料理家・冷水希三子の何食べたい?

鰹出汁がやさしい、ホタテと白身魚のセビーチェ

料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくれるという夢の連載。今回はライムの爽やかな酸味と香りが残暑にぴったりのセビーチェ。鰹出汁(かつおだし)を使った滋味深く、やさしい味わいは冷水先生ならではです。

     ◇

―― 冷水先生、こんにちは。最近は朝夕の暑さが和らいで、なんだか少し秋の気配を感じませんか?

冷水 ふとしたときに、感じますねえ。

―― 夜、外に出たときなんかは、かすかに秋の匂いを感じますよ。

冷水 匂い! なんだかその感覚、わかります。

―― 猛暑で減退していた食欲も徐々に戻ってきて、食べることが楽しくなってきました。

冷水 食欲の秋を先取りですね(笑)。今回は何を作りましょうかね?

―― 猛烈な暑さは過ぎたとはいえ、まだまだ暑い日はありますので、そんな日でもさっぱりモリモリ食べられるメニューを知りたいです。

冷水 残暑を乗り切るメニューですね。じゃあライムを使ったセビーチェなんてどうでしょうか? 南米のお料理なので暑い日にぴったりですよ。

―― セビ……セビーチェ……、ですか? 聞き慣れないお料理です。

冷水 セビーチェはペルーやメキシコなどでよく食べられている魚介のマリネです。ヨーロッパのマリネと違う点は、ハラペーニョの酢漬けを入れてピリリと辛くすること。あとは酸味にライムを使うのも南米流ですね。

鰹出汁がやさしい、ホタテと白身魚のセビーチェ

ハラペーニョの酢漬けが手にはいらない場合は、青唐辛子で代用できます

―― 材料からしてラテンな感じがします! そして今日はまた立派なタイとホタテがスタンバイしていますね。

冷水 白身魚ならなんでもOKですし、タコを使ってもおいしいですよ。

―― 季節のお魚を使える点もいいですね。

冷水 あと調理にほとんど火を使わないので、残暑にはオススメです(笑)。

―― ありがたい!

冷水 まずはホタテを霜降りしていきます。これはマストではないのですが、ホタテは表面にさっと熱を通した方が甘みが増すので、ぜひ試してみてください。

鰹出汁がやさしい、ホタテと白身魚のセビーチェ

ホタテは湯の中に入れて数秒でバットに上げましょう。表面が白っぽくなればOKです。火を通しすぎると固くなってしまうのでご注意を

―― 沸いたお湯にホタテを入れて、ほんの数秒でバットに上げるんですね。早業!

冷水 中はレアに仕上げたいので。あまり長く湯につけると身が固くなってしまうので、注意してくださいね。

―― はい!

冷水 ホタテと白身魚は1、2センチ角に切ります。白身魚はお刺し身用のさくを買うと好みの大きさに切りやすいです。厚みがあると食べ応えがあっていいですよ。

―― おお~、豪華ですね!

冷水 切ったお魚はマリネ液を入れたボウルに入れて合わせておきます。

鰹出汁がやさしい、ホタテと白身魚のセビーチェ

お魚とホタテのカットはこんな感じで。マリネ液に漬けると魚介の表面とマリネ液が白っぽくなるのがポイント。これが味がなじんだサインです。マリネしたときに出る白濁したマリネ液(出汁汁)のことを、南米では “虎の乳(レチェ・デ・ティグレ 〈leche de tigre〉)”と呼ぶそうです

―― せ、先生! このマリネ液、鰹出汁が入ってますけど、これ南米料理ですよね!?

冷水 うふふ。それは食べてみてのお楽しみです。

―― 鰹出汁とライム果汁の組み合わせ……。未知との遭遇です(笑)。

冷水 あとは野菜を切るだけです。ハラペーニョの酢漬けは輸入食材店などで買えると思いますが、もし手に入らない場合は青唐辛子をみじん切りにして入れてもいいです。

―― かなり細かいみじん切りにするんですね。

冷水 これは具材として食べるというより調味料のように使いたいので、できるだけ小さく刻んでマリネ液に混ざりやすいようにしましょうね。

鰹出汁がやさしい、ホタテと白身魚のセビーチェ

ミニトマトは手で半分に割くと断面が不ぞろいになってマリネ液とよくなじみますし、トマトの果汁がマリネ液に混ざって、よりうまみが増しますよ

―― おっと、ミニトマトは豪快に手で割るんですか!?

冷水 包丁で切ってもいいんですけど、手で割った方が断面が不ぞろいになってマリネ液となじみやすいんです。割るときに果汁が飛ぶことがあるのでエプロンをお忘れなく。

―― ぎゃ~っ! 言ってるそばから飛びました(笑)!

冷水 それくらい豪快に割ると、マリネ液とよくなじみますよ(笑)。あとは玉ねぎをスライスしてボウルに加えれば完成です。

―― え~、もう完成ですか?! ちょっと簡単すぎです(うれし涙)。

鰹出汁がやさしい、ホタテと白身魚のセビーチェ

赤玉ねぎは水にさらすと辛みが和らいで食べやすくなります。普通の玉ねぎでも代用できますが、辛みがやや強いのと、彩り的にも赤玉ねぎの方が鮮やかなのでオススメです

冷水 食べる時にお好みでパクチーの葉を散らしてもおいしいですよ。

―― まずはパクチー抜きでいただいてみますね。

冷水 あ、食べるときはお出汁をスプーンですくって一緒にどうぞ。

―― わ~、思った以上に鰹出汁を感じますね! ライムの爽やかな酸味とハラペーニョの心地いい辛さは南米らしい雰囲気ですが、そこに鰹出汁が加わるとなんだか全体がまろやかで、滋味深い感じになります。

冷水 それが今回のポイントです!

―― これなら酸味が苦手な人でも食べやすいですね~。お魚のうまみも引き出されているような気がします。

冷水 お出汁の力ですね~。

―― パクチーを加えるとぐっと南米感が増して、これはビールですね! あとテキーラにも合いそう……。

冷水 よく冷やした白ワインにも合いますよ。

―― 旬のお魚はお刺し身で食べるのが鉄板だと思っていましたが、それに飽きたときのアレンジメニューとしてぜひマスターしたいです!

冷水 残暑のおもてなしの前菜としても活躍しますから、ぜひ試してみてください。

今日のレシピ

セビーチェ

◎材料(4~6人分)
白身魚の刺し身用 200g
ホタテ 100g
塩 小さじ1/2

《マリネ液》
A
鰹出汁 大さじ3
ライム汁 40ml
酒 小さじ2
 
ミニトマト 5個
ハラペーニョ酢漬け 12g
赤玉ねぎ 1/8個
塩 適量

◎作り方

 ホタテは塩を入れた湯でさっと霜降りをする。白身魚と同じく1~2㎝大に切り、塩を振って15分ほど置く。その後Aの材料と一緒にボウルに入れ、合わせておく。

 ハラペーニョはみじん切りに、玉ねぎをスライスして水に10分ほどさらして水気を切っておく。ミニトマトは手で半分にちぎる。

 のボウルにの材料を加え、混ぜる。塩味が足りなければ少々加えて混ぜる。

 の汁(マリネ液)ごと器に盛る。好みでパクチーの葉をのせて食べてもおいしい。

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(料理・レシピ 冷水希三子 写真 関めぐみ 文 小林百合子)

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冷水希三子(ひやみず・きみこ) 料理家

鰹出汁がやさしい、ホタテと白身魚のセビーチェ

料理家・フードコーディネーター。レストランやカフェ勤務を経て独立。季節の食材を使ったやさしい味の料理が評判を呼び、雑誌や広告などで活躍中。器選びや盛り付けに至るまで、その料理の美しさでも注目を集めている。著書に『ONE PLATE OF SEASONS-四季の皿』(アノニマ・スタジオ)、『スープとパン』『さっと煮サラダ』(ともにグラフィック社)など。

PROFILE

  • 小林百合子

    編集者
    1980年兵庫県生まれ。出版社勤務を経て独立。山岳や自然、動物、旅などにまつわる雑誌、書籍の編集を多く手がける。女性クリエイター8人から成る山登りと本づくりユニット〈ホシガラス山岳会〉発起人。著書に『最高の山ごはん』(パイ・インターナショナル)、『いきもの人生相談室』(山と溪谷社)、野川かさねとの共著に『山と山小屋』(平凡社)など。

  • 関めぐみ(写真)

    写真家。アメリカ、ワシントンDC生まれ。スポーツ誌、カルチャー誌、女性誌などで活躍。また、広告やカタログ、CDジャケット、俳優の写真集なども担当。書籍に『8月の写真館』『JAIPUR』など。

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