高山都の日々、うつわ。

#29 変わることを恐れずに

毎夏、楽しみにしている果実がある。
ねっとり甘く、どこか色っぽい。
かと思えばプチプチした食感が楽しい。
イチジクって、本当に不思議なフルーツだ。

私はとにかくイチジクが好きで、
梅雨が終わると、今か今かとスーパーに並ぶのを待っている。
出始めの頃はまだ高くて手が出ないけれど、
たまにお値打ち価格のものを見つけると
ここぞとばかりにたくさん買って帰る。

まずはそのまま食べて、うっとり。
残りはキッチンやリビングに出しておいて、
美しい紫色や、造形美も楽しむ。
旬が短いからこそ、舌でも目でも愛(め)でるのだ。

もちろん料理にも使う。
サラダにしてもいいし、肉料理と合わせてもおいしい。
切ったときの断面も美しいので、
イチジクが料理に入っただけで一気に華やぐのがいい。

#29 変わることを恐れずに

#29 変わることを恐れずに

今年、新しくメニューに取り入れたのが、白和(あ)えだ。
白和えは子どもの頃からの大好物で、
これまでもいろいろなフルーツで試してきた。
イチジクのねっとりした食感は、
きっと豆腐とも相性がいいはず。
確信をもって材料を準備し、台所に立つ。

まずは豆腐の水切りから。
いつも通り木綿豆腐を手にとって、ふと思う。
もしかしたらイチジクには、絹ごし豆腐の方がいいかも。

以前、友人が営む料理店で、
絹ごし豆腐を使った白和えを食べたことを思い出した。
木綿豆腐とは違った、なめらかな白和え。
いや、正確には和えていなくて、
ふんわりと、クリームのような豆腐ペーストが
具材にそっと添えられていた。
なんだかデザートみたいで、とても美しかった。

色も形も奇麗なイチジクには、
きっとクリーム的な白和えが似合う。
そう直感して、作戦変更。
絹ごし豆腐を水切りして、味噌(みそ)と
擦ったクルミを加えて混ぜる。

#29 変わることを恐れずに

#29 変わることを恐れずに

普段、甘みは砂糖でつけることが多いけれど、
今日はなぜかクルミを使おうと思った。
味噌の甘じょっぱさにクルミのコクが加わって、
それをふんわりした豆腐が優しくまとめてくれる。
和風スイーツみたいな感じで、なんだか新鮮。

イチジクを切って、器に盛る。
普段、イチジクには黒や青の器を使うことが多いけれど、
今日は思い切ってイエローの小鉢を選んでみる。
豆腐ペーストがまあるい雰囲気だから、
器もあたたかみのあるものがいいなと思ったのだ。

最初から最後まで思いつきで作った白和え。
これまでの自分の料理とは少し違って、
角が取れた、優しい佇(たたず)まいになった。

いつもの素材、調理法、器。
どれもしっくりと暮らしに馴染(なじ)んでいて
何より安心感があるけれど、
たまには少し、変化を加えてみるのもいい。
これが私の正解だ、と思っていたものは
本当は全然そうじゃなくて、
見方を変えればまったく違う魅力が顔を出す。

変化するのは悪いことじゃない。
試行錯誤しながら、間違いながらでも、
新しい世界に出会うのは、楽しいことなんだ。

なんて。
白和えひとつでこんなことを考えてしまうなんて
やっぱり料理って刺激的で、やめられない。

#29 変わることを恐れずに

今日のうつわ

竹村良訓の小鉢

友人からプレゼントしてもらった小鉢は、奇麗な発色でありつつも、どこか落ち着いた雰囲気のイエローが独特で、和食にも洋食にも馴染みます。普段はサラダや青菜のおひたしなど、緑のものを盛ることが多いのですが、今回はあえて紫のイチジクとクリーム色の豆腐ペーストを。全体的にやわらかい感じになって、普段より大人っぽいスタイリングになったかなと思います。これからはもっといろいろなお料理に使っていけそうな気がしています。

     ◇

写真 相馬ミナ 構成 小林百合子

PROFILE

高山都(たかやまみやこ)

モデル。1982年、大阪府生まれ。モデルやドラマ、舞台の出演、ラジオ番組のパーソナリティーなど幅広い分野で活躍。フルマラソンを3時間台で完走するなどアクティブな一面も。最近は料理の分野でも注目を集め、2作目となる著書『高山都の美 食 姿2』では、背伸びせずに作る家ごはんレシピを提案。その自然体なライフスタイルが同世代の女性の共感を呼んでいる。

高山都の日々、うつわ。

丁寧に自分らしく過ごすのが好きだというモデル・俳優の高山都さん。日々のうつわ選びを通して、自分の心地良いと思う暮らし方、日々の忙しさの中で、心豊かに生きるための工夫や発見など、高山さんの何げない日常を紡ぐ連載コラム。

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