このパンがすごい!

パン、コーヒー、ケーキ、すべてを深掘り。杉窪シェフの新店は「世界基準」/ジュウニブン ベーカリー

2013年、「365日」をオープンさせ、国産小麦をはじめとする上質な素材の個性を生かしたパンで、革命を起こした杉窪章匡シェフ。以来、「365日と日本橋」など息つく暇もなく話題店をオープンさせてきた。

仕事漬けの毎日を送っているのだろうとFacebookを覗(のぞ)けば、ロンドン、メルボルン、コペンハーゲン、パリ……世界を渡り歩いて美食三昧(ざんまい)。東京にいると思えば、1日2時間のウォーキングと日課のコーヒーショップ巡り。

いったいいつパンを作っているのか? 彼は日本のトップを走るパン職人のひとりにもかかわらず、めったなことではパンを作らない(私は数年前一度きり、彼がバゲットを手ごねするのを目撃したが、手つきは誰よりも鮮やかだった)。経営者として、スタッフが楽しく学んで成長できる環境を作る役割に徹し、自らは手を出さない。

むしろ、杉窪シェフは誰よりも真剣にパンを作っているとも言える。世界を股にかけ美食に明け暮れることも、彼のパン作りなのだ。いったいどういうことか? その答えが出たのは、5月12日。三軒茶屋に、2階のカフェと合わせなんと130坪という大型店「ジュウニブン ベーカリー」をオープンさせたのだ。

パン、コーヒー、ケーキ、すべてを深掘り。杉窪シェフの新店は「世界基準」/ジュウニブン ベーカリー

店内風景

ここはどこの国? 天井から吊(つ)り下げられたドライフラワー、木製家具の中にうつくしいパンとケーキ。西海岸か北欧に迷いこんだ気分である。これも世界旅行の成果で、ロンドンの「オゾンコーヒーロースターズ」、コペンハーゲンの「リルベーカリー」などがアイデアソース。花屋が併設されているのは、ロンドンの園芸用品店&カフェ「ピーターシャム・ナーサリーズ」の記憶がベース。

「どこの国に持っていっても通用するパン屋、世界のスタンダードになりうるパンを目指しました」

パン、コーヒー、ケーキ、すべてを深掘り。杉窪シェフの新店は「世界基準」/ジュウニブン ベーカリー

ローズ、クロッカン カシス

詩的なインスピレーションを炸裂(さくれつ)させたのが「ローズ」=バラのパン。深紅のボディーに舞い落ちた花びら数枚。まとわせたフランボワーズジャムとローズの香りの間のうつくしい相性。密度のあるブリオッシュはむっちりとして、しかしあまりのやわらかさゆえに、歯のなすがままとなる。

「クロッカン パッションマンゴー」の元ネタはコペンハーゲンの「108」(世界的なレストラン「noma」系列のビストロ)で出会ったパン。まるでフルーツの化身。目をつぶって食べたら、生のマンゴーとしか思えないビビッドさ、フレッシュさ。ダイス状のクロワッサンはかりかり、内部はベルベットの舌触り。

パン、コーヒー、ケーキ、すべてを深掘り。杉窪シェフの新店は「世界基準」/ジュウニブン ベーカリー

鶏白レバーパテサンド

パテとブロッコリーなどの野菜を合わせた「鶏白レバーパテサンド」。歯がむぎゅっとパンを押し潰す一瞬のタメが、次の瞬間の香りの爆発を準備する。レバーペーストの旨味(うまみ)ときのこの旨味という旨味の二乗が、濃厚なる小麦風味とミルキーさのジェットに乗っかり、果てしない快楽へと突っ込んでいく。

「ジュウニブン ベーカリー」のパンに共通する、むぎゅっとしているのに、やさしくほどける感覚。噛(か)み応えと口溶けのハイブリッドである「むぎゅ2.0」こそ、この新店の真骨頂なのだ。その秘密は湯種。もっちり感、口溶けのよさ、甘さを引きだし、日持ちもよくする。

「世界のパンを食べてると、いまそういう感じの食感が多いです」

パン、コーヒー、ケーキ、すべてを深掘り。杉窪シェフの新店は「世界基準」/ジュウニブン ベーカリー

2階のカフェ「二足歩行 coffee roasters」店内

パンを買ったら、2階に上がって「二足歩行 coffee roasters」でコーヒーも買うべきだ。果実味やナッツ感など各豆の個性がひきだされ、ボディーもしっかりしているのに、後口さわやか、苦味のイガが舌に残らない。だからパンの味わいを邪魔することがないのだ。ハンドドリップはおいしいけど、レギュラーコーヒーは味が落ちる、なんてことも皆無。どれもガチでマジなのだ。

「僕が、ぜんぶがおいしくないといやな人だって知っているでしょう? 僕はぜんぶのジャンルについてのオタク」

インテリア、パン、コーヒー、それにケーキとすべてを深掘り。圧倒的クオリティーに、店に入った瞬間から去るときまで口がぽかんとなってしまう強烈体験をしにいくなら、感染予防に気をつけてぜひどうぞ。

パン、コーヒー、ケーキ、すべてを深掘り。杉窪シェフの新店は「世界基準」/ジュウニブン ベーカリー

店内風景

ジュウニブン ベーカリー
東京都世田谷区三軒茶屋1-30-9三軒茶屋ターミナルビル1階
03-6450-9660
9:00~18:00
不定休
https://www.instagram.com/junibun_bakery/

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    PROFILE

    池田浩明

    佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
    日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
    http://panlabo.jugem.jp/

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