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めくるめく夢への招待映像 2020年秋冬パリ・オートクチュールコレクション

2020年秋冬パリ・オートクチュールコレクションは7月上旬、新型コロナの影響でデジタルでの発表になった。あらゆるコレクションの中で、手仕事の技や素材の価値、夢の世界の表現が最も問われる。意外にもデジタルならではの、創造性の高い見せ方が相次いだ。

めくるめく夢への招待映像 2020年秋冬パリ・オートクチュールコレクション

クリスチャン・ディオール

優れた映像作家らとの協業が、新たな創造性を引き出した。クリスチャン・ディオールは、イタリアの映画監督マッテオ・ガローネによって、物語仕立てで新作を披露した。

舞台はうっそうとした森。妖精や人魚風の女性たちが川遊びなどをしていると、大きな箱を運ぶ2人の男性が訪れる。箱の中には新作を着せたミニチュアが何体も。手の込んだプリーツのコートやドレープのドレス。女性たちは服を選び、着たとたんに生き生きと輝きを増していく。

ミニチュアによる新作の見せ方は昔、フランスで取られていた手法だ。オートクチュールの伝統と技術、夢を見せる部分までもが伝わる映像だった。映画的な表現について、デザイナーは「非常に内容が濃く、かつクリエーティブなプロジェクトが必要だと思ったから」と地元紙に語った。

めくるめく夢への招待映像 2020年秋冬パリ・オートクチュールコレクション

ヴァレンティノ

ヴァレンティノはイタリアの撮影所が舞台。英写真家ニック・ナイトによる、天女を思わせる映像で新作を見せた。フリルを重ねたドレスや、フリンジだけで仕立てたドレスを着たモデルが十数等身にもデフォルメされ、粉々に崩れたり、再び形成されたり。資料には「クチュール、それは目を開いたまま見る夢の招待状」とつづられていた。

めくるめく夢への招待映像 2020年秋冬パリ・オートクチュールコレクション

メゾン・マルジェラ(C)Rob Rusling

メゾン・マルジェラもニック・ナイトとのコラボで、52分ものドキュメンタリー形式の映像を配信した。アトリエでのデジタル会議の風景や、写真資料、職人の手仕事のズームアップ。一つのコレクションに、どれほどの手間と情熱が注がれているかを物語る。

新作はモデルの体に布を何度も合わせて重ね、よじって仕上がるドレスなど。スタッフが古着店でみつけてきたジャケットを、ハサミで解体して再構築した作品も。

めくるめく夢への招待映像 2020年秋冬パリ・オートクチュールコレクション

シャネル

一方、シャネルはテンポ良く一気に様々な作品を披露。多様な肌の色のモデルがミックスツイードのスーツなどを着て登場した。デザイナーによると、「イメージしたのは夜明けにル・パラス(パリの伝説的なクラブ)から出てくるパンクなプリンセス」だという。

めくるめく夢への招待映像 2020年秋冬パリ・オートクチュールコレクション

ユイマ・ナカザト

日本から唯一参加したユイマ・ナカザトは、客の手持ちのシャツを再構築するプロジェクトの過程を映像にした。オンラインでの客との対話を通して、デザインを考えてリメイクしていく様子がユニークだ。客が米画家バスキア好きと聞けば、やや荒々しいデザインにといった具合。

このプロジェクトは今月から事業化され、ブランドの公式オンラインストアで1着30万円で販売される。

3日間の会期で今回は約30ブランドが参加。デザイン画と素材の組み合わせや、デザイナー自身の思いを語る映像も多く、顧客には通常のショーよりわかりやすい面もあった。素材やディテールの豪華さ、仕立ての完成度、そして何よりも服そのものが放つオーラが魅力のオートクチュール。顧客はわざわざパリのショー会場を訪れなくても、ブランドの担当者を介して間近で見られるので、デジタル形式の発表は理にかなっているともいえる。

 <写真は全てブランド提供>

(編集委員・高橋牧子)

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