このパンがすごい!

東京駅で味わう「神の口溶け」。栃木愛ほとばしる新店/THE STANDARD BAKERS TOKYO

駅ナカで、地方のハイレベルなパンが食べられる時代の到来だ。大谷石の里として知られる栃木県宇都宮市大谷に本店がある「THE STANDARD BAKERS」。地方までわざわざ行って食べてほしい店の筆頭だが、東京駅構内、8月3日に新オープンして話題の「グランスタ東京」に、一足早く6月から出店している。

監修を務めるのは宇都宮の名店「パニフィカシオンユー」の氏家由二シェフ。口溶けのよさにとことんこだわる人だ。彼のパンを食べると「神の口溶け」が味わえる。

栃木のおいしいものといえばいちご。東京に打って出る武器として、とちおとめをふんだんに使用する。

東京駅で味わう「神の口溶け」。栃木愛ほとばしる新店/THE STANDARD BAKERS TOKYO

とちおとめカンパーニュ

「とちおとめカンパーニュ」は、栃木県産とちおとめのピューレで漬けたストロベリーやクランベリー、レモンピールなどのドライフルーツが入ったパンだ。重厚なカンパーニュという見た目。皮はその通りかりっかりにもかかわらず、中身はもはやおかゆ寸前のとろとろっぷりという、ありえないギャップに萌(も)える。表面に飛び出したドライフルーツは、高温でしっかりと炙(あぶ)られ、とちおとめのステーキという趣。一方、中身のドライフルーツは生々しく、とろけた小麦とあいまって、まるでフレッシュいちごジュースだ。

重たいパンの代表といえるカンパーニュを、こんなにもとろけさせられるのはなぜなのだろう。

「極力、力を加えないように生地を扱い、ゆっくり熟成させています」

全粒粉の湯種でたっぷりの水分を抱え、ルヴァンリキッドで生地に伸展性を出し、レーズン種でたんぱく質を酵素分解する。発酵のあらゆる要素でとろっとろにし、口の中に入れた瞬間溶けだすような生地を作りあげている。

東京駅で味わう「神の口溶け」。栃木愛ほとばしる新店/THE STANDARD BAKERS TOKYO

とちおとめプレミアムブレッド

とちおとめ推しはこれにとどまらない。とちおとめの自家製ジャムを中に仕込んだ「とちおとめプレミアムブレッド」。この食パンは飲める。口溶けが一気。しっとりな生地はぶしゅーっと小さくなり、次の瞬間にはしゅわっと溶ける。ミルキーな北海道産小麦と北海道産バターが一瞬にしてミルクにかわり、いちごジャムと溶け合い、いちごミルクセーキとなって、喉(のど)を滝のように流れ落ちる。

年間を通じて、とちおとめジャムを自家製するという力技。地元栃木の生産者とつながっているからこそできることだ。

「栃木の農家さんからかき集めました。自家製でジャムを作るのは正直たいへんですが、スタッフに無理を言ってお願いしています」

東京駅で味わう「神の口溶け」。栃木愛ほとばしる新店/THE STANDARD BAKERS TOKYO

北海道フロマージュのパネトーネ断面

神の口溶けを味わえるパンとしておすすめなのが「北海道フロマージュのパネトーネ」。パネトーネといえばイタリアの発酵菓子。上に高く伸びた生地の口溶けが命。薄い薄い膜が重なったような生地は、唾液(だえき)がまわりやすく、めちゃくちゃ口溶けがいい。卵とバターの風味が一気に滲(にじ)んで、まるでカスタードみたいになる。そこへ、焼けてとろけた香ばしいチーズの香り。甘い菓子パンとチーズ、本当に合うのか?と思ったけど、不思議においしく、これは癖になる。

口溶けの秘密とは。このパンも、水分を多く含ませ、高めの温度で長い時間をかけて発酵させることで生地をとろけさせている。さらに、「イタリア的なやり方で、手粉(成形のとき手や作業台に生地がくっつかないようにふる粉)の代わりにオリーブオイルをつけています。手粉が生地につくと水分を吸って生地が締まってしまいます」

東京駅で味わう「神の口溶け」。栃木愛ほとばしる新店/THE STANDARD BAKERS TOKYO

御養卵のクリームパン(左)、ミルクスティックとちおとめ

とちおとめと並ぶもうひとつの特選素材が日光御養卵だ。これを、カスタードクリームにもブリオッシュにも使った「御養卵のクリームパン」。カスタードが口の中にあふれかえるほどに感じられるのは、ブリオッシュ生地の口溶けがいいから。生地がどっと溶けて、カスタードの流れに合流するとき、ただでさえ濃厚な御養卵が、生地からクリームから重なりあい、北海道産小麦の旨味(うまみ)ものっかって信じられない濃厚さになる。

「栃木のことをみんなにもっと知ってもらいたい。濃厚で味が濃くて甘みがあるこの日光御養卵を、東京駅という最高の舞台で、絶対使いたいと思いました」

日本のど真ん中・東京駅で、最高の口溶けとともに栃木を味わおう。

東京駅で味わう「神の口溶け」。栃木愛ほとばしる新店/THE STANDARD BAKERS TOKYO

発酵種を使用したハード系パン

THE STANDARD BAKERS TOKYO(ザ スタンダードベイカーズ トウキョウ)
東京都千代田区丸の内1-9-1 JR東京駅改札内1F
03-6665-7995
7:00~22:00(月~土・祝日)
7:00~21:00(日・連休最終日の祝日)
無休
https://the-sbk.jp/

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    PROFILE

    池田浩明

    佐賀県出身。ライター、パンの研究所「パンラボ」主宰
    日本中のパンを食べまくり、パンについて書きまくるブレッドギーク(パンおたく)。編著書に『パン欲』(世界文化社)、『サッカロマイセスセレビシエ』『パンの雑誌』『食パンをもっとおいしくする99の魔法』(ガイドワークス)、『人生で一度は食べたいサンドイッチ』(PHP研究所)など。国産小麦のおいしさを伝える「新麦コレクション」でも活動中。最新刊は『パンラボ&comics 漫画で巡るパンとテロワールな世界』(ガイドワークス)
    http://panlabo.jugem.jp/

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