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秋冬のトレンドは? 生活になじむ、リラックス感

業界が提案した今年秋冬ファッションの新たなトレンドは、発表前に予想していなかったコロナ禍により不発の兆し。ナチュラルな気分で「新しい生活」を楽しめそうな、クリーンでリラックス感のあるスタイルが注目されそうだ。

秋冬のトレンドは? 生活になじむ、リラックス感

クリーン&リラックススタイル(エルメス)

今年春に発表されたパリやミラノなどのコレクションでキーワードになったのは、「女性らしさ」や「成熟した官能性」だった。襟ぐりが大きく開いたドレスや深いスリット入りのスカート、誘惑的な赤……。カジュアルからエレガンスへの転換の中で、力強さや新鮮さを感じた。

しかし、その後のコロナ禍によって、外出を想定した挑発的な装いよりも、在宅勤務や、自宅周りを楽しむ生活に合ったリラックススタイルを求める傾向に変わった。

伊勢丹新宿店婦人マーチャンダイザーの高木隆人さんは、「ここ数シーズン続いたストリートやアウトドアウェアの要素を取り入れながらも、洗練されたクリーンなスタイル」を薦める。

ストリート色の強いオーバーサイズやロゴ、アウトドア風のバックルなどは控えめ。快適で長く着られて、ややゆったりとしているが、すっきりときれいなAラインのコートやトップスなどだ。「テンションをあげてくれる服で、明るく活動的になれるといい」という。

気取らずエレガントに、多彩なブラウスで変化を

秋冬のトレンドは? 生活になじむ、リラックス感

左:ブラウス&デニム(MSGM)
中:同系色のコーディネート(アクリス)
右:ブラウス&ブーツ(フィロソフィ・ディ・ロレンツォ・セラフィニ)

バーニーズニューヨークのバイヤー鈴木春さんは「今期はコレクション発のトレンドに漠然とした違和感を覚え、顧客動向を見ながら買い付けの段階で方針を変えた。トレンドがないのがトレンド。自分を大きく見せる服より、生活になじむ服が良いのでは」と語る。

そんな中で推すのは、よく着ている自分好みのアイテムに、何かひとつ新しいエッセンスを入れる着こなし。たとえば、手持ちのデニムのボトムに、多くのブランドが提案しているシャツやブラウスを加える。量感のある袖やボウタイなどデザインが豊富だ。

長引く自粛生活の中で、鈴木さんが今注目しているのは「パリをはじめとする欧州のマダムスタイル」。お金をかけなくても、料理や花、インテリア、食前酒のたしなみなど身の回りの生活を豊かに楽しむイメージだ。服では、年齢に関係なく、メンズ風のシャツやカシミヤのニットにミニスカートをはき、首には真珠のネックレス。英国調やビンテージも自在に取り入れるといった具合。気取らないけれどエレガントな感じが魅力的に映る。

色も鮮やかなものより、ベージュや茶系で全身を同系色でそろえる落ち着いた印象が人気になりそう。

服に大きな変化がないシーズンは、新デザインの小物が脚光を浴びる場合が多いが、今年は小物にも目立つトレンドは少ない。その中でも、きんちゃく形バッグをいち押しするのはバーニーズニューヨークで小物を担当するバイヤー福原菜津子さん。ひもが長く肩にかけられるタイプも多く、革やナイロン、リサイクルの生地など素材も幅広い。また、トート形も健在だ。

秋冬のトレンドは? 生活になじむ、リラックス感

左:きんちゃく形バッグ(ロエベ)
右:厚底のチェルシーブーツ(ステラ・マッカートニー)

靴では「ソールが厚めに。ミリタリー調や脇にゴムのついたチェルシーブーツ、レースアップがおすすめ」と福原さん。歩きやすく、ややゆったりとした服とのバランスがとりやすい。

この秋冬は「官能性」がポイントではなくなったとはいえ、ベルトなどでのウエストマークや、ミニ丈のスカート、部分的に透ける素材を使ったアイテムなどフェミニンな雰囲気は漂う。ファッションは生き物。細部では人々の生活や気分の変化と共に変わっていく様子が感じとれる。

(編集委員・高橋牧子)

<大原広和氏とRunway-Photographie撮影>

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