このパンがすごい!

肉好きも、アレルギーの人も置き去りにしない。ビーガン専門店のプライド/Universal Bakes and Cafe

5月22日、世田谷にオープンした「Universal Bakes and Cafe(ユニバーサルベイクスアンドカフェ)」。ベンチに座って、クロワッサンを口にする。表面のかりかり感と、心地よくしめった中身。そこからとろける、軽やかなミルキーさと、ナッツの風味……ナッツ!? なぜクロワッサンからナッツの香りが? まぎれもないクロワッサンの姿形ゆえに忘れかけていたけれど、これはバターを使わない、植物性材料100%のクロワッサンなのだ。

この店のコンセプトは100%ビーガンベーカリー。肉、魚、そして乳製品や卵も含む動物性食品を一切使わない。だが、ビーガン(菜食主義者)専門といった雰囲気はまったくない。植物性食材のみ、という縛りをものともせず、センスにおいてもクオリティーにおいても、ベーカリー激戦区・世田谷で、独自の輝きを放っているではないか。

肉好きも、アレルギーの人も置き去りにしない。ビーガン専門店のプライド/Universal Bakes and Cafe

バゲット

オーナーの大皿彩子さんにこの店を開いた思いを尋ねた。

「ユニバーサルデザイン(年齢、性別、国籍、能力のちがいを超え、できるだけ多くの人が利用できる設計)という言葉がありますよね。誰が食べてもおいしいパンを目指しています。ビーガンやアレルギーの人はもちろん、お肉、バター、卵が大好きな人も置き去りにしない。『バターの代わりに○○を使おう』という発想ではおいしいものはできないと思うんです。『世の中にあるすべての植物性素材を使っておいしいものを作ろうぜ!』というのが、私たちの作戦であり、プライドです」

「VEGANクロワッサン」はバターではなく、大豆バターで折りこむ。さらにアーモンドプードルとマカダミアペーストを加えてコクを出し、ナッツの風味に合う全粒粉を生地にブレンド。クロワッサンを食べられないときのための代替品ではない、おいしさの新しい価値観が生まれたのだ。

肉好きも、アレルギーの人も置き去りにしない。ビーガン専門店のプライド/Universal Bakes and Cafe

VEGANシナモンロール

ビーガンだからこそ、飛び抜けられる。そんな可能性を感じた「VEGANシナモンロール」。シナモンロールは、かりかり派かしっとり派か、の争いに和平協定を成立させるだろう。表面のかりかりと内部のしっとりの両立。そのコントラストはあまりにセクシー。シナモンは鮮烈に香り立つ。

「バターが入っていないから、シナモンの風味が引き立ちます」と、ベイカーの丸山雄三さん。加水を多めにし、コンベクションオーブンで焼きあげることで、前述の食感を作りあげたのは、丸山さんのテクニックがあってこそ。

「プラティーヌ(九州産の薄力粉)をブレンドすることで、『さくみ』(歯切れのよさ)を出しています。米油とオーガニックショートニングを使って徹底的にグルテンを切りました(グルテンを作らなければやわらかいパンができる)」

この秀逸なる生地は総菜パンにも使用される。「サワークリームオニオン」では、パン、ベイクドオニオン、サワークリームの三角関係が甘さをネクストレベルへ押し上げる。サワークリームは乳製品でしょ? と思いきや、自家製の植物性由来のもの。豆乳やメープルシロップ、米酢などを混ぜ合わせ、とろけ去りながらさわやかさをつれてくる。このクリームがあれば、もうマヨネーズはいらない、とさえ思う。

肉好きも、アレルギーの人も置き去りにしない。ビーガン専門店のプライド/Universal Bakes and Cafe

VEGANメロンパン

もうひとつ同じ生地の「VEGANメロンパン」は取扱注意。メロン皮(クッキー)は持っただけで割れ落ちるほど薄く、中身は簡単にへこむほどやわらかい。バターが必須のメロン皮にココナツを配合。細かに崩壊したクッキーの破片と、綿あめのようにとろける生地が口の中で混ざり合うとき、あの「ココナッツサブレ」みたいな風味が、意表を突くように出現する。

「乳製品アレルギーがあってメロンパンを食べたことがないお子さんがいらっしゃいました。お母さんに『今日はなんでも食べていいんだよ』って言われて、目を輝かせて、大よろこびで選んでくれた。そのとき、パン屋をはじめてよかったって思いました」と大皿さん。

制限は、不自由ではない。むしろ新しい価値観と、誰でもアクセスできる、という意味での「自由」への扉なのだ。

肉好きも、アレルギーの人も置き去りにしない。ビーガン専門店のプライド/Universal Bakes and Cafe

外観

Universal Bakes and Cafe
東京都世田谷区代田5-9-15
03-6335-4972
8:30~18:00
月・火曜休
https://www.instagram.com/universalbakes_tokyo/

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    PROFILE

    池田浩明

    佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
    日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
    http://panlabo.jugem.jp/

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