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いますぐ旅に出られなくても。“妄想旅行”で教養も深める

いますぐ旅に出られなくても。“妄想旅行”で教養も深める

撮影/猪俣博史

『絵本のようにめくる 世界遺産の物語』

私が担当する旅行書のコーナーでは、国内外のエリアごとに、旅行にまつわる様々な本をご紹介しています。ガイドブックはもちろんのこと、その土地の自然や文化、人々の暮らし(衣食住)に関するもの、その地が舞台となった小説まで、その内容は様々です。

今年に入り、以前のように旅に出る機会に恵まれない日が続きましたが、以前と変わらず多くの方が足を止めてくださっているのが、絶景の本を集めた本棚です。

湘南 蔦屋書店では、日本の絶景、世界の絶景とそれぞれに分けて陳列しており、一人旅や世界一周旅に関するものをはじめ、最近では、心が癒やされる美しい写真に、偉人の名言や、詩人の勇気づけられるような言葉が添えられた本が、人気を集めています。そしてもう一つ、絶景の本棚で安定した人気を誇るのは、世界遺産にまつわる本です。今回はその中から、6月に発売された『絵本のようにめくる 世界遺産の物語』をご紹介します。

「世界遺産」、今ではすっかりなじみのある言葉として使われていますが、人類のかけがえのない共通財産として、長く後世に残していくものとされたのは、1972年のことでした。以来48年間で、1121件もの世界遺産が登録されたそうです(2020年4月現在)。本書では、その中から62の世界遺産を取り上げています。

世界遺産の本を手に取るとき、息をのむような美しい写真は楽しみの一つですが、本書ではさらに「何だろう? これは……」と、好奇心をかき立てられる写真をいくつも見ることができます。同時に、それぞれの世界遺産にまつわる、ユニークで面白い、素朴な疑問が一つ取り上げられており、その解説で教養を深めることもできるようになっています。

姫路城が白いのはなぜ?

姫路城のページでは、真っ白な城壁とともに、満開の季節に撮られた美しい桜が写っています。その白とピンクのコントラストから、(姫路城が)「こんなに白いのはどうして?」という問いが出されており、「美による威嚇」だけでなく、他にも理由があったことが解説されています。

また、2015年に文化遺産として登録された「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」に含まれる軍艦島では、「えっ? 軍艦島!? 物騒な名前が付いた理由を教えて!」なんていう問いも。

海外の世界遺産では、珍しい風景や街並み、造形物が取り上げられています。ページをめくると、以前、私がはじめてイタリアのヴェネチアに旅行した際、ふと思ったことと同じ疑問が紹介されていました。

夜遅くヴェネチアに到着したときに見た、灯(あか)りがともされた運河に街並みが浮かぶ美しい景色は、今でも心に残っています。翌日、街を歩きながら思ったのは、車を見かけないということでした。本書にもある「街にクルマがないってホント?」という疑問を持たれた方も、いらっしゃるのではないでしょうか?

いますぐ旅に出られなくても。“妄想旅行”で教養も深める

『絵本のようにめくる 世界遺産の物語』監修・村山秀太郎、本田陽子(昭文社) 1,400円+税

他にも、アンデス山脈の標高2400メートル地点に位置するインカ帝国の都市「マチュ・ピチュ」のページでは、「なぜ、険しい山の尾根に都市を築いたのか?」。ギリシャ「アテネのアクロポリス」では、「なぜパルテノン神殿は美しいと感じるの?」などの問いかけも。

ちなみに、パルテノン神殿が美しいのは、黄金比が使われているという科学的根拠もあるそうです。トルコの「ギョレメ国立公園とカッパドキアの岩窟群」では、「岩石の穴には何かが住んでいるの?」という言葉とともに、無数の穴があいた岩石の上空を、カラフルな気球が飛ぶ写真が紹介されています。“住民”の正体も、私にとっては意外でした。

教科書に出てくるような世界遺産から、初めて知る世界遺産まで、美しい写真を見ながら教養も身に付けることができるのは、この本の大きな魅力。いますぐに旅に出かけることはできなくても、旅に出かけた時のワクワク感を味わい、いつかは行ってみたいという旅への好奇心を膨らませてくれます。最近よく耳にする「妄想旅行」という言葉の通り、まさに五感で楽しむことができる一冊です。

(文・藤井亜希子)

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    蔦屋書店 コンシェルジュ

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    湘南 蔦屋書店 旅コンシェルジュ。旅行会社勤務時代は、海外ホテルやオプショナルツアーなど現地への手配を担当。その経験を生かし、ハワイ・北欧・フランス・イギリスなどを中心に、旅行書の選書をはじめ世界各国の自然や文化、人々の暮らしなどその土地にまつわるフェアや旅行イベントを提案。プライベートでは、自他ともに認めるハワイラバー。

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