高山都の日々、うつわ。

#24 夏を告げるグラス

#24 夏を告げるグラス

朝、窓を開けると日差しが眩(まぶ)しい。
部屋の空気もムッと暑くて、
ああ、夏が来るんだなあと思う。

長雨の時期も続くから、本格的な夏はまだ先。
それでも梅雨の晴れ間の朝には、
かすかだけれどしっかりと夏の足音が聞こえる。

次の休みには髪を切りに行こうと、思いたつ。
思い切り短いショートカット、異国の少年みたいな感じがいい。
クローゼットの中も整理して、
ふわりと風にそよぐ、軽やかなワンピースを出そう。
毎年、夏の始まりはこんな感じで、
そわそわ、わくわくといろいろな変化が楽しい。

食器棚も例外じゃない。
普段使いの器は変わらないけれど、
この時期に決まって取り出しやすい場所に移すものがある。
沖縄を旅した時に買った、琉球ガラスのグラスたち。

ぽってりとした形が愛らしくて、
でも手で触れるとどこか繊細で華奢(きゃしゃ)な感じがいい。

何を隠そう私は大のビール党で、
夏にはほとんど毎晩ビールで晩酌をする。
グラスで飲んでももちろんおいしいのだけれど、
取っ手のついたジョッキで飲むと、
やっぱり“ビール然”とした佇(たたず)まいになって、
目にもおいしい。

#24 夏を告げるグラス

#24 夏を告げるグラス

小さなじゃがいもを素揚げしただたけの
手作りフライドポテトは、
オイルにローズマリーを入れて、じわじわ揚げる。
ハーブの香りをほんのりまとったポテトは爽やかで
蒸し暑い夏の晩酌にぴったりだ。

簡単でも、ほんの少しの手間や工夫で
ひとりの食卓は心を満たすものになる。

琉球ガラスのジョッキもそれと同じこと。
ビールらしさと器としての美しさ、繊細を兼ね備えたグラスは
食卓にあるだけで心が躍る。
小さな“好き”の中に、幸せがあると教えてくれる。
 
もうひとつ、夏に欠かせない琉球ガラスのグラスがある。
背が高くて、表面にある手吹きガラス特有の凹凸がきれいなもの。
これはもっぱらジュース用で、たっぷり入れられる大きさもいい。

普段はあまり甘いジュースは飲まないけれど、
こと暑い夏はシュワっとした炭酸が恋しい。
そんな時はこのグラスいっぱいに氷を入れて、
木苺(いちご)のジャムやマーマレードをひとさじ。

#24 夏を告げるグラス

#24 夏を告げるグラス

そこに勢いよく炭酸を注ぐと、
ジャムの色が炭酸に乗ってシュワシュワと躍り、
グラスの中で美しいグラデーションを作る。

仕上げにレモンやライムをぎゅっと絞るのもいいし
凍らせておいたベリーをのせてもおいしいし、かわいい。

移り変わる色も好きなので、混ぜずに飲む。
最初は心地いいソーダのシュワシュワに、
凍ったベリーの甘酸っぱさが広がる。

飲み進めるとだんだんとジャムの甘さが増して、
ジュースらしくなってくるのもいい。

一番美しいのは、夏の日差しを受けて、
果実の色がグラスを透過する瞬間。
キラキラと輝いて、いつまでも見ていたくなる。
そんな風景を想像すると、
強い夏の日差しも悪くないと思えてくるから不思議。

着るものも、口に入れるものも、自分自身も
季節の移ろいには正直でいるのがきっと一番美しい。
春と夏の間に、そんなことを考えている。

#24 夏を告げるグラス

今日のうつわ

工房てとてとのグラス

沖縄で手作りの窯を使って手吹きガラスを作っている「工房てとてと」。琉球ガラスらしいおおらかで優しいフォルムだけれど、口に当たる縁の部分やジョッキの持ち手は華奢で繊細。その絶妙なバランスがたまらなく好き。光の加減によって部分的に青っぽくも緑っぽくも見えて、ああ、今日は日差しが強いなとか柔らかいなとか、普段気がつかない光の変化を感じられるのもすてきです。

    ◇

写真 相馬ミナ 構成 小林百合子

PROFILE

高山都

モデル 1982年、大阪府生まれ。モデルやドラマ、舞台の出演、ラジオ番組のパーソナリティなど幅広い分野で活躍。フルマラソンを3時間台で完走するなどアクティブな一面も。最近は料理の分野でも注目を集め、2作目となる著書『高山都の美 食 姿2』では、背伸びせずに作る家ごはんレシピを提案。その自然体なライフスタイルが同世代の女性の共感を呼んでいる。

高山都の日々、うつわ。

丁寧に自分らしく過ごすのが好きだというモデル・俳優の高山都さん。日々のうつわ選びを通して、自分の心地良いと思う暮らし方、日々の忙しさの中で、心豊かに生きるための工夫や発見など、高山さんの何げない日常を紡ぐ連載コラム。

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