高山都の日々、うつわ。

#25 引き算の美学。

#25 引き算の美学。

仲間が集まるごはん会。
指折り数えて週末を待つのは楽しい。
ああ、待ちきれないなと思ったときは
数日前に台所に立つ。

おいしそうな豚肩ロースの塊肉。
これがごはん会の主役だ。

とっておきの塩をお肉の表面に
ていねいにすり込んで、
ぴったりとラップで密閉して冷蔵庫へ。
あとは「待つ」時間がお肉を柔らかく、おいしくしてくれる。

3日か4日後、ごはん会当日の昼にお肉を取り出して
長ネギとしょうがを入れたたっぷりの湯で1時間ほどゆでる。
薬味のいい香りが台所に満ちて、とてもいい気分。

その間にキムチや大葉を盛り付け、
母直伝のコチュジャンベースのタレも作る。
あとはサンチュを水につけてパリッとさせておけばいい。

じっくりとゆでた豚肉は、粗熱が取れてから薄くスライス。
ほんのりとしたバラ色で、とてもきれい。
程よく脂が抜けて、さっぱりと食べられるゆで豚の完成だ。

#25 引き算の美学。

#25 引き算の美学。

韓国料理では「ポッサム」というこのゆで豚。
サンチュにキムチや薬味、甘辛いタレを一緒に包んで食べる。
塩をして数日寝かせた豚肉は柔らかくて、うまみたっぷり。
焼き肉よりもずっと軽やかだから、いくらでも食べられてしまう。

みんなで一緒に包みながら食べるのも楽しくて、
ここ数年、夏のごはん会には欠かせない料理になっている。

仲間と食べるときは大皿に盛り付けて食べるのだけれど、
少し残ったお肉で、「ひとりポッサム」をするのも楽しい。

そんなときは細長いプレートに
サンチュも大葉もキムチ、タレも一緒にのせて小さなワンプレートに。
ひとりの食卓がパッと華やかになって、気分も明るくなる。

もうひとつのお楽しみは、
豚をゆでたスープで作る「おうち麺」。

お肉のうまみと薬味の香りが移ったスープは
さっぱりしていても奥ゆきのある味で
少し塩を加えるだけで
うどんでも中華麺でもよく合う。

#25 引き算の美学。

#25 引き算の美学。

「滋味深い」という言葉がぴったりで、
本当においしいスープというのは、
肉や野菜のおいしさがきちんと入っていれば
過剰な味付けなんていらないんだということも。

ただゆでる。
シンプルで簡単なことだけれど、
その工程には長い時間がかかっていて、
その時間が素材からいらないものを取り除いて、
大切なものをより輝かせてくれる。
それって、どんなことでもそうだなと思う。

たくさん加えて、盛って、足し算するのは簡単。
でも、そうやって作られたものは
ときにちょっと重たくて、
本当に美しいものを隠してしまう。

そんなときは潔く「引き算」するのがいい。
何が大切で、そうではないのか。
じっくり、ていねいに考える。

そういう作業を繰り返しているうちに
飾っていたものが落ちて、核となるものだけが残る。
料理もそうだし、おしゃれだって生き方だって
そういうものなんじゃないかと最近思う。

いつものポッサムをコトコトとゆでている間に考えたこと。
時間のある昼下がり、
ゆったり料理を作る時間は
ときに大切なことを教えてくれるから、面白い。

#25 引き算の美学。

今日のうつわ

3RD CERAMICSの長皿

岐阜県の多治見市に拠点を置く3RD CERAMICSの長皿は、淡い緑の釉薬(ゆうやく)が奇麗でとても気に入っている器のひとつ。手作業ならではの釉薬のニュアンスがすてきで、ちょっとした前菜を盛り付けてもさまになります。ひとりポッサムのときはこの器が欠かせなくて、お肉とキムチ、大葉、サンチュ、タレを一緒に盛り付けると、彩りよく、小さなパーティーみたいな雰囲気になって楽しいんです。

     ◇

写真 相馬ミナ 構成 小林百合子

PROFILE

高山都

モデル。1982年、大阪府生まれ。モデルやドラマ、舞台の出演、ラジオ番組のパーソナリティなど幅広い分野で活躍。フルマラソンを3時間台で完走するなどアクティブな一面も。最近は料理の分野でも注目を集め、2作目となる著書『高山都の美 食 姿2』では、背伸びせずに作る家ごはんレシピを提案。その自然体なライフスタイルが同世代の女性の共感を呼んでいる。

高山都の日々、うつわ。

丁寧に自分らしく過ごすのが好きだというモデル・俳優の高山都さん。日々のうつわ選びを通して、自分の心地良いと思う暮らし方、日々の忙しさの中で、心豊かに生きるための工夫や発見など、高山さんの何げない日常を紡ぐ連載コラム。

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#24 夏を告げるグラス

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#26 大人になるよろこび。

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