朝日新聞ファッションニュース

好きな装い、ゲームの中でも あつ森・ポケコロ……ファッションブランドがデザインを提供

人間がまとってきた衣服が、生身の体を離れる――。ファッションブランドが、ゲーム内のキャラクターに服のデザインを提供するなど、続々とバーチャルの世界に参入している。ファッションにおいてバーチャルにはどんな可能性があり、リアルとの関係はどうなっていくのか。

好きな装い、ゲームの中でも あつ森・ポケコロ……ファッションブランドがデザインを提供

アナ・スイが「あつまれ どうぶつの森」のプレーヤー向けに公開した服。今年春夏のデザインだ=ブランド提供

今春、コロナ下でブームになった任天堂の「あつまれ どうぶつの森」は、自分の分身であるアバターを操作して無人島の生活を楽しむゲームだ。ヴァレンティノやマーク・ジェイコブス、アナ・スイといったブランドが次々に、ゲーム用の服のデザインを公開。プレーヤーはこのデザインをダウンロードして、ゲーム内で着こなせる。

好きな装い、ゲームの中でも あつ森・ポケコロ……ファッションブランドがデザインを提供

「テニスクラッシュ」に登場するグッチのアイテムを実際に購入することもできる=ブランド提供

グッチは6月、ゲームアプリ「テニスクラッシュ(プロテニス対戦:ゲームオブチャンピオンズ)」と協業。キャラクターがグッチの服などを身につけ、同じアイテムを実際に購入できる仕組みだ。

体形・年齢から解放

好きな装い、ゲームの中でも あつ森・ポケコロ……ファッションブランドがデザインを提供

ケイタ・マルヤマの服(左)を着た、「ポケコロ」のキャラクター(右)=ココネ提供

着せ替えアプリ「ポケコロ」と協業したのは、東京ブランドのケイタ・マルヤマ。ブランドの服や小物が5~6月、キャラクターの着せ替えアイテムとして登場した。

ポケコロの利用者は10代が約半数。キャラクターは2頭身ほどで実際の服とは差があるが、ポケコロを運営するココネの石渡真維(いしわたりまい)取締役(43)は「アプリの中では体形や年齢の束縛から解き放たれ、本当に好きなものが選べる」。利用者からは「バーチャルの服や小物は劣化しない」「場所をとらないから良い」との声も。

これまで社内でデザインしてきたが、「ファッション業界から学ぶことは多いのでは」と数年前からブランドなどに声をかけていた。しかし、「アプリ? という反応が多かった。さわれない、リアルではないから違う、という感じ。ケイタ・マルヤマは可能性に気づいてくれた」と石渡さん。

ココネの土屋淳広CDO(最高デザイン責任者、43)は「バーチャルを『もう一つの世界』と言うのは古い。利用者にとってポケコロは、コンビニや公園と並ぶ居場所の一つ」と話す。

デザイナー丸山敬太(55)は今回のコラボについて「デフォルメされ、すごくかわいくできた。新しい発見だった」と振り返る。リアルな洋服をデザインするだけがファッションデザイナーではない、と丸山は言う。「デザインの可能性が広がってきて面白い。いま、もう一つ新しい扉が開いているような気がする」

若者にアプローチ

ブランドのバーチャル参入の狙いについて「若い世代への認知度を上げるため。これまで消費者が新しいものに触れるのは雑誌や店舗だったが、今の若い子はそれが全部スマホの中に移っている」と分析するのは、ファッション誌編集者の軍地彩弓さん(56)だ。

消費者がバーチャルで満足すると、リアルな服が売れなくなる懸念もあるのでは? そんな問いに軍地さんは「収益が多元的になると考えればネガティブではない」と答えた。「ブランドの世界観がはっきりしているところだけが生き残るとも言える。業界がチャンスを生かせるか、頭の使いどころではある」

軍地さんが考えるファッションとは「装って自分の心を満たすもの」。主体が自分の身体からアバターに変わっても、着飾りたいという思いがあればそれはファッションなのでは、と言う。

専門に学べる場も

バーチャルへの取り組みはゲームに限らない。東京・原宿のファッションスクール「東京ファッションテクノロジーラボ」は、4月に「バーチャルファッション学部」を開設した。パソコン画面で立体的なデザインができるソフトを学んだり、AI(人工知能)で消費者の動向などを研究したり、デザインもビジネスもデジタルで学ぶ。

ソフトでは布の素材感も加味でき、実物を試作せずに何度もやり直せるため、経費や時間、資源の節約に。CG画像をサイトに載せ、先行受注もできるというのが未来の姿だという。市川雄司代表(54)は「バーチャルとリアルの垣根がなくなってくる。0から1を生み出すのは人間。機械に任せるところは任せ、人はデザインに注力できればいい」と見すえる。コロナの影響でアパレル業界からの問い合わせや入学者も増えているという。

(神宮桃子)

今だからこそ、装う大事さを ユナイテッドアローズ・栗野宏文さんが本出版

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