料理家・冷水希三子の何食べたい?

おうちでビストロ気分。桃とマッシュルームのポテトピュレ

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回は桃のクランブルに続き、旬の桃を使ったお料理。おもてなしにもぴったりの美しい前菜をご紹介します。

     ◇

―― 冷水先生、こんにちは。いよいよ夏の足音が間近に聞こえてきましたね。

冷水 やっと梅雨が明けそうですね~。長かった!

―― これからどんどん夏の食材がおいしい季節になりますね。

冷水 長雨の影響が心配ですが……。とにかく晴れやかな気持ちで今日もお料理しましょう!

―― さて、前回に引き続き桃を使ったお料理ですね。スイーツではなくて前菜を教えていただけるとか?

冷水 はい! 桃はサラダや冷製パスタなどに使ってもとてもおいしいのですが、今回はちょっと趣向を変えてポテトピュレに使いたいと思います。

―― ピュ、ピュ、ピュレ……!?

おうちでビストロ気分。桃とマッシュルームのポテトピュレ

じゃがいもは皮をむいて、1.5cmほどの厚さにスライスして茹(ゆ)でます。煮崩れしないように気をつけてくださいね

冷水 そう、ピュレ、です。

―― 我が家の食卓には一生登場しないであろうワードです。ピュレってフランス料理で出てくる、トロ~ッとしたやつですよね? 自宅であんな上品なものが作れるんですか!?

冷水 コツさえつかめば簡単ですよ。マッシュポテトのゆるいバージョンだと思えばハードルが少し下がりますか?

―― う~ん、ちょっと作り方が想像できないので……。でも響きがすてきだし、おもてなしにも使えそうなのでぜひ挑戦してみたいです!

冷水 はい、じゃあまずはじゃがいもです。皮をむいてスライスしたじゃがいもを塩を入れた湯で茹でていきます。ポイントはぶくぶくしない程度の火加減で茹でることです。

―― 強火で一気に茹でちゃダメなんですか?

冷水 あんまり強火で茹でるとじゃがいもが煮崩れてしまって、水っぽくなってしまうんです。

―― なるほど~。じゃがいもの甘さや風味を楽しむためには水分は大敵ということですね。

おうちでビストロ気分。桃とマッシュルームのポテトピュレ

裏ごしはザルやふるいザルを使って。熱々の状態じゃないと奇麗に裏ごしできないので、頑張りましょう。ミキサーにかけてもいいです

冷水 茹で上がったらじゃがいもを取り出して、裏ごししていきます。このときもじゃがいもについた湯を切ってから裏ごししましょうね。トングで持ち上げて、さっと振る程度で水分が落ちますから。

―― 裏ごしに使うのは……ザルですか?

冷水 私はふるいザルを裏返して使っています。もちろん普通のザルでもいいですよ。わざわざ裏ごし器を買う必要はありません。

―― しゃもじでじゃがいもを押し付けるようにしていくんですね。湯気がすごいですけど、これってじゃがいもが冷めてから裏ごししちゃダメなんですか?

冷水 じゃがいもは冷めると固くなってしまうので、冷めてからだと奇麗に裏ごしできないんです。ちょっと熱いですが、頑張ってください~。裏ごしが面倒な方はミキサーを使ってもいいですよ。

おうちでビストロ気分。桃とマッシュルームのポテトピュレ

裏ごししたじゃがいもを伸ばすための牛乳は温めてから使いましょう。冷たいままだとじゃがいものでんぷん質が固まって、滑らかなピュレになりません

―― 料理はときに忍耐……ですね!(笑)

冷水 裏ごしができたら、じゃがいもを茹でた鍋に戻し入れて、油を入れずに中弱火にかけます。こうやってさらに水分を飛ばしていくんです。

―― 親の敵のように水分を飛ばしますね(笑)。

冷水 ふふふ(笑)。水分が飛んだら、冷蔵庫で冷やしておいたバターを小さく切って、じゃがいもに混ぜていきます。

―― クランブルの時も冷やしたバターを使いましたね。今回も冷やしておくのはマストなんですか?

冷水 はい、じゃがいもにしっかりとバターの風味を入れ込みたいので、バターが溶ける前に「練り込む」というイメージです。

―― 次に加える牛乳は逆に温めたものを使うんですね。

冷水 じゃがいもは冷えるとでんぷん質が固まってしまうので、ここは温かい牛乳を使ってくださいね。

おうちでビストロ気分。桃とマッシュルームのポテトピュレ

ピュレ→スライスした桃→スライスした生マッシュルーム→生ハムの順に盛り付け。仕上げのEXVオリーブオイルはぜひ風味のいいものを使ってください

―― すべての工程に意味があるんですね……納得です! ところでこの牛乳はいつまで加え続ければいいんでしょう? やめ時がわかりません……。

冷水 少しずつ加えては混ぜを繰り返して、緩めのクリームソースくらいになったらOKです。ピュレにしてはゆるいかな~と思うかもしれませんが、冷めると一段階固まるので、それを見越して塩梅(あんばい)してください。仕上げに塩で味を調えて、あとは粗熱が取れるまで待ちましょう。

―― ほんとだ、冷めるとちゃんとピュレっぽくなってきました~! マッシュポテトより滑らかで、とっても美しいです……。

冷水 あとは盛り付けです。お皿にピュレを敷いて、そこに切った桃と、薄くスライスした生のマッシュルーム、生ハムをのせます。

―― 生ハムメロンならぬ、生ハムピーチですか……!

冷水 生ハムの塩分が桃の甘みを引き立ててくれて、とても相性がいいんですよ。仕上げにオリーブオイルをまわしかけて、レモンの皮とこしょうをふったら完成です。

―― これはなんというか……初めて食べるお料理です……。まずこのポテトピュレの舌触りの心地よいこと! とろ~っとしたピュレと桃のつるんとした食感が絶妙です。さらに途中に感じる生のマッシュルームの歯ごたえもいいアクセントになっていますね。

冷水 いろいろな食感と風味があって楽しいでしょう?

―― じゃがいもの甘さ、桃の甘酸っぱさ、生ハムの塩気、レモンの酸味……。「マリアージュ」という言葉はこういうときに使うんですね!

冷水 じゃがいもの裏ごしさえ頑張ればあとはのせるだけなので簡単です。手軽なのに驚きと楽しさがあるお料理だと思いますので、パーティーなどにもオススメですよ。

今日のレシピ

桃とマッシュルームのポテトピュレ

◎材料

じゃがいも 300g
バター 70g
牛乳 100~150ml
塩 適量
桃 1~2個
レモン汁 適量
生ハム 適量
マッシュルーム 1~2個
レモン皮 適量
こしょう 適量
EXVオリーブオイル 適量

◎作り方

 じゃがいもは皮をむいて1.5cmの厚さにスライスする。水にさらしてから0.8%の塩を加えた水に入れて火にかけ、一度沸いたら、あとはぶくぶくしない程度の火加減で柔らかくなるまで茹でる。
 のじゃがいもを湯を切りながら鍋から取り出し、裏ごしする。湯をすてた鍋に裏ごししたじゃがいもを戻し入れ、中弱火にかけ混ぜながら水分を飛ばす。
 に小さく切って冷やしておいたバターを加えて混ぜ、温めておいた牛乳を少しずつ加えながらさらに混ぜる。塩で味を調えて粗熱を取る。
 皿にのポテトピュレを敷き、スライスしてレモン汁をかけた桃、薄くスライスしたマッシュルーム、生ハムを適量のせる。EXVオリーブオイルを適量まわしかけ、レモン皮とこしょうをふる。

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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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    冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

    おうちでビストロ気分。桃とマッシュルームのポテトピュレ

    料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

    PROFILE

    • 小林百合子

      編集者
      1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

    • 関めぐみ(写真)

      写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

    ザクザク、とろっ。食感楽しむ桃のクランブル

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