花のない花屋

25年の結婚生活にピリオドを 自分の人生もう一度ここから始めたい

全国農業協同組合連合会(全農)では、新型コロナウイルスによる大きな影響を受けた花の生産者を支援する取り組みを行っています。その一環として、連載「花のない花屋」にご協力いただきました。

あなたの「物語」も、世界で一つだけの花束にしませんか? エピソードの応募はこちらから。

佐伯加奈子さん(仮名) 52歳 女性
大阪府在住
会社員

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すごくずうずうしいお願いなのですが、私に花束を贈って頂けないでしょうか。今年長男が就職する予定で、次男も大学に入学。これを機に、25年間の結婚生活にピリオドを打とうとしています。 

夫は兄姉2人とは年の離れた末っ子で、かわいがられて育ったのかな……。イベントごとが大好きで、友達が多く楽しい人。結婚したら、明るい家庭になりそう。そんな期待がありました。

以前は旅行会社の営業職で、営業先の修学旅行などに付き添う日々。1年のうち、3分の1は家を空けていました。それだけでなく、休日も友人と集まるために外出することが頻繁にありました。自分と友達が最重要で、家族は二の次。「旅行会社は立て替えが多いから」と言って、家庭にお金を入れないことも何度もありました。

子育てに関わったり、息子たちの日々の悩みや話を聞いてやったり、といった、私がイメージしていた“父親”や“家族”とはかけ離れた生活が続き、少しずつ心が摩耗していきました。

10年前、夫が、友人の立ち上げた介護の会社に転職した後も、生活は全く変わりませんでした。むしろ収入が増えた夫は「自分が自由に出来る所が欲しい」と、自宅を出て近隣のマンションで一人暮らしを始めてしまいました。

女性問題は無かった……と思います。端から見れば、暴力をふるうわけでもなく、ギャンブルをするわけでもなく、はっきりとした欠点はない夫。何度か、耐えられない気持ちになったこともありましたが、義父母だけでなく、実の両親からも「少し父親としての成長が遅いだけだ」と説得され、私もこのままでいいのか迷いながら、日々が過ぎていきました。

家を出てからも夫はなぜか、月に一度夕飯を食べに来て、また自分の部屋に戻っていく生活。この状態を家族と呼べるのだろうか? いつかはこれからの付き合い方を話し合わないとなあ。そんなことを考えながら、数年が経った頃、会社の女性の先輩に「このままだと、旦那さんに何かあった時はあなたが面倒見ることになる。そこまで自分の人生、犠牲にしていいの?」と言われて、初めて夫の介護、という未来もあるのだなと気づきました。

私は今後どうしたいのだろう……。色々考えているうちに、夫と一緒にいる未来は、やっぱり想像できませんでした。

そんなとき、夫の方でも何か心境の変化があったのか、今年の春先に離婚届が送られてきました。今は離婚に向けて、話し合いを続けています。

ここまできて離婚することに、不安がないわけではありません。今はコロナのため自宅にいる次男も、もうすぐ一人暮らしを始める予定です。そうすれば、自宅には私ひとりになります。休日にレストランで食事している夫婦や、老齢のご夫婦が孫を連れているのを見ると、うらやましく思うこともあります。

それでも、夫と私は価値観が違いすぎて、きっとずっと平行線をたどるのでしょう。それよりは、きちんとピリオドを打って、自分の人生をリスタートさせたい。そんな気持ちになったのです。

これからも息子には頼らず自立していたいし、仕事を続けるためにも何か資格も取りたいなあ。妻としてでもなく、母としてでもない、自分の未来のことをこんなにじっくり考えるのは久しぶりです。

リスタートの記念として、私に花束をつくっていただけないでしょうか?

25年の結婚生活にピリオドを 自分の人生もう一度ここから始めたい

≪花材≫ダリア、クルクマ、アジサイ、エキナセア、ケイトウ、ブバルディア、ルスカス、ハラン

花束を作った東さんのコメント

離婚を決意されたとのことですが、エピソードからは非常に前向きな印象を受けました。そこで花束は、ハッピーな感じで思い切ってピンクでまとめました。新たな門出をお祝いし、これからの人生にワクワクして欲しい、という願いを込めました。ダリアはよく見ると、花びらの内側に向かうにつれてオレンジのグラデーションに。アジサイもアンティーク調の色合いを選び、ケイトウもベルベットのようなピンクで、少しだけ秋を感じさせる、今の時期にピッタリな色みです。ふんわりというよりは、ぴょんぴょんと飛び出している花もあり、花々に動きがあります。投稿主さまがこれからご自身の人生を躍動されるよう、お祈りしております。

花のない花屋

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花のない花屋

花のない花屋

(写真・椎木俊介)

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こんな人に、こんな花を贈りたい。こんな相手に、こんな思いを届けたい。
花を贈りたい人とのエピソードと、贈りたい理由をお寄せください。毎週ひとつの物語を選んで、東さんに花束をつくっていただき、花束は物語を贈りたい相手の方にプレゼントします。その物語は花束の写真と一緒に&wで紹介させていただきます。
詳しくは応募フォームをご覧のうえ、お申し込みください。

フラワーアーティスト・東信 (あずままこと)

25年の結婚生活にピリオドを 自分の人生もう一度ここから始めたい

1976年生まれ。
2002年より花屋を営み続け、現在は東京・南青山にてオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。2005年よりフラワーアーティストとして、ニューヨーク、パリ、ドイツ、ブラジル等、国内外で精力的な活動を展開。独自の視点から花や植物の美を表現し続けている。
近著に作品集「ENCYCLOPEDIA OF FLOWERS Ⅳ 植物図鑑」(青幻舎)など。

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PROFILE

椎木 俊介(写真)

ボタニカル・フォトグラファー

2002年、東信とともに、銀座にオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を構える。東が植物による造形表現をはじめると時期を同じくして、カメラを手にし、刻々と朽ちゆき、姿かたちを変容させていってしまう生命のありようを写真に留める活動に傾倒していく。日々、植物に触れ、その生死に向き合ってきたからこそ導き出すことのできる、花や植物のみが生来的に有する自然界特有の色彩や生命力、神秘性を鋭く切り取っていく。

2011年に初の作品集となる東信との共著『2009-2011 Flowers』(青幻舎)を発表以降、常に独特の視点ですべての東の作品を捉え続け、近年は映像制作にも力を入れ、多岐にわたる活動を行っている。


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