野村友里×UA 暮らしの音

野村友里さん、外出自粛期間に思った「私はどんな人が好きなんだろう?」

「eatrip」を主宰する料理人の野村友里さんと、現在カナダで暮らす歌手UAさんの往復書簡「暮らしの音」。なぜ、かつてUAさんは「チェチェィン子」と呼ばれたのか……? その理由を、UAさんが明かしてくれたお手紙に続き、今回は友里さんがつづります。

野村友里さん、外出自粛期間に思った「私はどんな人が好きなんだろう?」

eatrip soil のガーデン

>>UAさんの手紙から続く

うーこへ

チェチェィン子、待ってました!最終章。

今度会った時はやっぱり、“Chain of Fools”リクエストしてしまいそう。

そして、そう、この手紙のやりとりをはじめて早3年!!
あっという間にも感じるこの期間に、こうやって予期せぬことがやってくるし、
話題も本当に尽きない。

表現者としてはより求められていると思うけど、
何より、この時代を一緒に生きてるということは、感慨深いものがあるわ、本当に。
目をそらさずにきちっと向き合っていかないと。

野村友里さん、外出自粛期間に思った「私はどんな人が好きなんだろう?」

eatrip soil のガーデンより。ラズベリーの実、セルフィーユの種、ディルの種。種の後は花。セージ、コリアンダー、パセリ、フェンネルの花

突然だけど、「私ってどんな人が好きなんだろう?」って、ソファで寝っころびながら思ったのよ。
自粛中の人影少ない静かな街を感じつつも、このうえなく伸び伸びと広がる青空を見ながらね。

このコロナによる自粛期間。
私は全くもってstay home の日々でなかった。
ライフラインである食を扱うお店を営んでいること、そしてレストラン。
休業せざるを得なくとも、こういう時にできることをと、 take out や配達をした。
温かい手触りを感じる交流が生まれ、
なんともいえないクリアな時間だったのだけど、
一方で私は、一番の苦手な数字をパチパチ考えたりしなきゃいけない。
脳みそはショートしてしまい、すぐに降参。
はっきりとしたことが見えないなかで 、“自主” というなんともあいまいな号令のもと
判断につぐ判断の中でふとね、思ったわけよ。

そしたらね、
「世の中を面白くしてくれる人が大好きだ」って、私の脳みそからすぐ返答がきた。

なるほどね。
だから子どもがとても近いんだと、自分で納得。
予測不可能だし、発想も自由だし、大きい声出すし、出し惜しみないし、いっぱい笑うし、表情と感情が直結しているし、いるだけで面白い。

野村友里さん、外出自粛期間に思った「私はどんな人が好きなんだろう?」

食べられる花のビスケット

そしたら、良きお年寄りも大好きだなーって思ったの。
年輪が刻まれている柔和な顔を見てホッとして安心する。

でも、尖(とが)っている若者も好きだなぁと思った。
おいおいおいっていうぐらい尖ってても、生ききってるね〜、
多様性なんだからいろいろな熱量あげて面白くしていってー、
トライアンドエラー、確率なんて数字は無視してーって思いながら。

あっ、でも私の周りも見渡すと、年齢は全くもって関係ないね。
私は多分そうやって世の中を面白くしてくれる人が好きなんだな〜って思う。
歪(いびつ)なんだけど無我夢中でのめり込んでいたりもがいていたりする人に、
猛烈に愛おしさを感じてしまう。

えっ
自分? 自分は面白いかって?
そういう人を垣根なしに後押し、肯定することが楽しいと思っている。
料理を作る=場ということが、その思考とつながっていることになっている気がしていて。
私自身は面白いかどうかわからないな。。。

野村友里さん、外出自粛期間に思った「私はどんな人が好きなんだろう?」

うーこも大好きなルバーブ。前にたんまり手作りジャムくれたわよね! これは私が一番好きなパイ

パートナーの話でいうと、うーこは前に、
「これからは生きる力がある男性がいいよ。都会の中でなくたって自然の中でたくましく生き抜く力がある人がねっ」って言ってた言葉が、私の中にとても残ってる。
すてきな人の定義ってどんどんどんどん、年とともにではなくて、時代とともに変わってゆくのかしらねぇ。

野村友里さん、外出自粛期間に思った「私はどんな人が好きなんだろう?」

シワシワに枯れる野菜。Ome Farmのビーツ、古来種の赤カブ、堆肥(たいひ)を研究している橋本力男先生から頂いたゴボウ

自粛期間は終わっていっても、コロナは終わらない。
もう少し時間が経ってからでないと、一連のことを振り返って言葉にすることはできないけど、こうしている間も“種の話”はずっと頭の中をグルグルしている。

F1(交配種)と古来種の野菜の、種の話。
時代に合った商品価値としての野菜と、
その土地にあった生き方を何百年と変化させながら生き抜いてきた、種子を残すことを目的とした古来種の野菜。

もちろん安くておいしいに越したことはないけど
単純にこの言葉を追っていくと、人の生き方にも重ねてしまったりしてね。

だからね、時代はまたどんな人を求めはじめるのかなと思ったのかもしれないね。うーこ。

友里

    ◇

往復書簡「暮らしの音」へのご感想をお寄せください! UAさんと野村友里さんへの質問やメッセージなども、こちらの応募フォームから受け付けています。

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  • PROFILE

    • UA

      1972年大阪生まれ。母方の故郷は奄美大島。1995年デビュー。1996年発表のシングル『情熱』が大ヒット。以降、浅井健一(元ブランキー・ジェット・シティ)らと組んだ「AJICO」、ジャズサックスプレーヤー菊地成孔とのコラボ、映画主演、NHK教育テレビでの歌うお姉さんなど、活動は多岐にわたる。2016年、7年ぶりとなるオリジナルアルバム『JaPo(ヤポ)』をリリース。ライブ、フェス、楽曲制作と精力的に活動している。また、2005年より都会を離れ、田舎で農的暮らしを実践中。現在はカナダに居住。4人の母でもある。α-STATION(FM京都)の番組「FLAG RADIO」にレギュラー出演中。2020年6月21日、デビュー25年を迎えた。
      http://www.uauaua.jp/

    • 野村友里

      料理人、「eatrip」を主宰。おもてなし教室を開く、母・野村紘子さんの影響を受けて料理の道に。主な活動に、レセプションパーティーなどのケータリングフードの演出、料理教室、雑誌の連載、ラジオ番組など。2009年、初の監督作品『eatrip』を公開。11年、「シェ・パニース」のシェフたちとともに、参加型の食とアートのイベント「OPEN harvest」を開催。その経験を経て日本のシェフたちとともに「nomadic kitchen」プロジェクトをスタート。12年、東京・原宿に「restaurant eatrip」をオープン、19年、表参道・GYREに「eatrip soil」をオープン。著書に『eatlip gift』『春夏秋冬 おいしい手帖』(マガジンハウス)、『Tokyo Eatrip』(講談社)、共著に『TASTY OF LIFE』(青幻舎)がある。
      https://www.instagram.com/eatripjournal/

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