である19世紀末から20世紀初めに作られたポール・ポワレらの和風ドレスも。武士のかみしもから紋付きはかまなど、男性のキモノにも触れている。

キモノの世界、過去・今・未来 英ビクトリア&アルバート博物館で企画展

19世紀の西洋絵画に描かれた女性が着たものと同じキモノの展示も

最後の部屋には、日本のキモノ作家の作品やキモノから影響を受けた有名デザイナーの服がそろう。トム・ブラウンの和柄風のメンズスーツに、フリル満載のロリータ風キモノ。歌手ビョークがアルバムの撮影で着たアレキサンダー・マックイーン作のドレスや、クイーンのフレディ・マーキュリーが愛したキモノ。映画「スター・ウォーズ」のオビ=ワン・ケノービ役のキモノ風衣装も飾られている。

キモノの世界、過去・今・未来 英ビクトリア&アルバート博物館で企画展

会場には有名デザイナーのキモノ風の服やキモノ作家の作品が並ぶ

キモノの世界、過去・今・未来 英ビクトリア&アルバート博物館で企画展

ビョークがアルバム撮影で着たドレス(右)やマドンナが着たキモノ風ドレス(中)

この展覧会開催にあたり銘仙のキモノを寄贈した「いせさき銘仙の会」の杉原みち子代表は「庶民の普段着として軽視されてきた銘仙が、歴史ある博物館に取り上げられて夢のよう。キモノが世界中で多面的に取り入れられてきたことがわかり、感動と希望を感じた」と語った。

西洋の服は主に、体の曲線の強調と表面の装飾の変化でファッション性を表現してきた。ジャクソン部長は、平面のキモノは装飾性がユニークなだけでなく、帯などのコーディネートで個性を表現できることを説いたうえで、「性差や年齢を問わず、長く日常的に着る服としてサステイナブルでもある。今後の時代に求められる要素もたくさんある」と話した。

同展をジャクソン部長が解説する動画が、ユーチューブで公開されている。

(編集委員・高橋牧子)

<写真はコリン・ロイ氏撮影>

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