パリの外国ごはん ふたたび。

「公園でチキン」は最高! テイクアウトにシフトしたアメリカ料理店/Gumbo Yaya

連載「パリの外国ごはん」では三つのシリーズを順番に、2週に1回配信しています。
《パリの外国ごはん》は、フードライター・川村明子さんと料理家・室田万央里さんが、暮らしながらパリを旅する外国料理レストラン探訪記。
《パリの外国ごはん そのあとで。》では、室田さんが店の一品を再現。オリジナルレシピをご紹介します。
この《パリの外国ごはん ふたたび。》は川村さんによる、心に残るレストランの再訪記です。

6月に入り、3カ月近く顔をあわせることのなかった、この連載の相方である万央里ちゃんと「会って話したいね」ということになった。ただ、その時点でパリのレストランやカフェは店内に客を案内しての営業が許可されておらず(6月15日より許可)、テラス席での接客のみが可能な状態だった。おかげでテラス席は盛況だ。でも全ての店にテラス席を設けるスペースがあるわけではないし、この連載で紹介した店にいたってはテラスのある店は、ほとんどない。

そんな状況の打開策として、サイト上でオンライン注文&決済し、店に受け取りに行く“クリック&コレクト”を展開する店が続々と現れた。

季節も最適だし「テイクアウトして公園ランチはどお?」と、昨年の夏のバカンス明けに行ったガンボ・ヤヤ(Gumbo Yaya)の名を挙げると、「コールスロー食べたい」と返事が来た。“サザン・キッチン“とうたうアメリカ料理の店だ。そうして再会は、フライドチキンで果たすことになった。

「ふたたび。」のシリーズを始めてから、彼女とかつて食事に行った店を一緒に再訪するのは初めてだ。久しぶりに会えることもうれしかった。それに加え、ガンボ・ヤヤへは私の家からメトロを4本乗り継がなければならず、その遠出が、少しはしゃいだ気持ちにさせた。

メトロ2番線のコロネル・ファビアン(Colonel Fabien)駅から出て、放射状に7本の道路が交わるロータリー交差点から10メートルほど入ったところにガンボ・ヤヤは、ある。交通量の少なくない2本の道路を渡すように設けられた、ちょっとした広場のような歩道に面していて、その地の利を生かし、普段は店内に並べているテーブルを外に出してしっかり臨時テラス席ができていた。

「公園でチキン」は最高! テイクアウトにシフトしたアメリカ料理店/Gumbo Yaya

当初予定していた日は雨の予報で、私たちは日程をずらした。その間に大統領によるテレビ演説が行われ、パリにおけるレストランの店内での営業は解禁された。

その通告はいささか唐突で、誰もが想定していたより1週間早かった(演説の翌日からOKと告げられた)。テイクアウトに切り替え、店内に客を入れない形で営業を再開させていた店は、その態勢でのメニューを考え、仕込みをして、シフトも組んでいる。突然、店内営業に切り替えるのは難しいのだろう。解禁後も数日は、店内に客を入れていない店が大半だった。

ガンボ・ヤヤも例に漏れず、店内に客は入れずに、入り口にテーブルの一つを置き、注文カウンターにしていた。窓に貼られた、テイクアウト用のセットが書かれたイラスト付きのメニューが目を引く。ソースには天使の羽が生え、シェフのキャップはSiDESと白抜きだ。

「公園でチキン」は最高! テイクアウトにシフトしたアメリカ料理店/Gumbo Yaya

私は、フライドチキンなら胸肉(フィレ肉)派だ。前回の初訪問では、看板メニューと思われる“フェイマス・チキン&ワッフル”なる一品を取った。それはモモ肉だった。もちろんそれもおいしかったし大満足だったのだが、斜め前の席にいた女性がフィレ肉のプレートを頼んでいて、次に来るときはフィレ肉だ!と心のうちで固く決めていたのだ。

ところが、通常メニューには書かれていた“フィレ肉&ワッフル” “フィレ肉プレート”がテイクアウトメニューには見当たらない。

何度も見回したけれど、残念ながら、なかった。ただ、サンドイッチにはフィレ肉が使われているらしい。あと、もしエクストラで一つ追加するならば、フィレ肉もあるようだ。

私の頭の中に、サンドイッチの選択肢はなかった。なぜなら、前回「夜にしか出さない」と言われて逃したサイドの一品マカロニ&チーズが、このテイクアウトメニューには書かれていたからだ。ぜひ食べてみたい。それにやっぱりポテトも食べたい。

考えた末、チキン2ピースにサイドを一つ合わせる“ヤヤ・チキンプレート”に決め、それにはポテトを付けることにして、さらにマカロニ&チーズを頼むことにした。万央里ちゃんは、同じくチキンプレートで、コールスローとの組み合わせにしていた。

「公園でチキン」は最高! テイクアウトにシフトしたアメリカ料理店/Gumbo Yaya

前回も、結構な待ち時間だったが、今回も、やはり待った。ということは、作る時間を短縮するような措置は取っていないのだな、と思う。もし、クリック&コレクトで注文したら、出来上がりの頃に取りに来ることもできるだろう。待ちたくなかったら、そうすればいい。でも、前と変わらず、待ち時間があることを好ましく思った。これが、注文してそう待たずに箱に詰められたチキンを渡されたなら「いまはテイクアウトだし、揚げ置きしてるのかもね」なんて話していたかもしれない。

20分くらい待って、名前を呼ばれ、袋を受け取り、ビュット・ショーモン公園へ向かった。店からは歩いて10分ほどだ。

敷物がわりの布を持っていたから、ベンチではなく、芝生に座って食べることにした。ボックスを開けると、店で皿に盛られているよりもボリュームがあるように感じた。ポテトも、日本だったらスタンダードな1人前になるだろうマカロニ&チーズも、実に気前がいい。

さっそく、チキンにかぶりつく。本当に、ジューシーなんだよなぁ。「この柔らかさは、やっぱり蒸してるのかなぁ?」。おそらく前に食べた時にもつぶやいたことを口にすると、「うーん、そういう柔らかさだよねぇ」と万央里ちゃんも言った。

衣にしっかり味がついていて、記憶の中の味と比べてスパイシーだった。パプリカの香りを感じたが、チリパウダーも少し入っているのかもしれない。それに食欲を刺激されて、ポテトもどんどん食べ進んだ。ポテトの太さも、好みだ。塩気も強すぎず、ちょうどいい。

自宅からは遠いけれど、「また食べたくなっちゃうよなぁ、これは」と思いながら食べた。

「公園でチキン」は最高! テイクアウトにシフトしたアメリカ料理店/Gumbo Yaya

お初のマカロニ&チーズは、チーズソースの濃さが好きな按配(あんばい)だった。鼻にチーズの風味が抜けるほどに濃いと、途端におなかいっぱいになってしまう。そうじゃなかった。たまに、ポテトにチーズソースを絡めた。好きなのだ、この食べ方。

そして、公園でピクニックのこのスタイルは、最高だった。

ひそかに、サイドメニューにあったコーンブレッドが気になっている。デザートのピーカン・パイも。また行かないと。

Gumbo Yaya

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    PROFILE

    川村明子

    東京生まれ。大学卒業後、1998年よりフランス在住。ル・コルドン・ブルー・パリにて製菓・料理課程を修了後、フランスおよびパリの食を軸に活動を開始。パリで活躍する日本人シェフのドキュメンタリー番組『お皿にのっていない時間』を手掛けたほか、著書に『パリのビストロ手帖』『パリのパン屋さん』(新潮社)、『パリ発 サラダでごはん』(ポプラ社)、『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス)。
    現在は、雑誌での連載をはじめnoteやPodcast「今日のおいしい」でも、パリから食や暮らしにまつわるストーリーを発信している。

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