料理家・冷水希三子の何食べたい?

干物を使って手軽に、アジのパエリア

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくれるという夢の連載。今回はアジの干物を使って自宅で簡単に作れるパエリアを教えていただきます。

     ◇
 
―― 冷水先生、こんにちは。梅雨とはいえ、徐々に夏の足音が聞こえてきて、ワクワクしますね。

冷水 食材も夏らしくなってきて、お料理も楽しいです。

―― 本当に、野菜もお魚もピカピカ光って見えます!

冷水 今日はぜひ夏の素材を使ったメニューを紹介したいですね。

―― 読者のみなさんからは、旬を迎えてお手頃価格になったアジを使ったお料理を知りたいというリクエストが多いです。たしかにこの時期のアジは大きくてお値打ち価格ですよね~。

冷水 おいしくてお財布に優しい。旬の食材は素晴らしいですね。ではアジを使ったパエリアなんてどうですか?

―― パ、パエリアですか!? 私の中では生涯、家で作ることはなさそうな料理のひとつです(笑)

干物を使って手軽に、アジのパエリア

ドライトマトは水で戻し、戻し汁もとっておきましょう。10~15分程度で水に色が出てきますので、こんな状態になればOKです

冷水 そうなんですか!? パエリアは思っているより簡単に作れますよ~。でもハードルが高いと思う方も多いかもしれないので、今回はアジはアジでも干物を使ったパエリアなんてどうですか? 生魚を処理する手間がないので、少しは気軽に作ってもらえるかしら?

―― 干物でパエリア! なんだか面白そうです。たしかにパエリア初挑戦で、さらにお魚をさばくとなると私なんかは心が折れちゃいます。ぜひ干物バージョンでお願いします。

冷水 干物は元から塩気がしっかりついているので下味をつける手間もないですし、何よりお魚の旨味(うまみ)が凝縮していますから、お米にもそれが移ってすごくおいしく仕上がるんですよ。旬の時期は干物も安いですからね。

―― ありがとう、干物ちゃん!!

冷水 じゃあまずはアサリの砂抜きをしましょう。大切なのは塩分濃度で、分量の3%くらいの塩を入れた水を用意してください。塩水はアサリがひたひたになるくらい。あんまり多いと砂を吐き出してくれないので。

―― 波打ち際にいるような感じを演出するんですかね(笑)。

冷水 あとは砂抜き中に勢いよく水を吐くことがあるので、蓋(ふた)をするなどしておくと安心ですよ。洗って殻の汚れやくさみも落としましょう。

―― 新聞紙をそっとかぶせておきますね!

 

干物を使って手軽に、アジのパエリア

アジの干物は皮目からこんがりと焼きます。焼き網に薄く油を塗っておくと皮がこびりつきづらくなります

冷水 次にドライトマトを5mm角くらいに切って、水で戻しておきます。硬いのでキッチンバサミでカットするといいですよ。

―― 今回はフレッシュなミニトマトも入りますけど、ドライトマトも必要なんですか?

冷水 ミニトマトは具材として使うのですが、ドライトマトはだし、旨味用です。戻した後の水も旨味たっぷりなので、捨てずに使いましょうね。

―― 次はいよいよ干物の登場ですね。お米と一緒に炊くんじゃなくて、まず焼くんですか?

冷水 はい、こんがりと焼いた方が香ばしいですし、旨味も出ますからね。コンロに焼き網を置いて直火焼きしてもいいですし、魚焼グリルでもOKです。どちらもない場合はフライパンで焼いてもいいですよ。

―― わ~、香ばしい香りが漂ってきました! 

干物を使って手軽に、アジのパエリア

お米を入れたタイミングで塩をふっておくと、全体に塩気が行き渡ります。今回は満願寺唐辛子を香りづけに使いましたが、手に入らない場合はししとうでもいいでしょう

冷水 皮目を下にして、最初は強火で皮をこんがりと焼いて、その後は中弱火にするとふっくらと焼き上がります。

―― パサパサになると残念ですものね……。火加減は要チェックですね。

冷水 お魚が焼けたら、フライパンでにんにくと玉ねぎを弱火でじっくり炒めます。玉ねぎを味見して甘みが出てきたら生米と塩を加えて米の表面が透き通るまで炒めましょう。

―― だんだん米が透明になってきました! なんだか新鮮な光景です~。

冷水 満願寺唐辛子(ししとうでも可)を加えて少し炒めたら、ドライトマトの戻し汁を加えて少し火を強めます。ここに焼いたアジを丸ごと、アサリとミニトマトも加えます。

―― あ、沸いてきました! ここからどうしたら……?

冷水 慌てなくて大丈夫、このまま煮込んでいきましょう。蓋をするサインは水分が減って、米肌が見えてくる状態です。

干物を使って手軽に、アジのパエリア

フライパンに具材を全て入れたら中火強にして煮込みます。水分が減って米肌が見えてきたら弱火にして「炊き」の工程へ

―― そ、そろそろですかね……。フライパンの底が焦げてしまわないか心配です。

冷水 ここからは蓋をして、炊く工程です。だいたい10分程度です。その後は火を消して、蓋をしたまま10分ほど蒸らしてください。

―― は~、いい香りですね。早く食べたい!

冷水 そろそろいい感じだと思います。食べる前にアジを取り出して、身をほぐしてから取り分けると食べやすいですよ。

―― あ、ちょっと待って! まずは丸ごとのアジが乗っている状態で写真を……。

冷水 あ、それも大切ですね(笑)。おもてなし料理として出す場合は、取り分ける前にフライパンの状態でいったん食卓に出すといいかもしれませんね。

―― 絶対盛り上がります! 

冷水 レモンを別添えで出して、お好みでふりかけながら食べてもらうスタイルもおすすめです。

―― アジの風味がご飯に染み渡って、旨味が半端じゃないですね、これは! 干物の塩気もいいアクセントになって、いくらでも食べられます。

冷水 アサリやドライトマトからもいいおだしが出ているので、それをお米が全部吸ってくれているんです。手軽でもすごく満足感があるでしょう? アジの干物は身近な食材なので、ぜひ気軽に作ってみてください。

今日のレシピ

アジの干物のパエリア

◎材料(2人分)直径26cmパエリアパン

アジの干物 1枚
あさり 250g
米 1合
ドライトマト 6g
水 240ml
ミニトマト 10個
満願寺唐辛子 2本
*ししとうなら8本くらい
玉ねぎ 1/4個
にんにく 1片
EXVオリーブオイル 大さじ2
塩 小さじ2/3
レモン 適量

◎作り方

 アサリは分量に対して3%の塩を入れた塩水(アサリがひたひたになるくらい)に漬けて砂抜きし、洗っておく。

 ドライトマトは5mm角に切って水に入れておく。

 ミニトマトは横に半分に切る。満願寺唐辛子(ししとうでも可)は1~2cmのぶつ切り。玉ねぎはみじん切りにする。にんにくは潰して芯を取っておく。

 アジは焼き網で直火で焼くか、魚焼きグリルで焼く(フライパンでも可)。

 パエリアパン(もしくはフライパン)にオリーブオイルとにんにく、玉ねぎを入れて弱火で炒め、甘みが出てきたら米(研がないでOK)を加えて表面が透き通るまで炒める。

 満願寺唐辛子と塩を加えて炒め、のドライトマトを戻した水を加え、中火強にしてアジとアサリ、ミニトマトをのせる。沸いたらしばらく煮込み、米肌が見えてきたらアルミ箔(はく)や蓋で密閉し、弱火にする。9~10分炊いたら火を消して10分蒸らす。

 食べるときに好みでレモンを絞る。あれば青唐辛子の酢漬けをかじりながら食べるのもおいしい。
 

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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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    冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

    干物を使って手軽に、アジのパエリア

    料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

    PROFILE

    • 小林百合子

      編集者
      1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

    • 関めぐみ(写真)

      写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

    やさしい甘みを楽しむ、パプリカとリコッタチーズのサラダ

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